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小椋春歌 『月と夜の物語1 魔神の王と祝福の乙女』 の感想

月と夜の物語1 魔神の王と祝福の乙女
『月と夜の物語1 魔神の王と祝福の乙女』



小椋春歌

KADOKAWAビーズログ文庫
2014年7月15日電子版ver.1.0発行




シャールカーンは不遜な従者を叱り、両の拳を強く握った。
「ザイン、お前、め────────────────────っ……っっっ」 
ぐっと極限まで力をため、カッと目を見開いた。
「──────────っっちゃくちゃライラのこと気に入ってるだろ!?」
「気に入ってますね」 
非難めいた主の視線に微笑み返し、腕の中で眠る少女の黒髪に触れる。
「だって可愛いじゃないですか。初めて会ったときなんて怯えて泣いてたんですよ? それを見たときにあー可愛いなぁと思って」
「お、お前は最低だ……」


<感想>
少女小説で表紙は大切! ということで、この作品も表紙に一目惚れして出逢いました。 だって可愛くないですか? 何だか本当に無防備で「え、何々?何で抱き寄せられてるの!?」的なライラちゃんと、ちょっと不遜な表情で彼女を奪い寄せるザイン。 そして魔法のランプ。 瑠璃色に染め上げられた世界で、輝く月と半月刀がなんとも神秘的です。 ただでさえ私はアラビアンな世界観に弱いのに、こんな魅力的な表紙見せられたら気になっちゃうじゃないですか! ということで、一目惚れした瞬間に「購入する」ボタンクリックしましたからね(笑)。 読後に思いましたけど、この獲物を逃がさない勢いはちょっとザインっぽい……知らないうちに感化されてたかもしれません(笑)。 ちなみに電子版で読んでます。 上の書影も電子版ですのでご注意ください。

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雨川恵 『とらわれ舞姫の受難 掟破りのプロポーズ』 の感想

とらわれ舞姫の受難 掟破りのプロポーズ
『とらわれ舞姫の受難 掟破りのプロポーズ』


雨川恵 (イラスト:まち)

角川ビーンズ文庫
平成24年9月1日 初版発行/¥495+税





「……本当に、そんなことができるのか?」
それはまさに、ルーナが望んでいた通りのことだ。思わぬところからもたらされた救いに、ルーナは半ば呆然としながら尋ねた。 本当にそうなるなら、どんなにいいだろう。ルーナの問いにすぐさま、もちろん、と答えたイシュトは、しかしそこで小さく首をかしげて付け加えた。
「ただし、条件があるけど」
「条件?」
もっとも、それも仕方がないことだ。元はといえば、彼女の行動が招いた厄介事である。そのつけがベルダに行くところを、ルーナのほうに戻してくれるというのだから、その分の払いはしなければならない。ロキシスのように、彼女に払わせもしないまま、他所へ回してしまうよりましだ。
だが、そう思いながら訊き返したルーナに、イシュトは笑みを浮かべて言った。
「おれと結婚してくれ、ルーナ」


<感想>
『とらわれ舞姫の受難』シリーズの第3弾です。 今回楽しかったな! いや今までも楽しかったんですけど、やっぱり恋が動くと燃えますよねっ!(笑) 前作まではイシュトの天然ストーカーが板に付きすぎててもう剝がすことは無理なんじゃ!?ってレベルでしたけど(ホント怖いから・笑)、今回は彼の中でいろいろな気付きがあって、それが変化を生んでいる。 そしてそのきっかけはルーナが握ってるんですよね。 1巻目の感想にも書いたけど、相手に押し付けていた理想が壊れるときこそ、相手にいちばん近づけるんだと思うんです。 どんなに目を背けても、本質が見えてしまうものだから。 こういう展開大好きです! 満足~♪


