久賀理世 『英国マザーグース物語 聖夜に捧ぐ鎮魂歌』 の感想

聖夜に捧ぐ鎮魂歌
『英国マザーグース物語 聖夜に捧ぐ鎮魂歌』

久賀理世


集英社コバルト文庫
2013年6月10日 第1刷発行/¥580+税





「叔父上。残念ながら、クリスマスに叔父上の力を借りることはできなくなりました。わたしたち兄妹は、ノーフォークに赴かなくてはならないようです」
「ノーフォーク?」
セシルはきょとんとした。アッシュフォード家にとっては、とくに馴染みのない土地だ。
かすれ声で、ダニエルが言った。
「セシル。わたしたちはどうやら、クリストファー・リーズの人質にとられたらしい」



<ご紹介>
『英国マザーグース物語』シリーズ第5弾。 7月期に発売される次巻で完結です。
子爵家の令嬢でありながら、行方不明となった父の情報をつかむために男装して新聞社で働くセシル。 名も知らぬ婚約者がいるにもかかわらず、どこかで謎めいた雰囲気の同僚・ジュリアンに惹かれていったが、実はジュリアンこそがセシルの婚約者であり、また、父の情報を探る政府のスパイだったのだ。 ずっと騙されていたことにショックを受けるセシル。 いつの間にか彼女を真剣に愛しているジュリアンは、言葉を尽くして想いを伝えようとするが、拒絶され会うことも叶わなくなってしまう。 しかし、二人の隙をつくかのように、クリストファー・リーズから一通の招待状が届けられる。 人質のように囲われたセシルに対し、クリストファーは英国転覆の謀(はかりごと)を仄めかしてきて――!?

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久賀理世 『英国マザーグース物語 婚約は事件の幕開け!』 の感想

英国マザーグース物語
『英国マザーグース物語』


久世理世 (イラスト:あき)

集英社コバルト文庫
2012年2月10日第1刷発行
2012年3月18日第2刷発行




『あの、ご用件はなんでしょう?』
『お嫁さんを探しに、かな』


<ご紹介>
19世紀、大英帝国の首都――ロンドン。 偉大な探検家である当主が亡くなり、長男が爵位を継ぐことになったアッシュフォード子爵家。 長女セシルはといえば、子爵家の未来のため、顔も知らない相手と結婚することが決まっている。 だが、好奇心旺盛な彼女は結婚までの一年間、新聞記者になるという前代未聞の行動に出た! 「子爵令嬢」という正体を隠し、少年姿で働くセシルの前に現れたのは……!?(裏表紙より) 


<感想>
ずっと気になってたので読んでみました。
いやだって、同じくコバルト文庫の青木祐子さん『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズに惚れ込んだ身としては、ヴィクトリア朝の大英帝国が舞台というだけでも興奮するのに、挿絵が(同じ)あきさんだっていうことに大興奮しましてですね! これは絶対読まなきゃ!と心に誓ったわけです。 ・・・まぁその割には、発売から半年くらい経ってから読んだわけですけどね(笑)。 そんなこともあるよね~(えー。


お話としては、子爵令嬢という身分を隠して新米新聞記者として活躍(?)するセシルと、彼女が一年後に結婚するお相手であるジュリアンが、さまざまな謎をマザーグースの詩で解決していく短編連作物語でした。 セシルの父親は大英帝国の英雄ともいえる豪傑な冒険家であり、その血を脈々と受け継いでいるセシルも、伯爵令嬢にしては怪奇趣味があったり好奇心が旺盛すぎたり・・・と、多少風変わりな面を持っている女の子だったりします。 乙女の象徴でもある長い髪を切り、性別を偽って新聞記者として働くという型破りな行動ももその気性ゆえ・・・と思わせておいて、実は彼女だけが気付いている「大英帝国を揺るがす事件」を追うためだという賢く慎重な一面もあったりするのです。 うん、なかなかに魅力的なヒロインでした。 何より、あきさんの描く男装がめちゃめちゃ可愛いんです! 1話目の扉絵で、虫眼鏡構えてる彼女に一目惚れでしたw


