かずまこを 『ディアティア』 の感想

ディアティア

『ディアティア』

かずまこを

白泉社
2011年6月5日 初版発行/¥743+税




『 ああ 俺の指はちゃんと 女の子の涙を拭えるんだ 』


<ご紹介>
白泉社 『楽園』 に掲載された 『ディアティア』 全5話 + 後日談 『マイディア』 + 描き下ろしを収録。 
女生徒から絶大な人気を誇る成田先輩。 好きな人はいないと言いながらも告白してくる女の子を振ってしまう彼のことを、桐ヶ谷睦子はどうしても理解できない。 憧れの美佳先輩まで振られてしまい、我慢できなくなった桐ヶ谷は思わず 「一緒に帰っていいですか?」 と成田先輩に直談判! だって、どうしても先輩のことを知りたかったから。 ・・・優しい人だと、思ってたから。 一方、桐ヶ谷に付きまとわれることになった成田は、うまくいかない恋に泣き喚く母の姿を彼女に見られてしまい、大困惑。 母のせいで自分も恋に踏み出せないんだと思ってたけれど、まっすぐに見つめてくる桐ヶ谷の瞳に、自分がいつも相手の視線から逃げてきたことに気付かされる。 女の子の涙は苦手。 でも何故か、桐ヶ谷の涙は取りこぼしたくないと感じて…。 そんな二人の、すれ違いな初恋物語です。


<感想>
とにかく表紙絵に一目惚れなのです!! 
私、昔からまっすぐに見つめあう構図に弱いんだけど、成田の腕にすっぽり収まる桐ヶ谷との距離感といい、甘えと心配を含んだ視線のやりとりといい、めっちゃときめいて大変でした。 書影では分かりにくいけど、表紙には加工が施されていて、透明な素材で涙を表現してあるんです。 おかげで桐ヶ谷の涙に透明感があるので、成田が愛おしそうに指を這わせる甘~い雰囲気を倍増させてるんですね。 くぅぅ、これは萌えるw ふだん出来るだけ 「萌え」 という言葉を使わないようにしてるんですが、これはりるさんの萌えのど真ん中なので誤魔化しようがない!!(笑) そのくらい、好きな表紙なのでしたw 


そんなこんなで 『ディアティア』。 優しくてカッコ良くてモテモテだけど不器用な成田先輩と、ちょっと頑なだけど人をまっすぐに見ることが出来る桐ヶ谷との、ややこしくすれ違う初恋物語です。 何故ややこしいかというと、桐ヶ谷が鈍いっていうのもあるんだけど、それ以上に、ただ単に、成田がモテモテだから(笑)。  自分に気付きをくれた桐ヶ谷のことを成田はすぐに好きになるんだけど、桐ヶ谷としては、大好きな親友も、憧れの先輩も、誰も彼もが成田のことを好きなわけなので、何をするにしてもそっちのことが気になって混乱してしまうんですね。 成田がモテるという事実が恋愛初心者マークの桐ヶ谷を追い込んでしまい、おかげで自分までもが動きづらい状況になってしまう…という感じなのです。 


いや、でも正直、あれはモテますよね…(笑)。 何ていうか、見た目がカッコイイっていうのが一見最大の武器っぽいけど、多分違うんだろうな。 困ってる女の子を手助けするときのスマートさ……彼がお母さんと接する間に見につけたに違いない、さり気ない優しさに、女の子は惹かれるんでしょう。 その気遣いの裏に見え隠れする、彼の影みたいな部分も含めて。 美佳先輩が 「両想いじゃないのは分かってた」 っていうのも、そういうことなんじゃないかなって思います。 彼の優しさは自分を見てくれてる優しさではない。 分かってるけど、でも止められないのが恋なんだよ。 ……そんなメッセージみたいに思えました。 


ところで、この作品の最重要キーワードが 「涙」 であることは間違いないんですが、むしろ大事なのは 「涙は零れるものである」 ということの方な気がします。 涙って、自分の意志では制御しきれないもの。 そしてたいていそうだと思うんだけど、涙が出るときって、気持ちも一緒に零れてるんですよね。 この作品の何が良いって、その 「気持ち」 が零れだす瞬間っていうのを 「涙」 と一緒に描いていることだと思うのです。 