さてさて。 何気に今作のいちばんの感想って、「・・・もうヒロインってロキでいいんじゃね?」ってことでした(笑)。 いやだって、ロキシスさんがあまりに不遇すぎて…! この人、何でこんなに一人で苦労してるんでしょうねw ベルタにめっちゃ懐かれてる割には実質的な裏切りに遭うし。 イシュトのことをめっちゃ気にかけてる割には、打算の関係でしょって言われちゃうし。 管理責任という意味で管理してるルーナには、脱走されちゃうけど気持ち的には同情しちゃうし。 ――人に恵まれなさすぎだろ!(笑) というちょっとしたジョークは半分置いといて(←半分は本気w)、みんなロキの強さに甘えすぎです。 そしてロキさん。 口下手すぎです!(笑)


そもそも、人の心を理解できないイシュトを増長させてきたのはロキも悪いと思うのです。 だってロキは、イシュトのことをちゃんと好きでしょう? イシュトは、自分が有する皇帝の力がロキに必要だから一緒にいてくれてると思ってるみたいだけど、その思考回路にポーカーフェイスを崩しかけるくらいには、ロキはイシュトを好きでしょう? ちゃんと、そう伝えれば良いんですよ。 我慢しないで、利害だけで一緒にいるわけじゃないって根気強く訴えれば良かったのになぁって思います。 ・・・まぁ、やりたくない気持ち分かるけど! だって絶対イシュト面倒くさいし!!(笑) それでも、ルーナが至極シンプルな言葉でイシュトの心に疑問を投じたのは事実で。 ロキが変わって欲しいと願っていたイシュトの新しい姿を、まもなく見られるのかなぁと思うと、早く報われて欲しくて仕方ないです。 とりあえずイシュトが片付いてもまだ、頑固っぷりではロキに劣らないベルタさんが控えてますからね!(笑) 一個ずつ、彼の懸念が経れば良いなぁと思います。


さて。 一方の正ヒロイン(笑)ルーナちゃんですが、やっぱり精霊の民の末裔としてやはり何かの力を秘めていそうでドキドキします。 秘めているのは彼女自身というより痣の方なのかな?とは今回思いましたが。 でもそれ以上に、輝石に操られていようと、離れた場所にいようと、どうしてもイシュトのことを想ってしまう彼女の矛盾に本当にドキドキしました! 何しろイシュトさんは真性のストーカーなので(…)、そういった人に押し倒される危険っていうのは、女性なら誰でも本能で持っていると思うんです。 多分、本気で怖かったはずだし、許せないはず。 それなのに、最終的にはイシュトのことを抱きしめ返すことができる彼女は、本当に強いなって思います。 彼女の魅力は迷うほどあって、その一つが新キャラ・ヒューレイさんの口説きを一撃で黙らせる舌鋒だったりするけど(笑)、でもいちばんは心の許容量の広さだと思ってます。 1巻のイェーガのこともそうだけど、ルーナは他人の弱さにとても寛容です。 それは多分、かつて自分の弱さを「皇帝」に救ってもらった過去があるから、なんじゃないかな。 だとすればそれはイシュトがルーナにあげた強さ。 今度はルーナがイシュトの弱さを救ってあげられるといいなぁって思います。 


それにしても彼女はすぐに脱走するし、皇帝のことを殴るし、わりと自由に行動しているイメージがあるんですけど、実情はとらわれの身に間違いないんですよね。 それなのに自由を感じさせるのは、たぶんルーナの精神がそうだから。 だからこそ、立場だけではなく、精神をも無視して彼女を奪ってしまう輝石の存在が怖いです。 イシュトを縛るもの、ルーナを縛るもの、そしてロキシスが解放したいと願うものは、もしかしたら同じものなのかもしれない。 2巻目から暗躍してた表向きの黒幕は捕まったものの、輝石をめぐるという意味でも(恋愛を含む含まず)人間関係という意味でも、解決にはまだ遠そう。 続きも楽しみですw



とらわれ舞姫の受難  はた迷惑な求愛者 (角川ビーンズ文庫)  とらわれ舞姫の受難二人きりの恋迷宮 (角川ビーンズ文庫)
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雨川恵 『とらわれ舞姫の受難 はた迷惑な求愛者』 の感想

とらわれ舞姫の受難 はた迷惑な求愛者
『とらわれ舞姫の受難 はた迷惑な求愛者』

雨川恵
(挿画:まち)

