劇場版 (実写) 『図書館戦争』 の感想

 
映画 図書館戦争 オリジナル・サウンドトラック
サントラ
Anchor Records (2013-04-24)
売り上げランキング: 252


『 未来を残してくれました 』


<感想>
というわけで 『図書館戦争』 の実写劇場版を観てまいりました! 

原作好き過ぎてマンガもアニメもアニメ劇場版もDVDも迷わずコンプリートして、その度にスタッフさんの熱い想いを作品から受け取ることが出来て感動してきたわけですが、それでも 「いや実写はどうなんだろう・・・?」 とちょっと恐れを抱いてしまったのも事実。 いやだってホラ、実写って三次元じゃないですか・・・守備範囲(=二次元・笑)の外じゃないですか・・・しかも私、邦画観るの10年ぶりぐらいだっていうね・・・(うわー・笑)。 

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有川浩 『植物図鑑』の感想

植物図鑑
『植物図鑑』

有川浩

株式会社角川書店
平成21年6月30日 初版発行
平成21年7月30日 三版発行/¥1500+税





『 お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか 』


<ご紹介>
ケイタイ小説サイト 『小説屋sari-sari』 で発表された表題作シリーズとその番外編2編が併録された、連作短編。 身近な植物が季節と気持ちの移り変わりを演出してくれる、素敵なラブストーリーです。 作中で登場するレシピ付。 
酔っ払って帰宅したある冬の日、河野さやかは自宅前で、空腹で行き倒れていた青年と出会う。  『咬みません。躾のできたよい子です』 ・・・犬のような仕草にほだされ、さやかはつい彼を「拾って」しまう。 青年・イツキは想像以上に 「躾のできた」 男で、夜も無事に過ごせたどころか、朝食まで完璧。 久々の温かいご飯にすっかり癒されてしまったさやかは思わず 『行く先ないんなら――ここにいない?』とイツキを引き止めて・・・穏やかな同居生活が始まった。 けれどさやかがイツキについて知っていることは、名前と、野草に詳しいことと、作ってくれる食事が伝える優しさだけ。 そして秋、イツキは静かに姿を消してしまい・・・。 


<感想>
正直に申し上げます。 読んでいる間にずっとニヤニヤしたり身悶えたりしていたためか、途中で顔の筋肉がツりました(笑)。 何ですか、顔の筋肉がツるって! こんな経験、ラブコメ脳におかされたりるさんとしても、さすがに初めてでしたよ。 要するに、そのくらい破壊力のあるラブコメだったってことだと思うんですが、それにしても痛かった(笑)。 


さて。 あとがきで有川さんがラピュタ的な設定を示して 「男の子の前に美少女が落ちてくるなら女の子の前にもイケメンが落ちてきて何が悪い!」 と書かれてましたが、全然悪くないっ! むしろウェルカムです!(笑) 恰好良くて躾が出来てて家事完璧で優しくて恋人には甘々な人が降ってきたら、そんなの大歓迎すぎますよね (力説)。 というわけで、そんなウェルカムな設定がまずツボでした。 


その上で、さやかとイツキがあくまでも 「同居」 だっていう微妙な関係が素敵。 家と経済力をさやかが提供する代わりに家事をイツキが担当するという、いわば雇用関係で同居が始まるのが可愛いです。 だってやっぱり、 「恋」 に成長するまでのドキドキをしっかり描いてくれるのが有川作品の大きな魅力なんだもん、いきなり同棲じゃ、つまらない。 夜にバイトを入れちゃうような節度ある関係のなかで恋が育まれるから魅力的なの! 洗濯物を誰が干すかで真っ赤になったり、イツキの影響でそれまで興味のなかった野草にどんどんはまっていくさやかの様子は、私が見ていてもすっごく可愛かった。 図鑑でこっそり勉強始めたときなんて特にそうで、これじゃイツキも可愛く想っちゃうよなーってすごくよく伝わってきました。 


