辻村七子 『宝石商リチャード氏の謎鑑定』 の感想


宝石商リチャード氏の謎鑑定
『宝石商リチャード氏の謎鑑定』



辻村七子



集英社オレンジ文庫




「……お前、よく俺のロイヤルミルクティー飲んでくれるよな」
「はあ?」
「だって本家本元の方が断然うまいよ。何でこんなにうまいんだろうな?」
「誰かにいれてもらうお茶は、それだけでおいしく感じるものですよ」
俺が目を見開くと、リチャードはすいと目を逸らした。
「あのさ、意外と照れ屋?」
「やかましい」
午後六時に店を出て、おつかれさまでしたとお互い一礼をしたあと、リチャードは黒いキャリーケースを引いて、銀座の町に消えていった。
*本文より引用*


<ご紹介>
美貌の宝石商と「正義の味方」な大学生の、宝石にまつわる謎をめぐる短編連作。
困っている人を助けたい――そんな想いを胸に抱いていた大学生の中田正義は、ある深夜、酔っ払いに絡まれていた外国人男性を救出したことで人生の転機を迎えることになる。 リチャードと名乗ったその男性は、真夏の太陽さえも恥じ入るような美貌を誇り、たいていの日本人よりも美しい日本語を操った。 そして宝石商だと言う。 ずっと心に澱を残していた指輪の存在を思い出した正義は、リチャードに祖母の形見の真贋について鑑別を依頼する。 たった一つの秘密のために、小さな嘘をついて。 リチャードが導き出した正義の宝石の秘密とは……?


<感想>
ずっと気になっていて、でも読んだらハマりそうで怖くて手が出せないでいたのですが、その予感は正しかったようで、私はここ2週間くらいずっとこのシリーズしか読んでおりません(笑)。 2018年8月時点でシリーズ7作目まで発表されているのですが、とりあえず一度7作目まで通して読んで、また1作目(当記事の作品です)から読み返して、3度目の読みに入りながら、今これを書いております。 どんだけだ(笑)。

というわけで、宝石と人情と、その狭間に揺れる謎を描いた物語です。 1巻の時点では短編連作のような流れになっていて、各話で1つの宝石をモチーフにしながら、人間関係の軸が深まる方へ流れていく感じで進みます。 最初のお話は前述したとおりでして、その後の連作も含めて、リチャードさんの元でアルバイトをすることになった正義くんの一人称で物語は進みます。 つまり、彼の目を通して世界を、人を、宝石を、そしてリチャードさんを見ることになるのですね。 これがなかなか、贅沢なのです。

正義くんの目線で見る世界は、いつもちょっと朗らかです。 前向きで明るくて、勉強も武術もできるのに気取ったところが皆無なので、素敵なことも嫌なことも、素直に感じ取る気持ちの良い語り口が私は好きです。 もちろん暗くなることも落ち込むこともあるので、そういう時は普段の反動で私まで辛くなる。 つまり、とても共感したくなる人なのです。 「つらさにはグラデーションがある」と人を思いやり、パパラチア・サファイアの色を「夕焼けの茜雲を溶かし込んだような」と伝えてくれる。 上記あらすじでもリチャードさんの美について「太陽も恥じ入る」と書いたけど、あれは7作目で使われた比喩ですね。 正義くんが何かを表現するときに使う比喩表現はとても幅広くて、感受性の豊かさにも表現力にも、ひたすら感動するばかりです。 いずれも自分の中から探し出せない言葉だし、正義くんの見ている世界は深遠で、綺麗で、新しい価値観を授けてくれる。 とても贅沢な視界を分けてもらっているなぁって思うのです。 この作品の読み心地がよいのは、彼のおかげだと言っても過言ではないな、と思いながら読み進めていました。


それからもう一つ大好きなのが、正義くんとリチャードさんのニヤニヤが止まらなくなる会話劇です。 もうこれは断言するけれど、みんなお好きなのではないでしょうか!?(笑) 冒頭でも引用しましたあれとか、それとか、これとか、何かもういちいち面白い。 どこまでも美しい敬語を操って、時に優しく、時に気障ったらしく、時に照れを滲ませながらも流暢に話すリチャードさんと、基本直情型で表現力に優れていてでも壊滅的に自己評価の出来ていない正義くんの会話は、噛みあっていても噛みあっていなくても面白いです。