角川ビーンズ文庫
平成24年2月1日 初版発行/¥514+税





「あ、ま、待って。 あなたは何か勘違いしている。 私は……」
「ルーナ」
だが、彼の口から自分の名前が出てくると、そうも言えなくなる。 というか、何故この男は彼女のことを知っているのだ。 まさか、先刻の騎士たちの関係者だろうか。 この男もやはり、彼女を追っているのだろうか。
警戒も露わに、ルーナは男を睨みつける。 が、衝撃はまったく別の方向から襲ってきた。 ルーナの強張った表情など気にも留めず、男はにっこり笑うと、とんでもない台詞を吐いたのだ。
「愛してる」
「……は?」
「君を愛してる、ルーナ。 ずっと前から、君のことだけ見てる。 君の淡い赤みががった髪も、闇の中にきらめく宝石のような瞳も、冷静で綺麗な顔も、柔らかそうな唇も真珠色の歯も、剥き出しの腕も衣装に透ける脚も、他の娘のように偽っていない胸も大好きだ」
「気持ち悪!」



<感想>
『アネットと秘密の指輪』 シリーズで大ハマリした雨川恵さんの新シリーズです。 『アネット』 完結から1年以上経ってますよ・・・待ち望んでました!(感涙っ) 私は雨川さんの媚びのない地の文章が大好きでして、今回も冒頭でルーナが剣ノ舞姫として戦うに至るまでの情景描写にうならされました。 だって読んでるだけでその景色が頭に広がるんだもの!  少女小説で周囲に至るまでの明確なビジョンを感じることがあまりなくて、たまに 「今結局何が起きてるの?」 と思うときがあるんですが、雨川作品にはそういう心配がないので嬉しいです。 おかげで、ルーナが皇宮で迷うシーンでは、私も脳内で地図を描ききれず、ルーナと一緒に迷ってしまうほどでした(笑)。 だって迷うよその立地なら・・・ねぇ(訊くな)。


という訳で新作は、剣と魔法の王道ファンタジーでした。 数年前のとある事故がきっかけで剣闘士から 「剣ノ舞姫」 に転向したルーナがヒロイン。 幼い頃から面倒を見てくれたイェーガという興行主のもとで活躍してしていたある日、貴族から仕事の依頼が舞い込んで来る。  「魔法」 を使える貴族にろくな奴はいないと考えるルーナが嫌々ながらも仕事に赴くと、何故かそこには皇宮騎士が待ち構えていて、彼女は追われる身になってしまう。 しかも逃げ込んだ先で偶然出逢った美貌の男・イシュトが、突然ルーナに愛を囁いてきて・・・!? というお話。 全体的な雰囲気は割りとシリアスで、そんな中でも毅然としたルーナが美しく、イシュトが・・・オカシイです(笑)。


剣と魔法のファンタジーという設定は、個人的にはルーナの剣ノ舞姫という肩書きともども大好きなのですが、1巻目では 「剣」 の部分はそれほど強調されませんでした。 たしかにルーナは剣を閃かせて舞うように戦ってたけど、やっぱり 「剣と魔法」 と言うからには聖剣エクスカリバーみたいな究極の剣が欲しいわけですよ! そこだけちょっと残念でしたが、反面的に強調されていたのが 「魔法」 の部分で、この設定はとても好みで盛り上がりましたw  魔法というものはそもそも間借りしているような力だ・・・っていうのが面白い。 根源は 「精霊の民」 という古い一族が残した 「輝石」。  人はその輝石に術式をかけて魔法という偽りの能力を手にしているんですね。 で、どうやらルーナは精霊の民や輝石とも縁の深い出自のために巻き込まれていく・・・という感じ。 


輝石にかけられた術式が解除され、魔力を上回った時、何がおきるのかはまだ誰にも分からないんだけど、ルーナがそれを為すのを見てみたいんだと言うイシュトの体にも、魔力を維持するための仕掛けがされている。 輝石と魔法、大きな力の源となる存在はともに不自由な枷を嵌められていて、それゆえにどこか歪んでしまっているんですね。 他人に感情を抱けないイシュトも、ルーナに圧倒的なまでの信頼を抱かせてしまう輝石も、どちらも何かがおかししい。 そして、その歪んだ存在がともに求めるのが――ルーナ。 ルーナの、ルーナらしい輝きを求めざるを得ない彼らの不完全さに、ちょっと切なくなりました。 大きな力を抱えるということは、けっして自由と並び立てないんだなぁって。 だからこそ、求めるんだろうなって。 