例えば第1話。 「良い試合だったね」 っていう成田の一言が、桐ヶ谷から涙を引き出したこともそう。 試合に負けたという事実に負けたくなくて泣けずにいた強がりが、涙という形で零れ落ちたんだよね。 それから、友達想いと評された桐ヶ谷が、泣きそうな表情と一緒に 「…どんな人が好きなの…って…」 と本音を零すシーンも。 それって、桐ヶ谷の中に成田への興味が既に潜んでたってことでしょう? 泣かせてくれた 「ちょっと優しい人」 に会った時から、好きを意識する想いが芽生えてたってことでしょう!? むきゅー、可愛すぎるーーーっw 


挙句の果てに、 「ひどい、泣いてるって分かったくせに 泣いたら嫌いになるくせに…っ」 と桐ヶ谷が涙と共に零した言葉からは、嫌われたくないっていう想いがひしひしと伝わってきて……あぁぁぁ抱きしめたい!ってなっちゃいます(笑)。 もうね、こんな可愛いの見せ付けられたら、成田じゃなくても涙を拭ってあげたくなりますよ。 もちろん 「涙を拭う=気持ちを拾う」 なわけで、はっきり言うと、成田が桐ヶ谷に惚れたのは、桐ヶ谷さんのせいです(笑)。 彼女の涙が頑張りとなって、成田の心に沁み込んだからですよ。 それなのにこの後の桐ヶ谷さんってば、一人で勝手に親友達との板ばさみに陥っちゃうので、成田がひたすら不憫なんですが…でも、彼女に会うための口実を探したりしながら新しい成田秋人へと成長していく様子は、今まででいちばん恰好イイ姿でした。 


そんな風に感じながら読んでたので、最終話で桐ヶ谷が 「嬉しくても泣くんですよ」 と微笑んだのには、本気でノックアウトくらいました。 だって、最後の最後に涙と一緒に零れ落ちたものが 「嬉しい気持ち」 だなんて、最高に幸せすぎますっ!! そしてそのことが成田に 「好きにさせる」 と強い発言をさせたこともw  彼が今まで一人悩んできた時間よりも、桐ヶ谷の笑顔ひとつの方が力になっていることが明白な力強い表情は素敵だったし、何より、ふだん周囲に気を配りすぎる彼が、そんなの全然目に入らないくらい桐ヶ谷しか見えてない路上告白に、ニヤニヤもドキドキも止まりませんっw 開き直ったような公開ナンパ(笑)、本当に幸せでした♪  


二人の関係も良かったけど、その関係を後押ししてくれたのが悲しくも成田に振られてしまった二人の女の子だっていうのもとても良かったなーw  好きだと言われたことに混乱する桐ヶ谷に、 「私にそんなふうに言わなくちゃいけないことがあったの?」 と促す美佳先輩。  「私が好きだった人のことなんだから、もっと真剣に考えて!」 と一日限りの絶交を言い渡す鈴ちゃん。 どちらかの好意が欠けていたら、桐ヶ谷は素直になれなかったかもしれない。 女同士の友情がとても気持ちよく描かれてて、すごく好感が持てました。 女の子が可愛いと私も嬉しいです(笑)。 


成田と桐ヶ谷の恋は 『ディアティア』 最終話で成就するので、その後は 「秋人」 と 「睦子」 としての物語 『マイディア』 へと続きます。 付き合ってからのドキドキは、付き合うまでのドキドキとは色合いが異なるもの。 たとえばカラーピンナップに描かれた絶妙な距離感みたいなものは、やっぱり付き合う前特有のものだと思うのです。 次第にニヤニヤの度合いを増しつつある 『マイディア』 は本当に微笑ましくて、もっと二人の時間を覗きたくなる。 幸い 『楽園』 誌上で 『マイディア』 続編が掲載中なんですよね。 待ってれば続編出るかなぁ? 楽しみにしてます!! 





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NKさんへ

>NKさん

いつもコメントありがとうございます。

>ディア(deer)とは鹿という意味だそうです。つまり直訳して「鹿の涙」というタイトルですね。

残念、惜しい! 英語の綴りが違うのです。
deerではなくて、今回は「dear」ですね。

よく使われるのはお手紙の書き出しなどで 「dear NK」 と記すパターン。 これだと、「親愛なるNKさんへ」という感じになります。
あとは「貴重な」「大事な」という意味があるので、私としては今作のタイトルはこちらの意味だと思ってます。

その他dearの意味だと こちら のページに詳しいので参考になさってください。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/1784928.html

No title

これも初耳なタイトルですね。勿論、読んだこともありません。
ティアは涙という意味なのはわかりますが、ディアの意味がわからなくて調べてみました。ディア(deer)とは鹿という意味だそうです。つまり直訳して「鹿の涙」というタイトルですね。
涙というぐらいですからなんか切なそうなタイトルですね。

にくさんへ

>にくさん

コメントありがとうございますw

>えー、この感想のリンクからアマゾンに飛んで、注文したのを読み終わりました。アマゾンさんすげ~。

確かにアマゾンさん凄い!
でもそれ以上に、にくさんがすごい…。 だって記事あげたの8日の23:50なのに。 
う、嬉しい・・・どうしよう、すごく嬉しいです。 ありがとうございます!