そして何よりも、正義くん目線で見るリチャードさんの美しさが半端ないです! 世界の造形の在り方を凌駕するほど美しさは、私の脳内ではどうやっても補完できないレベルなので、いつも表紙の雪広うたこさんが描かれるリチャードさんを思い描きながら読んでいました。 美しすぎるだろ……!!(目の保養・笑)  きっと正義くん目線で見なくてもリチャードさんはお美しいのだと思うのだけど、世界で一番彼を美しいと思っている男の視界を借りるわけだから、想像力の限界を軽く超えてしまうのです。 っていうか、彼がどれだけリチャードさんを美しいと思っているのかが、語りの“端々”どころか“あちこち”から伝わってくるのも大好き。 だって何度も、本当に何度もリチャードさんの美について語っているのに、都度都度表現が違うんですよ?すごくない!?(興奮・笑) むしろ語りの半分はリチャードさんを褒め称えてるよね!?とツッコミ入れながら読んで楽しんでおります(笑)。 どうやら恋愛的な想いではないとのことですが、何故か褒め言葉がプロポーズのようになってしまう愛情表現がまた楽しい。 「ただのいちゃいちゃなのかな?」と勘ぐりたくなる私の腐った部分(笑)をグッと抑えつつ、いずれにしろ微笑ましくてニヤニヤが止まらなくなるやり取りが大好きです。


えーと、物語の部分のお話をしましょう。 謎物語としては、ライトです。 謎があってトリックがあって……というテイストのお話は少なくて、宝石と共にある人の想いを解きほぐし、もう一度織り上げるような物語ばかりです。 読んでいるとしみじみ思うのですが、宝石も人も、少しでも接し方を誤ると傷ついてしまうような繊細な存在です。 でも基本的には、どちらも強く輝く光を秘めているし、傷ついてももう一度磨くきっかけさえあればより美しくなる。 人それぞれに異なるその「きっかけ」となるを、謎という海の中からリチャードさんが掬いあげて、そんなリチャードさんを正義くんが癒して――そうやって紡がれるのは、結局は「縁」なのかなぁと。 作中でもたびたび登場する人がいたり、思わぬところで繋がりがあったりして、そういう「縁」こそなかなかに「謎」だと思うのです。 出来事にしろ人間関係にしろ心のなかの想いにしろ、見えない繋がりのことを謎と呼ぶのではないだろうか。 この作品を読んでいると、そんなことを感じてしまうのでした。


あとはやはり、宝石の存在感ですよね。 私はもともと石を見るのは好きでしたが(詳しくはない)、「宝石」になってしまうと途端に手が届かない感が強くなってしまってあまりちゃんと見たことはありませんでした。 でも作中には様々な由来と輝きを持つ宝石がたくさん出てくるのですっごく興味深い。 再読中はスマホの画像検索を駆使して、そこにその宝石があるかのように感じながら読んだりしてました。 美しいことが宝石の定義だという認識、宝石の歴史に隠れた麻薬取引の影、価値を創造するということ。 作中で語られる宝石についての小話はどれも興味深くて、正義くんよろしく図書館でがっつり調べ物をするようになるくらいにはハマりました(笑)。 今欲しいのは宝石図鑑です(笑)。 宝石は……今はまだ、買えないけれど、いつか「これ!」っていう物に出会えたらぜひ買ってみたいなと思いました。 実物を見てみたい度ナンバー1は、やっぱりパパラチア・サファイアです。 正義くんとリチャードさんの出会い、そしてそこから連なる物語のきっかけとなった美しく稀少な石を、いつかこの目で愛でてみたいなぁと思う今日この頃なのでした。


さて。 ここまででも十分長くなりましたが(ちなみに書こうと思えばまだ書けます。自重した結果がこれ)、以下からは各話語りが始まります。 これがまた長い(笑)。 興味のある方は覚悟してどーぞ。

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イベント 『KING OF PRISM ROSE PARTY 2018』に行ってきました!

KING OF PRISM ROSE PARTY 2018 Blu-ray Disc
エイベックス・ピクチャーズ (2018-11-23)


<感想>
久々の! 更新が! やっぱり本の感想ではないのはどうしてなんだろう・・・と謎に思いつつも、6月10日にアリーナ立川立飛で行われた『KING OF PRISM Rose Party 2018』 昼の部の感想です。 今回もチケット運の良いお友達のお嬢さんに連れて行っていただきました。 ありがとうございます!! 以下感想ですが、鬼のように長くなったので先に謝りますすみません……。

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tags: アニメ

宝島社 『このマンガがすごい!2018』 発売されました。


このマンガがすごい! 2018

宝島社
売り上げランキング: 114

というわけで、今年も発売されました。 『このマンガがすごい!2018』 です。
こんな辺境のブログをアンケート回答者のひとつに選んでいただいて以降、めげずに採用し続けてくださる宝島社さんには申し訳ないくらい今年は更新ができていないのですが、だからこそ余計に、発売おめでとうございますとお伝えしたいです。 そしてありがとうございます。