だからやっぱり、二人で 「狩り」 に行くシーンは、どれもこれもお気に入りですw 私自身が田舎暮らしなので野草に縁があるのも共感度が高い理由なのかもしれない。 二人が食べていた野草の中で私が食べたことないのは、イタドリくらいかな。 さやかが経験したツクシのエピソードなんかは、私が小さい頃そのまま体験したことです。 つい採りすぎちゃうんだよね。 あ、でもフキノトウのてんぷらは私、大好きですよ! 二人は苦々しく食べてたけど、味噌汁にも結構入れて 「ほろ苦」 を味わうのも好きだな。 好みが違うのはそれくらいで、イツキの作る他のレシピは、どれも本当に美味しそうっ。 いちばん気になってるのがノビル (私の地域ではノビロと言います) のパスタ! あれ美味しそうっ!! まもなくノビルの季節なので、採れたら作ってみようと決意してるのだw  


二人を見てて思うことは、イツキの料理はきっとどこで食べても美味しいものなんだろうけど、さやかがいるからあそこまで美味しんだろうな、ってことです。 イツキ自身も言ってるけど、手の込んだものを作ってるわけじゃない。 それでもさやかが美味しい美味しいと食べてくれるから、イツキの中にも優しい気持ちが育っていって、料理にもその想いが染み込んでいくだと思うのです。 イツキの気持ちが、料理を育たせる。 それを食べたさやかの中で、また想いが深まる。 ・・・うわぁ、なんて素敵な食物連鎖っ! これだもん、こっちまでニヤニヤしたくなるってもんですw それで顔がツるんだけどさ(笑)。 その痛さも幸せでしたw


・・・あーでも、痛いのは顔だけではなくて、途中、さやかがイツキを失った後は、私の胸まで痛かったです。 別れは冒頭で描かれているので、いつかそんな日が訪れることは読者は分かってるんですが、それでも辛かった。 あとはもう、ひたすら祈りながら読んでいたような気がします。 また出会えるって。 花を咲かせ、実をつけ、一度しおれたような状態で冬を越す植物たちがまた春に花を咲かせるように……一定のサイクルで季節をめぐる植物たちと同じように、二人が長い冬を経て、また同じ季節に出会えることをただただ信じて、読んでいました。 


だって、さやかとイツキが暮らした時間って、そういう時間だと思えたから。 『普通ダンプとかで轢かれたら死ぬよねえ。雑草ってすごい』 と言うシーンがあるんだけど、それって野草と密接に暮らしていた二人にピッタリな言葉だと思うんです。 雑草を食べて想いを深め合ってきたんだもん、ちょっとくらい離れたって傷ついたって何したって、死んでなくなっちゃうような気持ちじゃない。 実際、さやかがイツキが残したレシピを辿る行為は、諦めるためでも忘れるためでもなくて、想いを深めるものだった。 イツキだって、どこに居たってヘクソカズラを見た瞬間に泣いてしまえるくらいに、心に根付いたものだった。 …だから私も、ずっと二人を信じて読んでました。 絶対会えるんだって。 そう思わせてくれる、本当に素敵な物語でしたw



●関連記事 
<『図書館戦争』シリーズ感想一覧>
『図書館戦争』 ⇒『図書館内乱』 ⇒『図書館危機』 ⇒『図書館革命』 
『別冊図書館戦争1』 ⇒『別冊図書館戦争2』 
⇒『アニメ版DVD初回特典小説』1巻 ⇒2巻 ⇒3巻 ⇒4巻 ⇒5巻 
⇒白泉社コミック版『図書館戦争LOVE&WAR』1巻 ⇒2巻 ⇒3巻 ⇒4巻
<他作品感想>  
有川浩作品感想一覧  
「その他アニメ」カテゴリにアニメ版の1話ごと感想もあります


有川浩 『フリーター、家を買う。』の感想

フリーター、家を買う
『フリーター、家を買う。』

有川浩
幻冬舎
2009年8月25日 第1刷発行/¥1400+税





「よしっ」
誠治はワードを立ち上げて、開かれた新規ドキュメントに文章を打ち込んだ。 極太のフォントで拡大し、プリントアウトする。
『目標 : 就職する。
      金を貯める (当座の目標、百万)』
打ち出されたA4用紙を見ると少し気恥ずかしくなった。 まるで小学生の夏休みの目標みたいだ。
だが、こういう気恥ずかしいけじめが自分にはきっと必要なのだ。 その用紙を目出つように壁に貼り付ける。 何となく気合が入ったような気がした。



