宮野美嘉 『幽霊伯爵の花嫁 悪魔の罪過と忘れられた愛嬢』 の感想

幽霊伯爵の花嫁5
『幽霊伯爵の花嫁 悪魔の罪過と忘れられた愛嬢』


宮野美嘉

小学館ルルル文庫
2012年8月29日 初版第1刷発行





ジェイクは凍りつき、かなりの間沈黙した後、
「………………何を考えているんだ、十年後の私は」
どことなく絶望的な声でつぶやいた。 肩を落としているようにも見える。
「気にすることはありませんわ。 何人の花嫁を迎えていたとしても、ジェイク様にとっては私が最後の花嫁です」
「何故そんなに平然としていられる」
それは、十七人目の妻であることに対してか、或いは忘れられてしまったことに対してか……どちらにしても、サアラの答えは変わらないのである。
「些細なことですわ。 私にとって重要なのは、私がジェイク様を想っていて、ジェイク様が私を想っているということです。 その喜びを取り戻すために、今からジェイク様を誘惑しようと思いますけれど、よろしいですか?」


<ご紹介>
『幽霊伯爵の花嫁』シリーズ、第5弾です。
アスガント公爵領内で、幽霊が大量発生!? 可及的速やかな調査を求められた「幽霊伯爵」ジェイクは、そこで頬に印のある女性の霊と出会う。 誰かを探しているような彼女に思わず触れたとき、逆に強烈な力を注ぎ込まれてしまい―――次に目覚めた時、ジェイクは10年間の記憶を失っていた。 すっかり忘れられてしまった周囲の人々が戸惑う中、サアラだけは彼をふたたび誘惑するために大暴走! あの手この手でジェイクに迫るが、息子のエリオスは意気消沈。 サアラはエリオスのために、ジェイクの記憶を取り戻す決意をする。 そんな折、頬に印のある幽霊を追って、最強にして最毒舌(!)の「墓守」ギルバートが公爵家を訪れてきて…!?





<感想>
今回も花嫁は大暴走!(笑) 何ていうか、このシリーズは毎回ヒロイン・サアラちゃんに惚れ込んで惚れ込んで、更に惚れ込みながら読んでいる感じ。 今回も気持ちいいくらいの暴走と、女っぷりの良さを披露してくれました。 相変わらず増田メグミさんの表紙イラストが素敵で素敵で、うっとりと見入ってしまうほど。 個人的には、ジェイクの右手が何のためらいもなくサアラの腰に添えられていることにめちゃくちゃ萌えます!(笑) 1巻目と比較して見てくださいよ、二人の距離感が全然違うから。 自然に近付いてるから。 こんな風に描いて貰えるなんて、作者さんからも絵師さんからも愛されている二人なんだなぁとしみじみ思っちゃいます。 もちろん私も大好きだっ☆


ところで。 正直に申し上げますと、私、最初に文庫裏のあらすじを読んだ時、ちょっとがっかりしたんです。 だって今回、記憶喪失ネタ・・・。 これってある程度続いているシリーズ作品ではかなりの頻度で扱われるので、またか、と思っちゃったし、このシリーズでは読みたくなかったなぁ…とぼそぼそ言ったりもしました。

で も ね !?

読んでみたら印象が180度変わりまして、むしろ「このシリーズだからこそ、このネタをやるべきだったんだ!」とまで思いました! いやぁ気持ち良かったです。 何がって、自分のことをすっかり忘れてしまった最愛の夫に対するサアラの姿勢が、ですよ。 私が記憶喪失展開を苦手だと感じる大きな理由は、忘れられたの側の自己憐憫描写に、多少食傷気味だからなんです。 いえ、それって実際、かなりリアルな感情だと思うんですけど、だからこそあまり見たくないというかですね……だって悲しいじゃないですか。