そしてだからこそ余計に申し訳ないのですが、私、毎年毎年アンケートのランキングにたいして貢献できていなくてですね(笑)。 5作品選んでいるのですが、10位以内にラインクインした作品は選べていないですからね。 30位以内であれば3作品あるのですが、こればかりは難しいです。 未読の作品もたくさんあるし、変な言い方だけど、読んだ作品のなかにも「これなら10位以内に入るんだろうなー」と思いつつ選ばなかったものもあるわけです。 


個人的な見解だけど、私がその本と向き合った時に感じるベクトルに「面白い」と「好き」があるのですが、両者は私のなかでは全然違う気持ちから生まれているので、「面白い」からゼッタイに「好き」とは限らないのです。 逆もまた然り。 そしてたぶん『このマンガがすごい!』という雑誌は、私のなかの「面白い」に相当する気持ちを集めるための企画なのだと思うのです。 でもこのブログは私のなかの「好き」の部分を語ってきたブログなので、本当は雑誌の企画とずれているですよね。 でもでも、せっかくこのブログに声をかけてくれたのだから「好き」を重視した作品を答えよう!……と誠意をもって回答しているのですが、そうするとこんな感じになったというわけです(笑)。 ちなみに、企画の意図に則って回答したとすると、『マロニエ王国の七人の騎士』と『きみを死なせないための物語』を選んでいたと思います。


ところでうちの旦那さんが『約束のネバーランド』が大好きでして、珍しく発売前から「1位かな?」とそわそわしてました(なんで旦那さんがそわそわするのかは私もよく分からない・笑)。 実際に1位だったと知るとすごく喜んでいたし、5位にランクインした作品も同じく大好きだったのでさらに喜んでました。 彼的にこの結果に納得したことで2位以降の作品にも興味を持ったみたいで、雑誌のレビューを読んで興味を持った作品を買ったりしてました。 なので、ランキングっていうのは一定の必要性があるんだなーと私自身が再確認したところです。 


でも、そんな旦那さんが一言。 「マンガなんて、好きなものを読めばいいんだよ。ランキングは出会いのきっかけで、読んでみて合うか合わないかはその人が決めていいんだよ。 だって『マンガ』である時点ですでに好きなんだから」 その通りだと思うので、そんな感じで私が選んだ作品たちを、あなたさまのお楽しみのひとつに加えていただけると嬉しいです。 よろしくお願いします。


約束のネバーランド 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
集英社 (2016-12-16)
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マロニエ王国の七人の騎士(1) (フラワーコミックスα)
小学館 (2017-08-18)
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2017年12月の購入予定


12月の購入予定です。 すっかり太陽の光が指す時間も短くなり、17時くらいにはもう真っ暗だよ、みたいな今日この頃ですが皆さまいかがお過ごしでしょうか?? 
1ヶ月以上更新していなかったので広告が出てしまいましたが、私はひっそり生きていました。 なんだか9月から11月にかけて3回も風邪をひいてしまいまして(人生初ですこんな病弱設定味わったの……)、熱と咳はひどいけど食欲もあるし精神的にも元気!という生活を送っていました。 今年の風邪はノドにくる気がするので、皆さまお気を付け下さいませ。 
(下記リンクの書影は11月26日時点で出ているものだけ載せていますのでご注意ください)


<コミック購入決定分>
12/05 萩尾彬『結婚×レンアイ。・4』 白泉社
12/05 弓きいろ/有川浩『図書館戦争 LOVE&WAR 別冊編・5』 白泉社
12/05 田中メカ『朝まで待てません!・2』 白泉社
12/12 小花オト『翼くんはあかぬけたいのに・2』 小学館
12/15 片瀬茶柴/城平京『虚構推理・7』 講談社
12/15 和武はざの『白聖女と黒牧師・1』 講談社
12/20 水森暦『世界は今日もまわってる・1』 白泉社
12/20 都戸利津『嘘解きレトリック・9』 白泉社
12/20 草凪みずほ『暁のヨナ・25』 白泉社
12/22 榎木りか『次はさせてね・3』 KADOKAWA
12/22 もち『魔女の下僕と魔王のツノ・7』 スクウェア・エニックス
12/26 藤沢志月『彼女はまだ恋を知らない・5』 小学館
12/27 川井マコト『甘えたい日はそばにいて。・1』 芳文社

結婚×レンアイ。 4 (白泉社レディース・コミックス) 図書館戦争 LOVE&WAR 別冊編 5 (花とゆめコミックス) 朝まで待てません! 2 (花とゆめコミックス)
虚構推理(7) (月刊マガジンコミックス) 次はさせてね3 (シルフコミックス) 

