笠井スイ 『ジゼル・アラン・3』 の感想

ジゼル・アラン・3
『ジゼル・アラン 3』


笠井スイ

エンターブレイン BEAM COMIX
2012年6月27日 初版初刷発行/¥620+税





『 自分の大事なものは ちゃんと大事にするんだ! 』


<ご紹介>
『Fellows!』 に掲載された12~17話と、描き下ろし短編を収録した第3巻。 訳アリお嬢様のお仕事奮闘記です。
元は良家のお嬢様、今はアパートの管理人にして 「何でも屋」 でもあるジゼル・アラン。 手探りながらも何とか一人で仕事をこなし、いろいろな人と親交を深める充実した毎日を送っていた。 そんなある日、ジゼルはアパートの住人にして何でも屋の元・片腕(?)のエリックの部屋を訪れる。 楽しかった仕事の話をして、エリックの小説の受賞報告を聞いて、そこまではいつも通りの日々だったのに――エリックから突然「俺、引越します」と告げられてしまい・・・!? 


<感想>
ものすっごく楽しみにしていた第3巻です。 楽しみにしすぎてて、書店で表紙を見たときには血管切れそうなくらいでした(笑)。 だってジゼル可愛いすぎる!(≧∀≦) 台風と梅雨に悩まされる鬱陶しいこの時期に、雨後の晴れやかな青空とジゼルの笑顔はまさに光そのもの。 眩しくて、でも目をそらすことさえ許してくれない彼女の存在感が相変わらずで、嬉しくなっちゃいました。

お話としてのバリエーションも豊かで、読んでて飽きさせませんw ジゼルが何でも屋として仕事をこなすお話は読み応えがあってすごく好き。 特に17話の「宇宙にいく」アイディアは圧巻で、何が何でも仕事を全うしたいというジゼルのプロとしての意地と、子供らしいロマンチックなアイディアとのアンバランスさがとても良い。 そこに、パトリスという一見困った大人のようでいて、実はきちんと子供を肯定し、保護できる存在を投入することで、大事なものを大切にしつづける感性こそが大切なんだよ、と思わせてくれるから凄いです。
 

そしてたぶんこれって、この作品を通したメッセージになるんだろうな。 ジゼル自身も何度も口にしている、『大事なものは、ちゃんと大事にするんだ!』という精神こそが、作品にただよう潔癖なまでの純粋さの証。 ジゼルが一番身をもって証を立てているけれど、彼女の周りにいる大人たちもこの気持ちを持ち続けているから素敵なんです。  例えばリュカが会いに行った役所のおじさんだって、同僚からはちょっと変わった人に思われてるけど、実はジゼルたちにも敬語で話す(=一人前として扱う)素敵な人だったりします。 男なんて嫌いなくせにエリックを(実は)心配しているコレットも、喫茶店のマスターも、クレープ屋の店長も、みんな粋なんですよね! 良いなぁ、好きだなぁってしみじみ思わされます。


で、そんな中でも今回いちばん『大事なものは、ちゃんと大事に』していたのは、やっぱりエリックだと思うのですよ。 13話は、冒頭で描かれたジゼルとエリックの出会い話から引き込まれてしまい、もう夢中で読んで、号泣しました。 だって切なくて。 そして痛くて。 でも恰好良くて。 2巻まででもエリックの恋心は痛いほど伝わってきてたし、ジゼルの強さを秘めた天真爛漫さの前では年齢差は恋に落ちない理由にはならないと分かってはいたけど、それでもエリックがどの瞬間からジゼルに惹かれていたのかは、ずっと知りたいと思ってました。 


だからもう、彼のあの渾身の告白にはいろんな想いが・・・っ!! 正直、私が予想していた以上にシリアスだったので胸が痛かったけど、でもそれ以上に嬉しかったんですよ。 今までのエリックは、祖父の本を大事にしている割にはつい貶してしまうとか、何よりも小説を書きたいくせに才能という言葉に逃げてしまったり・・・本当にジゼルを好きなのに「子供」を理由に認めなかったり・・・そんな不器用なひとでした。 

――でもあの瞬間だけは。 自分が居なくなることに純粋な涙を流してくれるジゼルのために、初めて「自分の恋心」という「大事なもの」を「ちゃんと大事に」して伝えたあの瞬間だけは、天邪鬼さえも邪魔できないほどの決意があったはずだから。 玉砕前提の告白が打算的だとは思わない。 むしろ、案の定スルーされてのっぺりした笑顔を貼り付ける結果になったけれども、それでもあの瞬間の彼の気持ちは何よりも綺麗だと思います。 そして彼はジゼルに敢えて友達宣言させることで、事実上「小説を書きたい」という夢をも大事にしたんだよね。 

それにしても、初対面の子供に「優しくて臆病で、冒険が怖いんだ」と看破された青年が、その子供に恋をするだなんて・・・なんて冒険的なことなんだろう!って思います。 部屋に残された飴玉は、まるでエリックの恋心そのもの。 人知れず大事に保管された間の時間と熱で、溶かされた甘いもの・・・そしてまた、人知れず部屋に残されていくもの。 泣いてるジゼルの背中に触れることを留まったのは、文字通りジゼルが「子供」だからで、その自制さえもが彼の愛情なんだと思うと愛しくて堪りません。 エリック頑張ったよ・・・(ホロリ。