<ご紹介>
日経エンタ丸の内officeにてWeb連載された本編に、書きおろし後日談 (短編) を収録。
二流大学を卒業後、入社3ヶ月で自主退社してしまった武誠治は、アルバイトを繰り返すフリーター生活に突入。 駄目すぎる自分の姿から目をそらし続けたある日、今までのツケを一気に払うような出来事が降りかかる。 『ごめんなさいごめんなさい今日も死ねませんでした…』 虚ろな言葉を繰り返す母は、重度の鬱病に罹っていた…!!  二十年間に渡る町内からのいじめを誠治に隠し通した強い母。 同じ家に住みながら気付くことも出来なかった不甲斐ない自分。 ―― ここは一念発起だろ!  精神病に理解のない父と初めての看病への戸惑い、そして難航する就職活動に、誠治は傷だらけになりながらも立ち向かう。 「カッコ悪すぎな俺」 の成長記です。


<感想>
あぁもう、痛い。 本当に痛い。 誰が痛いって、私が、だ。 誠治と同様に一度就職に失敗した (氷河期だったのです) 私としては、身に詰まされる部分が多々ありました。 就職出来ない自分に確かに感じていた不甲斐なさや焦りが、アルバイトをすることで日銭が入る安心感や気楽さに変貌してしまう、逃げの気持ち。 そういうの、私も知ってる。 でも誠治は家のため家族のために、私なんかよりもの凄い早いスピードで大人になったのが凄い。 自分のどこが駄目なのかも分からないような駄目だった男が、どんどん変わっていく…… 「そんなカッコ良さ、どこに秘めてたん!?」 と目が離せなくて、結局一気に読んじゃった。 面白かったです。


お話の軸としては二つあって、一つは母親が精神病を患ったことで顕著になった家族不和や、陰湿な大人のいじめという 「家族」 の問題。 もう一つは、どうしようもないフリーターだった誠治が直面する 「就職」 の問題。 この二軸は誠治を中心に密接に絡み合うんだけど、物語の冒頭から両者を誠治に突きつけて、どん底からスタートさせるところが容赦ない(笑)。 最初の家族ゲンカなんてめっちゃ怖かったもん。 何が怖いって、毎日一緒に暮らしてたのに何も見えてなかったという 「現実」 が恐ろしいのです。 だからこそ、その現実を見抜けない不甲斐ない自分と決別したい… というストーリーが明確で、とても有川さんらしい仕上がりだったと思います。


『親の顔が見てみたい』 なぁんて言われちゃう最低な自分。 でも、その言葉が誠治を奮い立たせたのも事実なんだよね。 母のためにやっとの思いで立ち上がって、一歩ずつ真っ当な道を歩み始めたら、今度は自分の父親がダメな人間だったんだと見えてしまう ――。 私は自分がファザコンのマザコンのシスコンなので (最低だな!・笑)、 父を軽蔑しなければならない誠治の痛み妙に共感してしまい、ショックを受けました。 それって耐えられないくらい辛いことだよ。 自分ならどうするだろう?と深く考えさせれました。 でも事態が深刻すぎて、自分でも打開策が浮かばないの。


なので、今作で一番良かったのは、ガテンなおっさんたちの存在感だった気がします。 父と関わることを諦めなさせないおっさん達のパワーが、マジで恰好良かった!! 有川さんが描くおっさんの素敵さは 『三匹のおっさん』 (⇒感想) に詳しいけど、ガテンなおっさんも負けてない。 誠治をあっさり懐に入れてくれた度量の深さもあるし、大人は知らないものが怖いという潜在意識に向き合うことも出来てる。 その上で、父を、大人を、最初から疑うなってアドバイスできる熱さったら!! プライドの高い男は扱いやすいと言える狡さったら!!  ―― 人生経験ってこういう時に差が出るんだな、と見せ付けられるくらいに恰好良かったですw  作業長は奮起した誠治に惚れこんでたけど、私はむしろ作業長に惚れそうな勢いでした。 とにかく素敵でした(笑)。 


誠治の就職活動の話は、有川さんなりの就活マニュアルになってて、読み応えありました。 面接の心意気や受答えの仕方をレクチャーするところなんか、すごく参考になるんじゃないでしょうか。 でもこの花丸なマニュアルさえ安っぽく感じさせてしまう誠治の志望動機には、ちょっと泣きそうでしたねー。 履歴書一枚書くのを億劫がってた男が、 『これが言いたかった』 と思える動機を抱けるようになるなんてスゴイ。 誠治はいろんな人に支えて貰ったけど、素直に支えられた彼も実は偉いと思います。 人の意見に素直に耳を傾けられるのは、その人の素敵な資質だもの。 支えたいと思わせる何かは、母親譲りの彼の長所なんだろうな。 一喜一憂どころか一喜百憂の現状で、その 「一喜」 の尊さを噛み締める生活って、きっとめちゃくちゃ辛かったはず。 でも成長した誠治を見てると、きっとめちゃくちゃ掛け替えのないものだったろうなって分かるのが嬉しい。 就職した後の彼からはまさにそれが漂ってますよね。 うん、何かすごく良い成長記を読みました。 楽しかったですw