・・・・・・白泉社さんのコミックはどれも安定して楽しそうだなぁ~と楽しみな作品ばかり。 『図書館戦争』は遂に郁ちゃんのウェディングドレス! 表紙書影を見ただけで感慨深くてうっかり泣きそうでした(笑)。 私個人としては結婚式に何の憧れもなくて、実際に行わなかったのですが(結婚指輪を買うお金で新婚旅行に行こうぜ!と思う人間だったりします・笑)、他人様が幸せそうにドレスを着たり式を挙げているのを見るのは大好きです。 幸せな気持ちって伝播するんですもの。
 
とか言っておきながら、一番楽しみなのは『魔女の下僕と魔王のツノ』7巻だったりします! これはもう10月から本気で指折り数えて発売を待ち望んでいるくらい楽しみです。 大好きなのです魔女ツノ。 毎巻、泣いたり笑ったり、いろんな感情を揺さぶってくるお話なのですが、読み手を選ぶタイプの本ですので、どこかに「僕も私も大好きです!」という方がいたらぜひお話してみたいです。 いないかなー。


<コミック気になる分>
12/04 内藤泰弘『血界戦線 Back 2Back・4』 集英社
12/15 鈴木央『七つの大罪・29』 講談社
12/18 青山剛昌『名探偵コナン・94』 小学館
12/19 荒木飛呂彦『ジョジョリオン・17』 集英社


<小説購入決定分>
12/01 中臣悠月『凰姫演義 救国はお見合いから!?』 角川ビーンズ文庫
12/01 小田菜摘『珠華杏林医治伝 ~乙女の大志は未来を癒す~ 』 集英社コバルト文庫
12/01 前田珠子『破妖の剣外伝 天明の月・3』 集英社コバルト文庫

凰姫演義 救国はお見合いから!? (角川ビーンズ文庫) 珠華杏林医治伝 ~乙女の大志は未来を癒す~ (コバルト文庫) 天明の月 3 破妖の剣 外伝 (コバルト文庫)

・・・・・・『破妖の剣』以外は、どちらも表紙カバー絵に惹かれて買おうと思った作品です。 『凰姫演義』は、白泉社で『執事様のお気に入り!』などのマンガを描かれている伊沢玲さんのイラスト。 そして『珠華杏林医治伝』は私の大好きな雲屋ゆきおさんのイラストだし、小田菜摘さんとは以前『革命は恋のはじまり』という作品でもタッグを組んでらっしゃったので、今作もきっと素敵なものになるんじゃないかと期待しております! とりあえず、どちらも表紙が麗しくて眼福なのでした。


<小説気になる分>
12/12 西尾維新『十二大戦対十二大戦』 集英社JUMP j BOOKS
12/15 山咲黒『呪われた伯爵と月愛づる姫君 おとぎ話の魔女』 ビーズログ文庫
12/15 くりたかのこ『瑠璃花舞姫録 召しませ、舞姫様っ!』 ビーズログ文庫

十二大戦対十二大戦 (JUMP j BOOKS) 呪われた伯爵と月愛づる姫君 おとぎ話の魔女 (ビーズログ文庫) 瑠璃花舞姫録 召しませ、舞姫様っ! (ビーズログ文庫)

・・・・・・『十二大戦』はアニメも見ていますが、まさか続編が出るとは思わなかったので驚きです。 もしかしてこちらもアニメ化したりするのかな?? 他の2作も表紙に惹かれて気になっているものです。 公式サイトではあらすじが未掲載だったのでどんなお話化も分からないのですが、とりあえず少女小説って表紙イラスト大事ですよね。 ある意味マンガ以上に「引き」の点で重要なのではないかと思います。


<DVD編>
林原めぐみ 1st LIVE –あなたに会いに来て- Blu-ray
キングレコード (2017-12-13)
売り上げランキング: 87

・・・・・・今年の6月に行われた、声優・林原めぐみさんのファーストライブが遂に円盤化! ということで、年季の入ったファン都市は買わなければなりません!(義務・笑) 残念ながらご縁がなかったので(チケットが高倍率すぎた・・・)私はコンサートには行けなかったのですよ。 なので余計に楽しみです。 有給取ろうかな・・・(え?


<番外編>
このマンガがすごい! 2018

宝島社
売り上げランキング: 3,370

・・・・・・というわけで、今年の12月10日にも毎年恒例の『このマンガがすごい!2018』が発売されます。 そして今年もアンケート回として参加させていただきましたのでよろしくお願いいたします。 今年は特に全然ブログの更新ができていないのに、諦めずに声をかけてくださった宝島社様のためにも、何とか面白い回答が出来ていれば・・・と思うのですがどうでしょう。 良かったらご覧くださいませ。



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