一方のジュリアンも、実は一風変わった青年。 侯爵家の跡取りである彼は、セシルの兄の親友であり、かつセシルの婚約者でもある。 けれど、父親の喪が明ける一年後まで結婚のことは考えたくないというセシルの意思を尊重して(面白がって?・笑)、その事実を打ち明けないまま「新聞記者のセシル」の前に現れるんですね。 天才的なまでに素敵な絵を描く彼は、セシルの記事に華を添える「絵師」として労働に勤しむことになり、ふたりはパートナーとしてロンドンに散らばっている「謎」を見つけては解決していくことになるのです。 ところで全然関係ない話だけど、私はジュリアンという名前がなかなか覚えられず、気付くと「ジョナサン」と呼んでしまいます(笑)。 某カモメかよ!というわけで、私の中で彼は「カモメさん」と呼ばれていたりするだけど・・・ご、ごめんジュリアン(爆笑)。


さて、久賀さんの作品を読むのは初めてなのですが、正直なことを申しあげると、ちょっと読みづらかったです。 ひらがなと漢字の使い分けが私の脳内変換と合わなくて、例えば「二度と」を「にどと」とひらがな表記されてたりするのが読みづらいかなって。 ただこれは良い悪いの話ではなく、相性の話。 むしろ問題なのは、全体的に会話での説明口調が多い点じゃないかと。 会話に説明を織り込むのではなく、説明するための会話に聞こえてしまって勿体ないんです。 冒頭のダニエルとジョナサン…じゃない(笑)ジュリアンの会話からしてそうで、セシルのことを全部伝えきる勢いで外見から性格までをダニエルが説明することに違和感を覚えました。 その辺はある程度仄めかせておいて、「どんな女の子なのかな?」と思わせるくらいの方が良いんじゃないかなぁと思いました。 


まぁそんな感じでところどころにひっかかりつつも面白く読めたのは、セシルの存在と「謎」というキーワードのおかげでした。 血痕を見ると興奮してやれ殺人事件だとかやれ吸血鬼だのと物騒なことを、キラキラとまるでロマンチックなものを見るような雰囲気で語りだすセシルが、私にはとても魅力的! だって実際19~20世紀のロンドンには、確かにダークなものがよく似合うんだもの。 謎にときめく様子が可愛くて眼福でしたw

とはいえ、事件を解決するのはそんな彼女ではなく、ジュリアンの方。 セシルの言葉とマザーグースの詩をきっかけにして謎を解いていくんだけど、それって彼の描く絵が素晴らしいのと、きっと同じ理由なんだと思う。 多分彼の眼には、他の人には見えない何かが見えている。 セシルの話から具体的な絵を描いて見せる想像力、セシルが目を背けている美しさをそのまま描き出すことが出来る真っ直ぐな視点。 そういったものが、現実に散らばる謎をかき集めて一枚の絵を描くように謎を解いていくんだろうけど、きっかけになるのはいつもセシルの存在。 彼女の言葉で彼の灰色の脳細胞が動き出して事件を解決するならば、それはジュリアンだけの手柄では絶対にないんだよね。 芸術家にはミューズ(女神)の存在が大きいと聞いたことあるけれど、ジュリアンにとってはまさにセシルがそうなんだろうなぁw この辺の関係性は、ラブコメ好きなりるさんとしては、とっても満足のいくものでした。 


最初は日常の謎から始まって、第3話ではセシルが隠していた大いなる謎へと立ち向かうことになります。 この展開がちょっと急で、もっとじっくりやっても良いような気がしたけれど、これだけでは終わらないみたいなので一安心。 ミステリ読みには謎自体に魅力を感じないけれど、前述したように、謎を解く=セシルとジュリアンの共同作業だっていう部分にときめきます! 実際、セシルの男装は期限付きなわけで、今後の彼女の身の振り方も気になるんですよね。 婚約者がいるのに好きになっちゃってどうしよう!?みたいなじれったーい展開を期待してます!(笑)
 


●ちなみに『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズの感想一覧は こちら
 ラスト辺り書けてなくてすみません!!

●続編はこちら!



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