でもやっぱり、サアラちゃんは一味違う。 己を憐れむどころか、「私を忘れてしまうなんてジェイク様可哀想!」という逆転の発想(笑)に大爆笑でしたw これって一見サアラの価値観をジェイクに押し付けているようにも思える強気な言動だけど、実際ジェイクは好んで彼女を忘れたわけじゃないんだから、可哀想といえば可哀想なんですよね。 裏を返せば、サアラが自信を持ってそう考えられるほどしっかりした愛情をジェイクが注いでいた証でもある。 そう考えると本当に微笑ましくて、サアラがジェイクに迫りまくるのも、幸福以外の何物にも思えず、ひたすらニヤニヤしちゃいましたw


ただ、そんな微笑ましさも、サアラがエリオスのために記憶を取り戻すことを決意するシーンで、一気に感動の涙に変わりました。 「私たちは確かに家族ですわ」・・・この手のセリフをサアラが口にするのは初めてじゃないけど、今回ほど深く響いたものはありません。 落ち込むエリオスの姿を「見ていて気分のいいものではなかった」と感じたことって、サアラ自身の成長の表れでもあると思うんです。 サアラは、「大切な人に忘れられること」に対する自分とエリオスの考え方・感じ方が違うことは理解している。 分かった上で「覚悟」を持ってジェイクに接しようとしてたはずなのに、エリオスの為にあっさり考えを曲げちゃうんだから、明らかに今までのサアラとは違うわけです。 彼女は良くも悪くも「他人」の為に全力を尽くすようなお人好しではなくて、だからこそ、エリオスが「他人」ではないことの裏づけになるんだろうなって思います。 そもそも私は「家族」というものは「なる」ものだと考えているので、サアラとジェイクが愛し合う夫婦に「なった」ように、サアラとジェイクとエリオスが少しずつ家族に「なっている」ことが、もうめちゃくちゃ嬉しかったです!


サアラちゃんって基本的にとても強い女の子だと思うんですけど、それと同じくらい基本的に、危ういところでバランスをとってる女の子でもある。 今回、ジェイクの記憶がなくなったときの彼女の「覚悟」は、強さゆえというよりは己のバランスを取るための自衛なんだと思います。 不幸な状況下で不幸に浸りすぎるのも困りものだけど、だからといって彼女のように「不幸を蹂躙することで不幸を殲滅する」ようなやり方も切なすぎる。 それほどまでの絶望を経験したからこそ、もう二度と味わいたくない・・・という無意識の表れだと思うので。 ラストで幸せそうにするサアラとジェイクの姿に何より感じたのが、二人に「覚悟」を迫る日が、一日も遠いものでありますように、ということでした。 増田さんのイラストがまた幸せいっぱいで…!! あれ、ジェイクがどんな顔してるのかを想像するだけで楽しいですよね(笑)。 きっと、サアラだけが分かる微妙さで表情を崩し、「幸せ」を伝えてくるんだろうなって思いました☆


もうちょっと。 今回のサブキャラ2人にはとにかくときめきました!! やばいー、ミゼルカ可愛いー、ギル超うざいー!(笑) ギルの年齢が外見を上回ることは予想できたので、二人の関係へのミスリードには騙されなかったけど、騙されない分ギルのギャップが目立ってよけにニヤニヤしちゃうというww やっぱりって可愛いもんなのね、みたいなねw(≧∀≦) そしてラストでのエリオスとの絡みとかねっ!ヽ(≧▽≦)/ 何ていうか、サアラとジェイクがある意味完成された関係になっているので、エリオスとミゼルカの相互理解が成り立っていないくせに既成事実が成立した(笑)関係が、楽しみで仕方ありませんっ。 

特に241ページのイラストもカンペキですよね・・・何度見てもギルとエリオスのアホ面に爆笑し(ヒドイ・笑)、ミゼルカの綺麗な横顔にうっとりしちゃいます。 二人にはぜひまた登場して、エリオスの生真面目さを掻き回して欲しいものですw っていうかコルドン伯爵家の嫡男は、インパクトのある女性に捕まるっていうジンクスでもあるんじゃないの?(笑) 
 


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