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杉山小弥花 『明治失業忍法帖・1 -じゃじゃ馬主君とリストラ忍者-』 の感想

明治失業忍法帖・1
『明治失業忍法帖・1  -じゃじゃ馬君主とリストラ忍者-』

杉山小弥花

秋田書店ボニータコミックスアルファ
平成23年5月30日 初版発行/¥514+税





『 ああこの人は 主君(わたし)がいなきゃ駄目なんだ 』


<ご紹介>
『ミステリーボニータ』 に掲載された1~5話+描き下ろしの序章に、別題の読みきりを併録した第1巻。 
時は明治7年。 激動する世の中が面白くて仕方ない 菊乃 は、断髪令で髪を切り、男勝りに袴を着こなす、いわゆる開花人種。 家の事情で元 「忍び」 の清十郎と見合いをすることになり、さっそく相手を見に行くが、彼は昼間から酒びたりの腑抜けた男だった。 こんな男と結婚なんて!・・・と思ったものの、トラブルに巻き込まれた菊乃を颯爽と助けてくれた清十郎はとても強く、その忍法に感激した菊乃は、念願の女学校に通うために偽りの婚約話を持ちかけて・・・!?   


<感想>
『当世白浪気質』(⇒感想) でほれ込んだ杉山小弥花さんの新作。 楽しみにしてたけど、案の定、分厚い一冊です(笑)。 『当世~』 もそうだったんだけど、杉山作品は1ページに絵と台詞がギューっと詰まっているので、読むのにすっごく時間がかかる。 その時間はとても濃く、有意義なことに間違いないんだけど、ただ、その 「濃さ」 をうまく言葉で表すのがとても難しく、感想も書きあぐねてました。 感じているものは確かにあるんだけど、何ていうか…私の気持ちが、言葉を巧みに使いあげたこの作品に全然追いつかない。 ひとつひとつの表現が独特で、意味深で、思わずうなちゃうくらい 「粋」 に仕上げられてる杉山節を読んじゃうと、自分の言葉はものすごく陳腐です。 そのくらい、この作品は登場人物たちの気持ちが 「言葉」 として完璧に表現されてて、そこがすごく面白かった!  


お話としては、学問も武道もどんと来い!な菊乃ちゃんをヒロインに、ご一新によりリストラされた忍者・清十郎を主人公にした、主従コメディです。 清十郎はいつもヘラヘラと酒を飲み続けるダメ男。 けれど実は優秀な忍者で、どれだけ命を賭しても報われなかった経験ゆえに無為に酔っているんですね。 その気質ゆえに己の本性を絶対に他人には見せなかったのに、菊乃に知られてしまってからは何故か彼女に安らぎを感じるようになちゃう・・・という、要するに、とっても面倒なひとです!(笑)

一方の菊乃は新時代に対して前向きで、乗馬も英語もとにかく何でも学びたくて仕方ない娘さん。 ある意味時代には早すぎる女性なので周囲からの理解が薄く、その反発からどうしてもとげとげと勝気になる部分がある。 けれど、何に対してもまっすぐ突っ走ることで目の前の壁をぶち破っていく逞しさがとにかく魅力的な・・・要するに、じゃじゃ馬なひとです!(笑)


そんな二人が主従関係を結んだことで、落ち着くどころかトラブルが増していく物語。 ただ、トラブルが増すのは周囲だけで、二人は (というか菊乃さんが) そこに首を突っ込み、その結果として想いを深め合っていくんだから面白いw 伊賀忍の清十郎と開花人種の菊乃とでは 「ざっと三百年の年代差夫婦だな」 と評されるくらい正反対なんだけど、第4話の独白の通り、 「己の本性を見せることは恥でありまた死なのだ」 と認識している点だけが二人の共通事項。 私はそれを 「プライドの高さ」 なんじゃないかと思ってます。 

二人とも「こうありたい」という自分への理想像みたいなものがあって、でもそう在れなくて、惨めな自分を必死で守ろうとしている。 そんな想いは誰にもあると思うけど、この二人はきっとそれがとても強い。 だからこその反動で、それを「許して欲しいという願い」もきっととても強いわけで、清十郎が変わらない菊乃に安堵を覚えるのは、自分を肯定して貰えるからだし、菊乃が子供っぽい清十郎の姿に悦びを感じるのは、女としての自分を許すことが出来るから。 たった一点の共通点を頼りに己を肯定出来るようになり、かつ、互いの絆を引き寄せあっていく様子からは、三百年の年代差は伺えなくて、その不器用な関係にクラクラしましたw 


