2010.05.13
みもり 『地獄堂霊界通信・1』の感想
『地獄堂霊界通信・1』
みもり(漫画)
香月日輪(原作)
講談社アフタヌーンKC
2010年2月5日 初版発行/¥533+税
『 それぞれの仏の力がお前達を守るだろう その力をどう使うかは――自分達で探せ 』
『『『 …………万事承知! 』』』
『『『 …………万事承知! 』』』
<ご紹介>
1994年からポプラ社にて刊行されていた 『地獄堂霊界通信』 を、2008年に講談社ノベルス版として新装刊行。 それに合わせて、新装版イラスト担当のみもりさんによってマンガ化された、人気ジュブナイルシリーズです。
てつし・リョーチン・椎名の三人組は、 「イタズラ大王三人悪」 として、ご近所ではちょっとした有名人。 とある事件をきっかけに、町外れにある不気味な 「地獄堂」 の店主 (おやじ) と知り合ったてつしは、豹変したクラスメイトの裏に不思議な存在が関わっていると気付いて…。 水晶玉で町内のことなら何でも知っているとウワサのおやじから教わった不思議な言葉 「なうまくさまんだ ばざらだんかん」 その呪文が、3人を異世界への扉を開く――!! ちょっと不思議な存在を巡る、小学生の冒険譚です。
<感想>
イタズラ大好きな小学生3人組が活躍する物語。 「マンガ」 としてすっごく面白かったです。 私は根っからの講談社ノベルス大好きっ子(笑)なので、新装版が発売された時から気にはなってたんです。 でも、決定的に「欲しい」と思わせる決め手がなかったんだよね。 今回幸いなことに巻末に原作者によるショートストーリーが載ってるんですけど、私はそれよりも、みもりさんが描き出す 「マンガ」 としての魅力に惹かれました。 なので、マンガ版を選んだ自分を褒めてあげたいです (そこかよ!・笑)。
ちょっと怖くて不可思議なストーリーなのに、どこかほんわりと温かく感じるのは、何よりもてっちゃん達の表情が豊かに描かれているからです。 みもりさんのイタズラ3人組はどの子もとても表情が鮮やかで、すぐに泣いちゃうリョーチンの弱さの裏側にある優しさも、ちゃんと自分の目で物事を判断できる椎名の賢さも、イタズラっ子なてっちゃんから溢れ出る正義感も、画面から飛び出してきそうなほど生き生きしてるんだよね。 かと思うと、地獄堂のおやじの何とも言い難い薄気味悪さや、てっちゃんが 「何か」 を感じ取っているときの 「間」 もちゃんと表現されてて、不思議な空気感がある。 見ているだけで作品に惹きこまれました。
お話としては、地獄堂のおやじに導かれて 「神仏の力」 を手に入れたイタズラ3人組が、異世界の存在と対峙する…というもの。 妖怪や霊と戦う設定の作品は正直多々ありますが、この作品は前述したように子供の子供らしい魅力で物語を牽引してるのが強みかな。 てっちゃんが異世界の力を欲したのも霊や翳と戦うためではなく、それに苦しむ人を助けたかったから…という正義感溢れるところもカッコイイし、リョーチンと椎名がてっちゃん大好きなところ(笑)もカッコイイ。
てっちゃんの、イタズラはするけれど弱いものは守る義侠心や、幽霊が復讐に行ったと聞かされてもグっと我慢できる忍耐強さには、私も憧れる。 憧れは第2話で描かれたように一歩間違うと妬みにも繋がるけど、リョーチンたちにそういった負の要素がないのは彼らの美徳だよね。 2・3話が構成として締まっているのも、この対比があるからだと思います。 子供が活躍する勧善懲悪モノかと思うと、4話のように人間の裏に潜む醜さなんかも描かれてて、なかなか深い作りでした。
地獄堂のおやじに関しては読者もてっちゃん以上の知識は与えられないので、謎めいたままです。 人の不幸も平気で笑えるような冷淡さはホント不気味だけど、てっちゃんたちに人の心を諭すこともあったりして、この人何なんだろーって気になる気になる。 何がしたいんだろ? ところで、作中で度々登場する「いも飴」に惹かれたんですけど、それって何?(笑)
以下各話語り。
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