宮野美嘉 『幽霊伯爵の花嫁』の感想

幽霊伯爵の花嫁
『幽霊伯爵の花嫁』

宮野美嘉
(イラスト:増田メグミ)

小学館ルルル文庫
2011年6月29日 初版発行/¥552+税




「お前……何言ってんの」
エリオスが、ほとんど異常者を見るような目でサアラを見た。 サアラは笑顔でその視線を受け流す。
「だって、そうでしょう? 初めて会った、ろくに知りもしない相手を、いきなり好きになるなんて無理ですわ。 第一、ジェイク様は私の理想とは全く違いますし……そもそも十歳という年齢差は、あまり好ましいものとは言えませんでしょう?」
サアラは鉄壁の笑顔を微塵も崩すことのないまま、きっぱりと告げる。
「だから私、あなたを全然、全く、少しも、好きではないんです」
驚くジェイクの顔をじっと見つめ、サアラは続けた。
「だから――好きになりたいと思っているのですわ」
 


<ご紹介>
「17人目の花嫁」 が嫁いだのは本物の幽霊屋敷!? 第5回小学館ライトノベル大賞ルルル賞と読者賞のW受賞作です。 
7年前に家族を亡くしたサアラは、誰もが羨むほどの美少女。 婚約者もいたが、めぐりめぐって 「幽霊伯爵」 ジェイクの17人目の花嫁として嫁ぐことに。 広大な墓地に囲まれた館には、サアラと同年代風の少年・エリオスが不機嫌全開で待ち構えているし、使用人たちも妙に余所余所しい。 夫となるジェイクは鉄壁の無表情を誇り、夜は 「墓守」 としての仕事のために出かけてしまう。 しかも夫の代わりに夜な夜なサアラの寝室を訪れるのは、何と数多くの 「幽霊」 たち!! ―― そんな不思議な毎日だけれど、サアラはのんびりと満喫したうえに、恐ろしい幽霊や無表情なジェイクに積極的に関わり始めて・・・!? 


<感想>
全然違うものを買いに行った本屋さんで、たまたま発売日だったこの作品と目が合って購入しちゃいました(笑)。 だって私、 「幽霊」 も 「伯爵」 も 「花嫁」 も大好きなキーワードなんだもの!!(笑) それに、裏表紙のあらすじ欄を締めくくる 「美しく強か (したたか) に、少女は恋と幸せをつかみ取る!」 という文章と増田さんの表紙イラストから、右肩の分だけジェイクをリードする快活なサアラと、彼女を気遣わしげに見つめるジェイクの関係がよく伝わってくるのも好印象。 事前には全然知らなかった作品だったけど、妙に安心して読み始めることが出来ましたw 


お話としては、無愛想な幽霊伯爵に無理やり嫁がされた可憐なヒロインの奮闘記・・・ではなく(笑)、無愛想な幽霊伯爵が寄るな触るな関わるなと言っても、無理やり寄って触って関わっていっちゃう過激なヒロインのお話です(笑)。 むしろ 「奮闘記」 というのならば、それはサアラに関わる羽目になったコルドン家の人達の方ですね。 如何に彼女を落ち着かせ、心配ゆえに従わせようとしても、そんな心配はいらないとばかりに奔放に振舞うサアラが厄介すぎるw  それに、いちばん奮闘していたのはエリオスくんでしたね。 どんなに頑張って未来予想をしてみても、彼がサアラに敵う日が想像できないんですが(笑)、そんなところも魅力でしたw 


このお話のキーワードは、作者さんが仰ってるように、 「男は優しく、女は強く」 ですね。 とにかくサアラの造形が凄い! さっき彼女のことを「厄介」と評したけれど、自分の美しさを鼻にかけるどころか、それを武器に他人を翻弄していくあたりは、本当に厄介。 常に一歩下がって人を観察する聡明さゆえに、相手を簡単に挑発できちゃう性格も厄介。 何より、有り余る行動力が本当に厄介!

でもこれ、全部が彼女の魅力なんです。 美しさも、他人を踏み込ませない会話術も、どれもが 「サアラらしく」 在るために必要な武器であり、彼女の矜持を支えてきたものなんだよね。 大好きなおじいさまが好きでいてくれた自分を絶対に失いたくないという健気さの表れなんです。 ・・・それがどう変換されてあぁなっちゃうのかなーという部分も含めて(笑)、魅力なんだと思います。 一見サッパリとした性格のなかに、この上ない凶暴性を秘めているところとか、わたくし、個人的に超好みでした(笑)。 幽霊怖くないとか、ホント羨ましいんですけど (そこ!?・笑)


一方のジェイク様。 分かりにくいひととして評判なんだけど、意外とあっさりサアラには本性を見抜かれちゃう辺り、案外可愛いひとだと思いますw でも実は、サアラの本性のこともあっさり見抜いちゃったので、この二人すごくよく似たもの同士、なんですよね。 そりゃーもう運命なんじゃないかと思うくらい、厄介さがよく似てる!(笑) 

そんなわけで、いちばん好きなシーンは、お互いの 「仮面」 を見抜き合うシーンです。 警戒心が強くて、相手のことを観察できる冷静さと聡明さがあって、その上で相手を思い遣れる優しさがある。 それってつまり、相手に変な先入観を持たない、ということだと思うんです。 サアラはアシェリーゼのことも他人の憶測を受け付けないし、ジェイクに付きまとう黒い噂なんて最初から信じてない。 ジェイクだって彼女の奇行にコメントしない代わりに行動の理由を考えてる。 ひとつずつ、自分たちの目で相手を見つめて、良いところを見つけて、 「仮面」 以外の表情を引き出していく過程に、すごくドキドキしました。 お互いの極端な性格に隠れがちだけど、お互いにしか本性を見せないなんて、実は二人とも正直者ですよねw 


全体を通して読みにくいところがほとんどなくて、これってデビュー作なんだ…とビックリしました。 もう少し風景描写があれば良いなとは思うけど、伏線の使い方も上手。 例えば、サアラが 「ジェイク様はマーロウに似てる」 と言い続けてたけど、あれは過去の悲劇を知る前だと 「マーロウって馬じゃん!」 って思うけど(笑)、知った後だと、マーロウが命懸けで 「サアラを運んだ優しさ」 に泣きそうになるし、ジェイクにも 「サアラを運んだ優しさ」 があることが判明するわけです。 二重の意味でかかっている訳で、最上級の優しさの伝え方に感動したほど。 それに、気付くと幽霊たちがサアラ親衛隊になってるとか(笑)、微笑ましいじゃないですかw 
エリオスの 「母」 の件に触れてないことや、カインが諦めていないこと、 「ヒルベルト家に任せるべきではなかった」 という伯父の発言などを考慮すると、たぶん続きが出るんじゃないかと踏んでます。 果たしてどうかな? 続いたら買おうっと。

あ、最後に。 冒頭の引用箇所でサアラが 「十歳の年の差は好ましくない」 と発言してますが、その真意が分かるシーンでは、思いっきり共感しちゃいました! 私もロマンスグレーは大好きです!(笑) 





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