さて問題なのは、勇気を振り絞った後の人間は割りと気持ちが弱くなる、というパターンからしてエリックの現状が心配です。 何だあの女・・・!!(暴言・笑) 黙々と文字を連ねるエリックの表情は、今まで見たことがないくらいに平坦で、いかに彼がジゼルのおかげで人間らしくいられたのか、ということを実感させます。 平坦さの裏に隠れているのは、小説への情熱なのか、それとも諦念なのか・・・。 あぁ、続きが気になる! っていうかエリックの恋路が気になる!!(笑) 4巻はたぶんまた1年後なので、私は1年間悶々としなきゃいけないわけですよ。 その代償として(?)次はぜひ幸せな表情が見たいです! ぜひ、本当にもう、ぜひ!!

以下、各話語り(まだ書くか・笑)。 





●第12話 花の園よりオレンジの庭?  
ジゼル、クレープ屋さんで奮闘する、の巻。 クレープ屋の夫婦はですね、外見的にはふわふわな若妻と強面の店長だけど、内面的にはしっかり者の奥さんとツンデレな夫という最強カップル(笑)。 イチヂク大好きなのであのクレープ食べたいです! ジゼルも店長も同じく「店主」という責任があるわけで、それは店長に子供が生まれようが、ジゼルがずっと支えてくれた「友達」を失くそうが同じこと。 ただやっぱり、一人で頑張るには限界があるのも事実で。 照れながらジゼルに「支えになる」と伝えた店長を、「がんばって」と奥さんが支えて、そんなお店を向かいの働かない人(笑)が支えるという素敵な連鎖に、ほぉっと心が温まりましたw


●第13話 花開けば風雨多し? 
ほぼ本文に書いたとおり。 も一つ付け加えると、過去のジゼルがエリックが「大事だ」という本を預かった時に、本当に「大事そうに」扱うシーンが印象的です。 これも、『大事なものは、ちゃんと大事にする』という彼女らしい仕草だと思うので。 しかし、ジゼルの「好き」は本当に「友達の好き」なのかなぁ・・・。 今後違う「好き」に発展してくれると、私のラブコメ脳が信じております!! 


●第14話 栴檀は双葉より芳し? 
これは読んでいていちばん痛かったお話。 ジゼル父が男の子が欲しいと願ったから、母はジゼルを妊娠して、でも産後の肥立ちが悪いまま5年後に亡くなってしまって・・・うん、多分夫は妻を愛していたんでしょうね。 でも本当に愛していたら、妻が愛した自分の子供を突き放すことなんて出来るんだろうか? ジゼルは自分に残された父親を守ろうとしたのに。 そして、守れなくなって初めて「ははうえ・・・」と泣いたのに。 モネ執事がジゼルに激甘になった気持ちがよく分かります。 これは愛しい。 なぜ父が愛しさを覚えないのかフシギなくらいに、そしてエリックが好きになるのがすごくよく分かるくらいに、ジゼルはとても愛しい子なのです。 この後に挿入されるサイドストーリーで、就寝時に本を読んでもらって「楽しそうな顔して」た記憶が、第17話のアイディアに繋がったんでしょうね。 


●第15話 水を得た魚の如し? 
リュカくん再登場。 コレットが嗾けるとおり、彼が今後ジゼルの隣にいる存在になっちゃうの!?という一抹の不安を抱きつつも、現時点では友情話としてとても良いお話でした。 リュカが「照れるな!」と言ってるのを見て、第12話のクレープ屋の店長を思い出したんだけど、自分の恥ずかしさをおして相手のためにキザを働ける人って素敵です。 店長もリュカも素敵ですw 反面りるさんは、エリックの不在に落ち込んでるジゼルを見て、ちょっとホッとしちゃうような悪い大人です。 エリックがいない毎日に慣れて欲しくないのは私のエゴだけど、本音なんだもん! 


●第16話 鳴かぬ蛍が身を焦がす? 
ジゼルの脳内でモネ執事とエリックが朝食についてうだうだ言ってるのを見て、「え、やっぱりエリックって保護者格なのかな…?」と一抹の不安を覚えたりるさんです(笑)。 でも、彼がいなくても意識してくれてることは嬉しいですねw 他人の恋を初めて目の当たりにして、赤面するエミリーが可愛いです。 


●第17話 待てば海路の日和あり? 
これも本文で書いたとおり。 エリックが残した本と微かに本能に刻まれた母との記憶が、あのアイディアに繋がったのだと思うと、「別れる」ことはマイナスばかりじゃないと改めて思わされます。 いなくなって初めて気付かされる、大切なもの。 「エリック元気かな?」と考えるジゼルが可愛くて、ホントこの二人どうにかならないかな!?とハラハラしちゃいます。 じれったいの大好きだから、もっと拗れても良いんですけどね(←本音・笑)。 ただもちろん最後はラブコメ的ハッピーエンドでお願いします!(笑)






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