>作者さんは「ハーレムもの」と書いてましたが、男向けのハーレムものとはもう、全くの真逆ですな。

そうですね。 むしろ、ハーレムを目指してこんな可愛いお話が出来上がるってどんな化学反応なんだろうって思っちゃいます。 何故だ。 

>「女はお前の無神経なところを知らねーから」と言ってやりたくなるよ。

男性にそう言わせるなら、成田というキャラが成功の鍵なんだろうなぁと。 何だかんだで同性にやっかまれるくらいの設定って、かなり大事なことだと思うので。

>名前も出てこないけど、コイツ気に入ったわ。続編でも出てるといいんだけど。

彼、良い味だしてるんですよね! そこ書きたかったけど文字数の関係で削除したので、ここでお話できて嬉しいーw 

女の作家さんが描く男同士のちょっと熱っぽい友情モノって、女性は(というか私は)けっこう好きですけど、こういう乾いた(言い得て妙ですね!)関係の方が、実際の友人の温度に近いのかなのかなぁって思います。 
盛り上げてくれるよいキャラですw

続編、描いてはいるみたいですがまだまだ短いので、1冊に纏まるのか不安です。 が、楽しみに待ちたいなーと。

>なんか主題と全然関係ないところで盛り上がっているな、俺。

にくさんからいただくコメントって、私にはとても重要です。 私とは違う視点なことを分かった上で書いてくださるので、参考になるし勉強になるし「うわー、私、視野せまい!」と思ったりします。

いつもありがとうございます! 本当に、大感謝ですw

optiさんへ

>optiさん

いつもコメントありがとうございます!

>ああ、そっか~、と頷く部分が多いです。
>涙と気持ち、というところは上手い捉え方と思いました。

えへへ、褒められてしまいました。 ありがとうございますっ。
何ていうか、あまりにも設定などがツボ過ぎて、逆にうまくまとめることが出来ない感想だったので(ものすごく時間がかかりました)、創言って頂けると嬉しいです。

我慢してもしきれないくらいに溢れ零れるのが涙と気持ち・・・そんな風に感じたので、褒めて頂けてうれしかったですw

>…って、え? 続編執筆中なんですか。

描いてはいるみたいなんですが、短編みたいなんですよね~。
『楽園』そのものが隔月?季刊?で発行が少ない上、短編だと…
コミックスになるのはいつ?むしろならない?って感じがしなくもないです。
が、楽しみにしてようかなってw 一緒に待ちましょう!

No title

えー、この感想のリンクからアマゾンに飛んで、注文したのを読み終わりました。アマゾンさんすげ~。

作者さんは「ハーレムもの」と書いてましたが、男向けのハーレムものとはもう、全くの真逆ですな。成田がモテる理由がよく解るもの。少年マンガで意味もなくモテるのは、本当に意味が解らないけど、成田がモテモテな理由が見ててはっきりわかる。友人がやっかむのも当然。「女はお前の無神経なところを知らねーから」と言ってやりたくなるよ。

つか、その友人こそ不器用な奴だと思うんだけど、要所要所でイイとこ見せて、しかしその全てが成田の引き立て役になってしまうという不憫っぷり。名前も出てこないけど、コイツ気に入ったわ。続編でも出てるといいんだけど。

睦子と鈴音の友情も固くていいんだけど、男同士の乾いた友情も描けてていいなあ、と。なんか主題と全然関係ないところで盛り上がっているな、俺。

No title

いつもながら読んでいて理解が深まるいい感想ですね。
ああ、そっか~、と頷く部分が多いです。
涙と気持ち、というところは上手い捉え方と思いました。
全体を通して絵はまだ発展途上な気がしましたが、表紙は惹かれますよね~。

…って、え? 続編執筆中なんですか。
私もぜひこれは続きの単行本を見てみたいです。
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