特に、第3話と第5話がお気に入りです。 3話は初の清十郎視点。 それまでの菊乃さんの明るくも傍迷惑な(笑)視点とは違い、素面で陰気な彼の思考が楽しすぎる。 清十郎が敵を斬ったのは、菊乃を失いたくないという咄嗟の本心が発露したから。 それこそ、彼が隠したくて仕方ない 「本心」 が顕になった、ある意味とても恥ずかしい場面だと思います。 でも、だからこそ、清十郎というひとを信じられる場面でもあると思う。 菊乃は彼の闇の深さまでは理解していないし、彼もそこまで覗かせる気はきっとなくて、ただ光に憧れる虫のように菊乃に焦がれているだけ。 彼の面倒くさすぎる感性がとにかくもどかしく、そして、すごく良かった。 それは5話も同じで、菊乃は彼の闇を理解していないのに、それでも清十郎の冷たい部分を肯定してあげられる。 そんなところが魅力で、良い娘さんだなぁと嬉しくなりました。   


そんなこんなで、開花したばかりの明治という舞台で、いかに 「自分らしく」 生きるか、そもそも 「自分らしさ」 とは何なのか、そして初めて心揺さぶられる相手と出会うことで 「自分らしさ」 がどう変容していくのか…が楽しみな一作。 『当世~』 でも 『冷蔵庫の中に象』(併録作品) でも描かれるくらい著者最大の持ち味であるこのテーマに、清十郎と菊乃さんがどういう答えを見つけるのか。 ここは、杉山作品の文学臭に酔いしれて楽しんだ者勝ちだと思います。  

以下、各話語り。






●第一話 開花の忍者 
開花=菊乃 の 忍者=清十郎、ということで、清十郎が菊乃のものになることが端的に表現されたサブタイトルが笑えます。 カカア天下は運命だったという…(笑)。 激動の時代に対して 「己を手ばなしなにも望まないこと、それが私の得たたった一つの賢さです」 とうつけ者を演じる清十郎と、 「愛するには淋しくて憎むには空しいなら、おもしろがることが私の持ってるたった一つの賢さなのよ」 と真正面から切り込む菊乃さん。 この辺の台詞のやり取りがもうマジ痺れる! あと、散歩という概念がこの時代から始まったのか、と読んでてびっくりしました。 日本人って散歩しなかったんですねぇ。 


●第二話 人間万事塞翁が馬 
「十人もたどっていけば皆つながる」 という清十郎の言葉を信じて証人に辿り着く菊乃さんが只者じゃない!(笑) その上、女学校への伝手まで得ちゃうんだから、その行動力には感服ですよ。 何ていうか、彼女に負けちゃう清十郎さんの気持ちがちょっと分かるなぁ。 この真摯さは絆される。 一人前の男みたいに何でも自由にしたかった菊乃さんが、この辺りから、自分が奔馬になることはないんだと理解していくのが良いですね。 男にはなれなくても、奔馬の手綱を取ることを考え始める訳で・・・やっぱりカカア天下はお約束の未来だという…(笑)。 


●第三話 夏の虫は火中に飛ぶ 
「だから清十郎様は野暮なんです!」 で始まり 「それだから菊乃さんは野暮なんですよ」 で終わる構成とか、ホント好きだ! いちいち上手すぎて羨ましいです。 そして膝枕っ。 「高度な甘え方」 って場所のこと!? と違うと分かっててもツッコミたくなる(笑)屋根の上での膝枕がイイw  清十郎には本当にいろんな顔があって、普段のうつけも、本気を出した時の有能さも、闇を垣間見せる外道っぷりも、菊乃にだけ見せる子供っぽさも、それぞれ反発しあうベクトルを持ってるから素面だと陰気にならざるを得ないんだろうけど、でも膝枕で安らげるなら大丈夫な気がする。 殺してあげられるっていう発想がどれだけ剣呑でも、大丈夫な気がするな。 


●第四話 恋は女子の癪の種 
まさかの三角関係、しかも文字通りの恋の鞘当て! 燃えました!(笑)  三角関係に突入するなら清十郎側に女性が現れるかな?と思ってたので、槙の登場は予想外で楽しかったです。 道場で堂々と口説くところとか、ラブコメ好きの血が騒ぐキャラだなぁw しかも、清十郎の菊乃さん奪還作戦がまたイイんだよね。 「好いたホレたと口に出すのはお江戸じゃ野暮のやることさ!」 との言葉通り、清十郎は黙って作戦を実行して己の名前だけを棒に記しておくんだから、まったく野暮じゃないってことか。 菊乃さんの斜め上行く行動力が 「可愛かー」 で、無自覚でヤキモチを妬くあたりが 「わっぜぇ可愛か」 でしたw 


●第五話 猫の恋 
「ぬる燗の忍びがいてもいいですよね」 という菊乃さんの言葉に、うっかり涙ぐんでしまいましたよ。 清十郎は良い主・良い奥を持ったなぁと。 まじ可愛か…。 武士のまま死にたいという気持ちを清十郎は理解できているので、彼もまた同様のことを考えたことがあるんでしょう。 でも、菊乃にそれは教えない。 彼女が何でも知りたがっていることを分かっていても、教えず触れさせず遠ざけようとしている。 結果としてそれは立派な 「ぬる燗の忍び」 の姿。 夏の火のような菊乃さんと冷酷な清十郎が手を取り合って温度を分け合えば、結果的に 「ぬる燗」 になっていくんだろうなと思わせてくれるラストシーンが良かったですー。 



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