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宮沢賢治 『銀河鉄道の夜 (朗読CD付)』 の感想

銀河鉄道の夜
『銀河鉄道の夜 (朗読CD付)』

宮沢賢治

(表紙装画・松本テマリ)
(朗読・櫻井孝宏)

海王社
2012年12月10日 初版第一刷発行/¥952+税





僕もうあんな大きな闇の中だってこわくない。
きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。
どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。


<ご紹介>
松本テマリさんの装画と、櫻井孝宏さんの朗読に彩られた、宮沢賢治の童話集(表題作ほか3編)。 
母親と二人暮らしのジョバンニは、父の逮捕を疑われ、学校でも浮いてしまっている少年。 だが、父同士が友達であるカムパネルラだけはジョバンニに冷たくすることはなく、不器用な優しさを見せてくれていた。 ある日草むらで寝転がっていたジョバンニは、「銀河ステーション」という不思議に響く声を耳にする。 気付くと彼は、列車に揺られていた。 しかもすぐ前の席には濡れたように真っ黒な上着を着て黒曜石の地図を持つカムパネルラが乗っていたのだ。 どこか具合の悪そうなカムパネルラを心配しながらも、何かに誘われるように列車は進み……ジョバンニとカムパネルラが迎える終着駅とは?


<感想/前段>
実は私、小学生のころに図書館で借りた『銀河鉄道の夜』をどうしても読みきることが出来なくて、それ以降ちょっとした苦手意識がありました。 ザネリの悪意みたいなものがまるで自分に向けられているかのように受け止めてしまったこと、それから、正直文章に意味が分からない部分が多かったことが辛くて、序盤までしか読めなかったんです。 しかも当時の学校の先生に「あんな名作が分からないなんて!」みたいに言われたことが軽くトラウマっぽくなりまして、大人になってからも読んでみたい気持ち半分、触れたくない気持ち半分を抱えながら悶々としてました。 

そんなある日!(←突然元気になったな!) あの『銀河鉄道の夜』が、私の大好きな松本テマリさんの装画と、私の大大大好きな(笑)櫻井孝宏さんの朗読CD付き文庫本として発売されると聞きまして!! こーれーはー私のために海王社さんが企画したに違いない!!!と思う勢いで (いや違うから・笑)、発売を心待ちにしてました。 手帳に「CD文庫発売日!」って記入しましたからね(笑)。

で、手元に届いた本ですが。 まず、テマリさんの表紙画が美しいです…っ!! 顔は瓜二つなのに、身なりも表情もまるで違う二人の少年。 幻想的な雰囲気と色使いの中、どこか静に佇む様子が印象的で、しばし見惚れました。 表紙鑑賞が済むと、何でこの二人そっくりなの?という疑問が。 私の拙い知識だと、主要登場人物は「ジョバンニ」と「カムパネルラ」のはずで、特に兄弟って設定じゃなかった気がするけど……と思わず首をひねったけれど、ある意味この時点で物語に惹き込まれているわけです。 長年感じていたトラウマ的なものも気にすることなく、気付けば作品への興味でいっぱいになっていました。

本自体は思っていたよりも薄めで、文字も大きめだし造語や古語には脚注もついているので、誰にでも読みやすいんじゃないかな? ただ個人的に残念だったのは、櫻井さんの朗読って物語全編じゃなかったんだ!?…ってこと。 実は文章を読む前にCD聞いたんだけど、途中から始まってる!?と一瞬パニックに(笑)。 聞いてみるとラスト部分を中心に20分間収録されているので、一応の聞き応えはあります。 ただ、その20分間に想像力を凄まじく掻き立てられたので、やっぱり全部聞いてみたかった!という気持ちがあるあるあるある…。 まぁ、あのページ数で20分なんだから全部読んだらCD1枚に収まらないんだろうなぁ……と今は満足してます。 抑揚を抑えた話し方の中にわずかに感情が滲んでいて、その話し方に本気で聞き惚れました。 


<感想/本文>




あぁこういうお話だったのか……というのが素直な印象でした。 死生観を童話にするとこうなる、みたいな。 宗教というより、信仰の世界。 信じているのは神というより、どう生きてどう死ぬかという思考そのもののように感じました。 先にCDを聞いて感情が盛り上がっていたからか、昔のトラウマはまったく感じることなく読み進められたし、あんなに苦手だったザネリの意地悪にも「実は裏があるんじゃ?」と思わせるような深さがありました。 そっか、カムパネルラが死にゆくまでの45分程度の幻想物語だったんですね…。 