蛇足だけど… 有川作品と言えばラブコメ!という人向けにちょっと書く (自分のことです・笑)。  何しろ設定が、どん底スタートゴール無しなジェットコースター人生なので、誠治くんはラブに勤しむ暇なんてないんです。 でも、やっと後半に運命の人とめぐり合うんだけど… 私はこのラブ話さえもが、彼の成長の証に見えて仕方なかった。 彼はこんなに他人を思いやれる人だったっけ? こんな風に自分に厳しく在れる人だったっけ? ―― そういう嬉しい気持ちが大きくて、恋愛というよりは成長した誠治くんの 「人との向き合い方」 を見せられたような印象です。 そんな訳で恋愛要素は少なめだけど、元ダメニートな誠治の背中を見て豊川や千葉ちゃんが育つという素敵な連鎖を見られるので、ある意味育成ゲームだと思えばイイのかもしれないですねーw (←絶対違う!・笑)



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有川浩 『三匹のおっさん』の感想

三匹のおっさん

『三匹のおっさん』

有川浩
(挿画:須藤真澄)
文藝春秋
2009年3月15日 第1刷発行/¥1524+税




「 俺たちのことはジジイと呼ぶな。 ――おっさんと呼べ 」


<ご紹介>
『別冊文藝春秋』 に掲載された読みきりシリーズ6話を収録した1冊。 まるごと 「三匹のおっさん」 が楽しめます。
キヨとシゲとノリ …… かつて 「三匹の悪ガキ」 と呼ばれた少年達も、今は還暦を控えた 「三匹のおっさん」。  キヨが定年退職を迎えたこともあり、シゲは私設自警団として町内を守る 「暇つぶし」 を提案する。 カツアゲ犯、強姦魔、初恋詐欺などいろんな事件をこっそりと、しかし最高にカッコ良く解決するおっさん達に、最初は距離を置いていた孫の祐希も次第に理解を示すようになる。 町内で起きる事件にも家族の抱えるいざこざにも真正面から立ち向かう三匹の、活劇小説です。


<感想>
いやビックリ。 すごく面白かったです!!  何ていうか私、おっさん萌えの素養ないし (児玉清氏は別格・笑)、 ラブコメの名手である有川さんに求める作品傾向とも違うし、正直そんなに楽しめないんじゃないかと思ってました。 もう深々と頭を下げます。 本気で面白かった、疑ってごめんなさいっ!!  えーと、三匹のおっさん達が近頃忘れがちな礼儀とか粋とかをしっかり守りつつ (ここポイント)、 でもちょっとだけハメを外してバッタバッタと悪を斬る物語です。 それぞれの特技を生かして犯人をやり込める手段は、実はこちらも犯罪ギリギリだったりするんだけど、それが実に爽快なのだ。 


三匹の根底には家族やご町内など、手の届く範囲はしっかりと守りたいという熱い気持ちがある。 これって主人公が若者だと身近な人しか守れないジレンマを抱える展開になるかもしれないけど (あ、 『るろうに剣心』 みたいですね)、 おっさんたちは人生経験だけは豊富なので、その辺はもう割り切ってるのも物語をスッキリさせてる要因。 彼らは、自分達が守るべきもの、そして自分に出来る事と出来ない事を見誤らない。 冷静に分析し、どうやれば相手を封じれるかを考え、経験を生かして敵と対峙するんだもん、カッコ良くないわけがない! 一方で、三匹が年配だというだけであっさり見縊る敵さん達の底の浅さが際立つんだから、物語構成として上手です。 あとがきにあった 「時代劇を現代でやった」 という効果は、そこに一番表れてました。  いやぁ爽快。


