幸村アルト 『はちみつとバタフライ』 の感想

はちみつとバタフライ
『はちみつとバタフライ ~職人工房シリーズ』

幸村アルト

白泉社花とゆめコミックス
2012年2月25日 第1刷発行・¥400+税




『 でも やっぱり放さないでいて 』


<ご紹介>
とある田舎町の工房を舞台としたオムニバス3編と、読みきり2編を併録した短編集。 主に 『花とゆめ』 掲載作品。
中世から続く赤いトンガリ屋根が印象的な田舎町・エリザには、たくさんの工房が軒を連ねている。 その中の一つ、香水工房で働くアルマは、天才的な香水職人だけどちょっと風変わりなシェリーを支える職人補佐 (プロップマン)。  2年前、内気だった自分をシェリーの香水が変えてくれたときから、彼のことをずっと尊敬し、支えてきた。 けれど、研究熱心が度を過ぎてお茶を頭からかぶってしまうようなシェリーの面倒を見るのはかなり大変。 普通に会話して普通に心を通わせあう他工房の職人たちが羨ましくなってしまったアルマは、シェリーに工房を辞めると宣言! でも心の中にはずっとシェリーのことがわだかまっていて・・・?(はちみつとバタフライ) 


<感想>
職人工房を舞台とした、幸村アルトさんのオムニバス短編集です。 前作 『六百頁のミステリー』 もひじょーに私好みだったのですが、そもそも幸村作品との出会いは今回収録された 『カフェ・コルベイユの恋』 でした。 掲載誌 『花とゆめ』 で読んだのは2009年6月のことなので、もう3年近く前だけど、出会いが印象的だったので今でもよく覚えています。 ちなみに当時のことは

『花とゆめ13号(2009年)』 の感想 / 幸村アルト 『カフェ・コルベイユの恋』

に詳しく書いてありますので是非 (←宣伝・笑)。  『カフェ~』 は本当に気に入ってしまい、何度も読み返しました。 だって可愛い! だってときめく☆  あの世界観にもっと浸りたくて、(記事中でも触れてるとおり) 「お店を舞台にしたオムニバスとか読んでみたいな」 と強く思ったものです。 実際にオムニバス化されたのは 『コルベイユ』 とは違うお店だけど、世界観とか雰囲気は継承されてるので、このような形で実現したことがすっごく嬉しい。 読みたかったものが読めるってとても贅沢! 読書中はずっと幸せでしたw


さて本編。 『トランクドール』 『はちみつとバタフライ』 『ビタースイート』 は、同じエリザの町を舞台とした職人工房の物語。 それぞれ人形工房・香水工房・指輪工房となっていて、メインとなる人物に共通性はないけれど、あっちのサブキャラがこっちでも登場していたりはします。 

何より主軸となるのは、 「職人」 と 「職人補佐」 の関係を描いているお話だということ。 職人補佐は 「プロップマン」 と読み、 「支える人」 という意味。 専門職である職人さんがやらない・できないことを職人のために為すのがプロップマンなので、必然的に、天才的な職人さんと苦労人のプロップマンという構図が出来上がるのが上手です。 お互いに敬意がないと続かない関係なので、苦労があっても支え合いたいっていうメッセージがとても明確。 なので、帯に書かれた 「自分の腕ひとつで世界を切りひらく少女たちの恋物語」 というアオリには、ちょっと違和感がありました。 作中の少女たちは腕ひとつで世界を開拓してるわけではなく、むしろ誰かと支えあう喜びを世界の中に見つけ出していく物語、だと思うんだけど……たまに帯に賛同できないことがあります (ごめんなさい!)。 


全体的な印象としては、幸村作品はとにかく乙女チックだなっていうこと。 そしてメルヘン。 これ、すごく褒めてます。 乙女チック大好き! (←りるさんはもう乙女な年じゃないけどな!・笑)。 きらきらした瞳の描き方もそうですが、モチーフで使われるひらひらのドレスや、薔薇などの花や大きなリボンなど、一つ一つが可愛らしい。 ヒロインたちのまっすぐな視線からはマイナスの要素をまったく感じず、どこからどう見ても少女でしかないけれど、たぶん、あと一歩進めば大きく羽ばたくギリギリのラインにいるんだってことが見てとれる。 咲き誇る直前のような危ういくらいの少女性が、強烈なほど魅力的なのです。 ・・・だから、2年も手を出せないシェリーの気持ちも、リタをひたすら可愛い可愛いと愛でるジルの気持ちもよく分かるんだよなー(笑)。 あれはもし拒絶されたら立ち直れないレベルですよねw  少女マンガ的な少女マンガを求めてる方には、是非オススメな1冊です。