あとはアレですね、雨川さんもあとがきで書かれているように、ヒーロー役がストーカーという究極設定(笑)。 むしろヤンデレ? 初対面で 「愛してる」 と囁きながら拉致、二度目に逢っても 「愛してる」、 顔を見るたびに 「愛してる」 と囁くわりには――ルーナの本質を全然見ていない、分かろうとしていないという恐ろしさ。 そんなの仮に *ただしイケメンに限る、という注釈がついてたとしても超コワイって!(笑) ・・・ただ一応この設定って、たぶん今シリーズを象徴するものでもあるんだろうなって思います。 理想を相手に押し付けざるを得ない人間の在り方的な・・・ね。 イシュトはルーナへの愛情に、イェーガはルーナとの親しみに、ルーナは皇帝への敬愛に・・・そうやって相手に感情を抱き押し付けることで平衡を保つのが人の弱さであり、逆に言えば 「可能性」 なんじゃないかって思うのです


だって、相手に押し付けた勝手な理想は、いつか必ず打ち破られるから。 最初にそれを砕いたイェーガは自分の手でルーナへの親しみを憎しみに変換してしまったけれど、そんなことをしても結局はルーナに救われるわけで。 本当に自分が向き合わなければいけない感情は何だったのか…イェーガ側の気持ちは今回描かれたなかったけど、彼の苦悩が止まる訳でないことは確かです。 イシュトにしたって、今は剣ノ舞姫としてのルーナを愛しているだけで、ルーナ本人を愛している訳じゃない。 生き生きと舞うルーナの姿はきっと美しい生命力に溢れてて、ただ生きることだけを己の使命だと感じているイシュトには、ものすごく輝かしいものに映っていたんだろうな・・・と想像するのは難くないけど、それはルーナの外側でしかない。 なので、 「想像してたのと、全然違う」 とむっとするイシュトは勝手だけど、そこでようやく 「ルーナ」 という人間と向き合ったんだなってすごく嬉しくなりました。 みんな、ここからなんだと思うのです。 理想から現実に目をむけ、居心地のよい場所から一歩踏み出したときに、自分がどう変われるのか。 そうやって変わるきっかけをくれる相手に出逢えたこと自体が奇跡なんじゃないか。 そんな気がするのです。 


大事なのは、誰かにとって 「奇跡」 と感じる絶対的な何かを、人間も為すことが出来るってことなんじゃないでしょうか。 ルーナにとっては、昔イェーガが命を救ってくれたこと、そして皇帝が自分とイェーガを救ってくれたことがそう。 圧倒的に不利な状況下で命を救うという大仰な現実は、神が用意してくれたものではなく、相手が彼女を救いたいと思ってくれたからこそなされたもの。 その現実を理想化してしまったのはルーナの勝手だけど、ただ 「救われた」 という事実は確かに奇跡なんだと思うのです。 だとすれば、イシュトがルーナと出逢えたことも、奇跡になると良いな。 彼の宝石のように美しく冷たい瞳を、太陽のようにみずから光り輝くものにルーナが変えることが出来たら、きっとそうなるんじゃないかなって思います。 


――ただ、ルーナの恋の相手としては、イシュトは難しすぎるけどなー(笑)。 ラストページとかやっぱりマジ怖い! 愛情重い!!(笑) あの思考回路を根本的にルーナが叩き直さなきゃいけないわけで、早くも恋の・・・というか、ただの対人関係だとしても多難が見えすぎです。 個人的にはロキさんオススメ! もうロキさんで良いような気がします!(いやダメだろ・笑) というわけで続きが気になるんですけど・・・えーともちろん刊行されますよね??? 個人的には 『アネット』 シリーズへの愛には届きませんでしたが、まだまだ謎も残ってるので、続刊楽しみです!



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