なので、三匹に引きづられるように祐希がどんどんカッコ良くなっていくのも頷けるってものです。 最初こそ男気の発揮の仕方が分からないイマドキ少年だった祐希が、キヨさんたちの活躍を目にして自分の矮小さを実感し、少しずつ祖父を尊敬していくようになる過程にはドキドキしました。 オトコノコってこんなに変わるんだ!って。 で、その 「変化」 を他人に見せたくなくて意地張っちゃうところが、オンナゴコロをくすぐるんですよ!(笑)  私は元々家族をテーマにしたお話に弱いので、祐希とキヨさんの掛け合いがどんどん息の合ったものに変化していくのを見るのが好きでした。 絶対に口に出さないけど、心のどこかに相手への尊敬を秘めている、そんな家族で在れたら素敵ですよね。 お蔭様で、期待薄だったラブコメパートも祐希がしっかり担ってくれました。 早苗ちゃん可愛すぎる!(笑) いざという時に積極的になれる女の子は 「壮絶に」 可愛かったですw


この本を読んでいて一番感じたのは、実生活での距離が近い人との、距離の取り方。 例えば妻。 例えば息子夫婦。 例えば孫。 例えば娘。 例えば ――親友。 長年連れ添ったはずの妻への接し方を見直したり、年の離れた孫と友人のような関係を孫と築けたり、親友にだって気を配る。 何ていうか 「親しき仲にも礼儀あり」 という感じで、近い距離感に甘えないのが粋だなぁと思う。 礼儀を欠くと、足元を掬われる ――それこそキヨさんと息子夫婦や第3話のシゲさんのように、 「家族」 だって簡単に崩壊してしまう。 阻止するには多大な精神的エネルギーが必要だけど、それを使ってでも取り戻したい関係が家族なわけで、だからこそ 『取り憑かれる隙を作ったのは俺』 と言えるシゲさんの潔さが最高に恰好イイ。 全体的に、貴子や登美子など社会との関わりが薄い女性陣が 「取り憑かれる」 ことが多く (ご近所や家庭内で社会性の高かった芳江は除く)、 社会で揉まれてきた男性陣がしっかりしているのも特徴ですね。 相手との距離感って人間社会で揉まれて学ぶんだなぁ。 大切な人とどれだけ近くにいても、ぼんやりとしてはいけない。 とことん大事にするためにはどうしたらいいのか。 …そんなことを思わされた1冊でしたw

以下、各話語りー。

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有川浩 『塩の街』の感想

有川浩『塩の街』
『塩の街』

有川浩
角川文庫
平成二十二年一月二十五日 初版発行/¥667+税





真奈は静かに白い壁を見つめた。 ―― あたしはあの人を待つのだから、伝染ろうとするこの白い色になど負けない。 胸の前で祈るように両手を組む。
どうか、あの人が無事に戻ってきますように。
世界なんかどうなってもいい。 あの人だけが無事だったらそれで ―― 他には何も要らない。 欲しくない。 だからどうか、
あの人をください。
あたしにとってすべての意味を持っているあの人を。



<ご紹介>
有川浩さんのデビュー作にして 「自衛隊3部作」 の1作目を、角川で 「再」 文庫化。 本編後の番外編も収録された、待望の完全版です。
「きれいな海に行きたいんだ」 ―― 突然塩が街を飲み込み、人間を塩化死させるようになったある日。 真奈はそう言って行き倒れていた青年を拾った。 真奈の大家である秋庭はそんな彼女を叱り付けるも、青年の願いを叶えるために海を目指す。 けれど真奈は知らなかったのだ。 青年が大事に抱えるリュックに、何が入っているのか。 何を抱えていたのか。 それに、秋庭が何を恐れていたのかなんて…。 その出会いを境にじわじわと様相を変えていく二人の生活。 そして―― 「世界とか、救ってみたくない?」 最後に現れた秋庭の旧友・入江の言葉が、二人と世界の運命を変えるのだった…!!  塩害が進む都会で偶然身を寄せ合うことになった真奈と秋庭が辿る、SF調恋愛ドラマです。


<感想>
ずっと読みたかった、有川浩さんのデビュー受賞作。 私が有川さんを知った頃には既にこの作品の電撃文庫版を見かけることはなくて、単行本ばかりだったんですよね。 何故一番最初の作品が文庫に収録されるのが遅かったのか、その経緯は あとがき に詳しいですが、お陰で長いこと待たされました。 が、この 「待つ期間」 も楽しかったです。 その間に有川さんの他作品を幾つか読んで、私の 「好き」 はピークに達していたので、ここで原点に戻って楽しめるというのは、何だかとても贅沢な行為に思えたからです。 2010年に文庫化してくれてありがとうw