では、以下各話語り。 
お話としていちばん好きなのは、やっぱり 『カフェ・コルベールの恋』。 いちばん巧いなって思ったのは 『ドラマチックドール』。 いちばん好きなヒロインは 『カフェ~』 のエマちゃんで、いちばん好きな男性はシェリーさんでした。 リボンタイが素で似合っちゃうような人に弱いです(笑)。





・『トランクガール』
人間を信用できず、人形に作りに依存している職人のニコラと、彼女のプロップマンになったレオンとの物語。 敢えて記号的にデフォルメされた扉絵デザインがすごく素敵。 何でもそうですけど、ハンドメイドのものに代替品ってありえない。 必ずどこか個性が生まれるわけで、それって人間もそうだし、人間同士の関係も同じ。 この世に二人といない、ニコラだから尊敬できるんだっていうのを、捨て身の全力疾走で伝えたレオンが全編を通していちばん恰好良かったと思います。 

あと、ニコラがプレゼントされた冠を頭に乗せてるのがすごく可愛い! クラウンってやっぱり特別なものだと思うので、それを頭上にいただくニコラも特別なんだよ=代わりはいないんだよ、っていうことの象徴のようにも感じられました。 愛されたいという欲求は全然変なことではなく、むしろ当たり前の感情すぎて見えづらいというか、見たくないというか。 ニコラはその見たくない感情を人形に押し付けていたわけですが、今後はそれも含めたもっと深い感情がトランクに詰め込まれるわけで、いろんなお客さんを魅了していくんだろうなって思いましたw


・『はちみつとバタフライ』 
上記あらすじに書いたお話。 表題作だけあって、ときめきがハンパないです!! 一言で述べちゃうと単純にアルマとシェリーの痴話喧嘩なお話(笑)なので、「そんな理由で辞めちゃうの!?」と思わないでもないですが、 その分 (3作の中では) 求め合う強さがいちばん強く表現されていたお話だと思います。 すれ違う二人が焦れったくて、でもドキドキと胸が高鳴ってしまう。 シェリーが籠を胸に抱くシーンでは本当にときめきすぎて心臓壊れるかと思ったんですが、それ以上に、彼がアルマに香水を渡し、指先が触れ合うシーンでは、私の指先まで痺れました。 けっして比喩ではなく、本当に痺れた。 あの感覚は、シェリーがアルマに触れた瞬間に抱いたものと同じだと、私は今でも確信してます。 肌が触れるとき、気持ちが触れる。 作品の熱が、読み手に伝わる。 ・・・そういう類のものだったんじゃないかなーって。 

はちみつって、産地やお花によって味も色も全然違う。 シェリーが見つけたのは、アルマという花の蜜の香り。 甘くて可愛くて気配りができてまろやかなその香りを、匂いたつように綻ばせたのは彼の愛情。 匂いに誘われてアルマの元に辿り着いたのが、彼が求めていた終着点なんだろうな。 めろめろに甘い、恋のお話でしたw (あと全然関係ないけど、シェリーの駄目人間振りは音楽を扱った某少女小説の藤谷氏を思い出す! 大好き!・笑)


・『ビタースイート』 
「チョコレートみたいに甘い魂と――恋をした」 っていうモノローグが好きで好きで! タイトルこそビターと銘打ってますが、中身はめちゃ甘です。 ジルの台詞がいちいち甘いです。 キザな台詞を真顔で言える人が好きですw (面白くて・笑)。 あとはリタちゃんが小型犬みたいに可愛いので、頭わしゃわしゃ撫で回したい衝動にかられて大変でした! あーれーは可愛い。 全体的には物語で読ませるというより、ジルとリタのキャラで読ませる雰囲気。 なので、3編の中ではインパクト薄いのですが、リタの衣装や台詞回しなど、気の効かせどころが他と違って面白かったですw


・『カフェ・コルベールの恋』 
感想は、前述したとおり ⇒『花とゆめ13号(2009年)』の感想 / 幸村アルト 『カフェ・コルベイユの恋』 をご覧ください。 あれよりいいものが書けるとは思えません。 恋物語としても秀逸なお話ですが、個人的にはやっぱり停電の夜の楽しさを見開きで表現したシーンがすごく好き! あの場面あってこその恋心の説得力だと思うし、何より作品の説得力なのだと思う。 あと何気に、リュカの手の早さも好きですw (←いろいろ台無しだよりるさん!・笑)