テマリさんの表紙絵の謎?も、途中に出てきた「アルビレオ」という言葉で何となく納得。 ジョバンニとカムパネルラを双子星に喩えてあるんですね。 いや、何で喩えられたのかとかは不明なので根本的には分かってないんだけど。 カムパネルラが「おっかさん」と「お母さん」を使い分けているので、もしかしたら家庭の事情があって実は本当に双子なのかな?とかも思ったけど、たぶん違う…よね? ただいずれにしろ、銀河鉄道の乗客が死にゆく人ばかりな中で、ジョバンニだけが死に目を迎えていないことを考えると、肉体的には別々だけど魂的に重なり合うものがあったってコトなのかもしれないなーって思います。 現実世界的にはそっくりな外見をしていた訳じゃないと思うんだけど、もしかしたら銀河鉄道の中だけでは、二人はこういう姿だったのかもしれない…。 

死生観、と書いたけれど、そこにあるのは「自己犠牲を正当とする死生観」なのだと思います。 カムパネルラが求め続けていたものは、ザネリの代わりに犠牲となった、己の行為の正当性ってことだよね? たとえば「鳥捕り」は今でも殺生をやめることが出来ず、「天上」へ行くこともなく己の意志で途中下車している。 けれど、サウザンクロスに消えた青年と少年少女は、他の子供達を押しのけてまで生にしがみつくことを潔しとしなかった結果「天上」への切符を手に入れたわけで、それは必然的にカムパネルラの悩みを反射させるものとなっている。

そして、なし崩し的に列車に同乗させられたジョバンニは、「天上に行く」ことの意味を心のどこかで理解しつつも気付かないままでいる。 下車を嫌がる少年少女を引き止めるのも、カムパネルラに一緒に進もうと語りかけるのも、幻想というオブラートの向こうで待ち構えている別離に、慄いているから。 実際、ジョバンニの手には「どこまでも行ける切符」があるわけで、それはつまり「下車をしない=生き続ける」ことの象徴でもある。 彼と一緒に進めないことは、カムパネルラも気付いている。 それでも、「一緒に行こう」と言ってくれたジョバンニの言葉に、「ああきっと行くよ」と答えた彼の心境を想像すると……あぁ彼はこの瞬間を求めてジョバンニに助けを求めたんだろうなって思いました。 自分が信じる「幸」を探す旅に、ジョバンニに来て欲しかったんだ。 だってジョバンニは「一人の寂しさ」に、いつも耐えていたから。 

ジョバンニはカムパネルラのことを自分のことを虐めない人だと心を許していたけれど、カムパネルラにしてみても、きちんと庇ってあげられない自分のことを許してくれるジョバンニが救いだったんじゃないかって思います。 一人の寂しさを知っているのに誰を責めるでもなくただ耐えるジョバンニの姿は、他者を救って命を落としたカムパネルラにとって「理解したいもの」だったんだと思います。 自分の行動に悔いはないけれど、それは母も喜んでくれるような尊い行為だったのか・・・自信の持てないカムパネルラにとって、ごく自然に、息をするように、「ほんとうにみんなの幸のためならば 僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」と呟くジョバンニの言葉は、己への全肯定だと感じられたことでしょう。 自分の行為に自信を得た瞬間に、彼は彼だけの「天上」を見つけて消えゆくわけで……私自身は自己犠牲を正当化することに多少抵抗はあるんだけど、カムパネルラにとっては、生と死に対する唯一無二の答えだったんだろうな。 そしてそれはやっぱり、彼ら二人が無二の友人だという証でもあるんだと思う。 カムパネルラは最後の瞬間に背中を押して貰うためにジョバンニに一緒に来て貰った。 そしてジョバンニは、そんなカムパネルラの我侭にどこかで気付きながら、でも気付かないまま、同じ時を過ごして、彼の感性を理解してあげている。 まるで、生きている頃と同じように…。

昔、序盤を読んだだけのときは、カムパネルラの何かを悟ろうとしている雰囲気に神秘性を感じたりしていました。 でも今読み返すと、神秘的なのはカムパネルラでも銀河鉄道でもなく、ジョバンニの方な気がする。 彼は無垢な少年の感受性を持ちながらも、生に対する恬淡さからは老成さえ伺える。 不思議。 何だかとっても不思議。 不思議なのは彼が体験した出来事ではなく、彼自身の奥深さのように私には思えました。 たぶん、次にジョバンニが銀河鉄道に乗る時が来たら、きっと星の輝く天上で、カムパネルラが待っているんだろうな……。

いずれにしろ、いろんな意味で謎めいていて、想像してた以上に楽しかったです。 前述した双子性のこととか、明かされていないザネリの性別だとか、その辺が分かればもっと違う味わいがありそうだけど、でも多分、謎が明かされないからこそ、星の瞬く夜の森に迷い込んだかのような美しさと恐れと、少しの希望が含まれているんだ。





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