約450頁ほどあるこの 「再」 文庫版ですが、タイトルの 『塩の街』 自体はその半分強ほどの6章構成。 残りは 『その後』 と題された番外編になります。 主人公である真奈と秋庭は最初から登場しているものの、 「幕間」 より前の部分では一歩引いた俯瞰的視点で語られ、後の部分では真奈たちと同じ目線で物語が展開する、という流れがとても印象的でした。


本編前半部分では、何故塩害が起きているのか、塩害がどういう事態を招くのか、そういう説明が全くないまま真奈たちの生活が描かれます。 その在り方はどこか頼りなくて、不可思議な事態に陥っている世界の中でも更にちっぽけな一部分でしかないことを強調されているかのようでした。 世界はそんなに優しくないので、真奈ちゃんの気持ちや 「塩」 の実態を一つずつ手探りしながら読み進めなければなりません。 一体塩害って何なの、真奈たちはどうなってしまうんだろう?  …そんな思いが尽きなくて、気付くとこのちょっと不思議な世界にハマりこんでるからスゴイ。 第1章で、遼一という青年を通して 「塩」 がもたらす哀愁を見せ付けられ。 第2章では塩害による被害がとてもつもなく大きいものだとを見せ付けられて。  その救いようのなさに世界の大きさを改めて見せ付けられる… という演出が前半部分の主軸でした。 


なので、3章で真奈ちゃんが自分の過ちと小ささに気付いたあたりから、心理的描写が一気に増えたのも面白いです。 それまでクローズアップされてたのは世界というマクロなもので、真奈はその中の微小な存在で仕方なかった。 それなのに、入江の登場で物語は劇的に変化し、 「世界を救う」 というマクロさが一気に身近になった途端、今度は視点が真奈たちの内面的な部分に切り替わるんだもの。 秋庭の一挙一動にドキドキしたかったのに、それを邪魔するのが 「世界」 そのものだなんて。 好きな人と一緒にいたいだけなのに、今の世界のままでは一緒にいられないなんて。 そんなジレンマを味わっていくうちにいつの間にか、 「真奈」 も 「恋」 も 「世界」 も全部平等に大きな存在として物語に落とし込まれているですよね。  『優しくする時に怒る』 という秋庭が、怒りながら真奈に触れたこと。 つまりそれは 「優しさ」 そのものな訳で ―― 恋ってこんな大袈裟でいいんだ。 個人の感情が世界に太刀打ちできないなんて嘘なんだ。 二人をみてると、そんな風に感じてすごくドキドキしました。 二人の恋が二人を救って、ついでに世界も救ってみた。 それできっと、全部正解なんだろうな。


ただ正直言うと、対 「塩」 作戦がほとんど描かれていないことはちょっと残念だったな。  『空の中』 『海の底』 のどちらも、敵対する存在との戦い方が魅力的だったので、 『塩の街』 でも期待してたんだけどな…。 でもその分今回は、入江の正論と鬼畜さを織り交ぜた交渉術が面白く読みましたよ!  もしかして素で秋庭のストーカーなんじゃないの?とか、こんな人身近にいたら本気でヤだ!とか、思うところはいろいろあったけど楽しかった(笑)。 秋庭は秋庭で、序盤で真奈ちゃんに 「拾ってくるな」 って言ってたけど、入江といい真奈といい秋庭こそ収集体質なんじゃないのか?とツッコミ入れたりねw(酷!)   ここで終わっちゃうとラブ的に確かに寂しいので、 『その後』 を追加した判断は正しかったと思います。 そっちは甘々のメロメロなお話ばかりで大満足だったんですが (入江編は除くけど・笑)、 一番感じたツッコミはこれでした。  ――秋庭、2年以上耐えて偉かったねっ♪ (←いろいろ台なし!・笑)



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<『図書館戦争』シリーズ感想一覧>
『図書館戦争』 ⇒『図書館内乱』 ⇒『図書館危機』 ⇒『図書館革命』 
『別冊図書館戦争1』 ⇒『別冊図書館戦争2』 
⇒『アニメ版DVD初回特典小説』1巻 ⇒2巻 ⇒3巻 ⇒4巻 ⇒5巻 
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<他作品感想>  
有川浩作品感想一覧  
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