・『ドラマチックドール』 
短編の構成としてはかなり秀逸なお話。 「恋の神様の祝福を」 得られるらしいおまじない人形をめぐる群像劇で、読んでる途中は人形の役割の薄さに 「??」 となるんだけど、最後に綺麗にオチがつくところが巧い。 これ多分、人形がいちど露天商の手に戻るところがミソなんですよね。 このシーンがあるとないとではオチの強さが変わってくると思うので。 一見ぜんぜんドラマチックに見えない人形が、ドラマチックを夢見る人間に、運命的な出来事よりもっと身近な素晴らしさを気づかせてくれる・・・事自体が、もうすでにドラマチック。 そしてある意味露天商さんがいちばんドラマチックな体験をしているから、また不思議なのです。 





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DOSさんへ

>DOSさん

こんばんは! コメントありがとうございました。
お返事遅れてすみません・・・。

>わーりるさんも幸村さんお好きなんですね!

好きです。 『カフェ・コルベイユの恋』で惚れてしまいましたw
この乙女ちっくな雰囲気に酔ってしまいます。

>お話も好きだったのでこの短編集はうれしい限りです。

職人シリーズと謳ってるだけあってお話にも統一感があるし、こういう短編集はいいですよね~。
もちろん、逆に統一感のない短編集も楽しいのですが。 読者は贅沢なものですw

>たぶんりるさんも好みと思います!(断言)

断言された! 私はブログ読者さんからよくこの手の断言をいただくんですけど、だいたいあってるから皆さんスゴイ(笑)。
はい、たぶん他の作品も好きだと思います。

>職人シリーズ、私はけなげなレオン君が好きですね。

レオンは恰好イイなぁと思うんですけど、私も長女なので苦労が分かってしまうというか何というか(笑)。 でも、あの苦労が報われて幸せになって欲しいです。

またお話出来ると嬉しいです。 ではでは☆

かすみ草さんへ

>かすみ草さん

こんばんは!
あー、こちらではお久しぶりなのかぁ。いつも某所でお話してもらってるので久々感がまったくないです(笑)。
お世話になりっぱなしで…。

『恋のドレスと白のカーテン』の件ではご尽力いただきましてありがとうございました!

>おねだりしちゃった(笑)、『はちみつとバタフライ』の感想だ~と思って早速拝見しました。

基本的に不精者なので、感想書こうかな・・・と思っていてもやらないで終わることが多いのですが、今回はリクエスト?もあったので頑張れました。基本的におだてられると弱いです(しかし長続きしない・笑)。

>乙女チックな気持ちになりたいときにぴったりな作品のようですね。

ぴったりでしたー。
胸がキュンと鳴る体験をしたことがない人にオススメです。

>(なので作品別の感想は本を手に取った後に拝見します!)

あ、じゃぁやっぱり別枠にしておいて良かったですw

>読むなら今回も一人でのんびり手にとってにやけたいと思います。

分かります! 私も、有川さんの本とか人前じゃ絶対読めない・・・(笑)。
どれだけニヤついてるのか気になりますけど、そんな自分の顔を想像したくないので、大人しく一人で読んでます。
いちばん安心して読めて良いですよねw

こんばんは!
二度めの書き込みです。
わーりるさんも幸村さんお好きなんですね!

幸村さんは本当に絵があか抜けてきて、
お話も好きだったのでこの短編集はうれしい限りです。

彼女はやっぱりカフェコルベイユで転機となった感じですね。

職人シリーズ以外にも甘々な読みきりも描いてらしたのも超好みだったので、
たぶんりるさんも好みと思います!(断言)


職人シリーズ、私はけなげなレオン君が好きですね。
女の子はアルマかなぁ。

でもコルベイユはやっぱり思い入れあります!

長くなりそうでこのへんで(笑
ではおやすみなさい!

面白そうです☆

りるさん

こんばんは。
こちらではお久しぶりです。

おねだりしちゃった(笑)、『はちみつとバタフライ』の感想だ~と思って早速拝見しました。

職人モノは好きです。
乙女チックな気持ちになりたいときにぴったりな作品のようですね。
感想を拝見して、ますます一度手にとってみたくなりました。
(なので作品別の感想は本を手に取った後に拝見します!)

最近は白泉社の作風がちょっと苦手になりつつありますが、
幸村さんの前作も、人前で読むのがちょっぴし恥ずかしくて照れながら読んだ覚えがあります。
読むなら今回も一人でのんびり手にとってにやけたいと思います。

では、では。
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