風羽洸海 『私情により捕まえます!』 の感想

私情により捕まえます!
『私情により捕まえます!』


風羽洸海
(イラスト:鳴海ゆき)


KADOKAWA/エンターブレイン
ビーズログ文庫





「君が私を追うのを諦めてくれたとわかったら、また来る。その時は、君の夢を聞かせてくれ」 
夜風がささやきを運ぶ。立ち尽くすアイシャの前で彼は音もなく屋根を伝い、本物の猫のように闇の中へと姿を消した。
窓辺に佇んだまま、アイシャはしばらくじっと動かなかった。
(本当に、もう駄目だ) 
はあ、とため息がこぼれる。自分の中から『影猫』に対する怒りと嫌悪が跡形もなく流れ去っていると認め、彼女は肩を落とした。
格好をつけても盗みは悪事、陰で誰かが泣いていることは間違いないのだから、それを正当化することなど許せない。そう思ってきたのに。 
もう憎めない。
悪党の『影猫』ではなく、不正に憤り自ら手を汚す一人の人間としての影猫を知ってしまった今では、どうやっても憎めなかった。
(でも、だからこそ捕まえないと) 
ぎゅっと胸の前で拳を握り、アイシャは決意を新たにした。


<感想>
……このシーンの後で、己のキザったらしさに恥ずかしくて死にたくなってる「彼」が大好きです!(笑)

という訳で久々の少女小説感想は、賞金稼ぎのヒロイン・アイシャが、相棒である謎の使い魔・ビーリィと一緒に、夢の一攫千金のために王国で話題の義賊『影猫(スティーナ・コチュカ)』を追いかけることになる捕り物帳でございます。 
良いですよねぇ、私、捕り物って大好物なんです! 定番は『アルセーヌ・ルパン』ですよね! 追う側も追われる側もクレバーで痺れます。 で、これが少女マンガだともっと大好きで、『怪盗セイント・テール』とか『ひなぎく見参!』とかの、追いつ追われつしているうちに相手のことが気になっちゃったり、「でも私たちは敵同士だし・・・!」みたいな葛藤も生まれちゃったり、終いには「私以外のひとに捕まったりしないでよ!」的な独占欲が生まれちゃったりしちゃうと、キャハ───(#゚ロ゚#)───ッ!! ってなってテンション上がる上がる(笑)。 という訳で、本作も楽しく読ませていただきましたw





えーとまずこの手の作品には、追う側追われる側のとちらかだけが相手の素性を知っている、というお約束があります。 というか、これこそがすべての醍醐味といっても過言ではない!(真顔) 一方通行だからこそ、何で気付いてくれないのよと思っちゃったり、気付かれちゃ困るくせに相手の目に留まるように恰好良く振舞っちゃったり、それで相手もときめいちゃったり……というような素晴らしいラブコメ連鎖が始まるのです!!(大真顔!・笑)  もう私はこれが好物で好物で仕方ないのですが、本作のおかげでもうひとつ好きになったものがあります。 それは、「恰好良く振舞っちゃった後、ふと我に返って己のキザったらしさを泣きながら後悔するヒーローを爆笑しながら見守ること」です(鬼か!・笑)。 いやぁ「彼」のおかげで私のツボが増えちゃいました。 ありがとう「彼」。 あなたのラブコメ当て馬体質に、心から敬意を表します!!(笑)


……は! 熱く語りすぎました(笑)。 えーと、アイシャとビーリィは賞金稼ぎ組合<風の狼>の下っ端賞金稼ぎ。 アイシャにはどうしても大金を手にしたい夢があって、そのために(あと単純にお金が好きで)一攫千金をねらって、今王国でもっとも話題性のある義賊『影猫(スティーナ・コチュカ)』をターゲットにするんですね。 ある日バイト先に訪れたウェズリーという青年のことをビーリィが気に入ってしまったからさあ大変。 何よりもビーリィを溺愛しているアイシャはウェズリーに多大な嫉妬心を抱くことになって、その後出逢うたびに口ゲンカをする羽目に。 ウェズリーは国を憂う王太子の従者で、病弱な王太子に代わって国をどうにかしようと……って、これ以上は言えない(笑)。 っていうか、ここまで言えばお約束パターンで大体みんな分かるはずなのでもう言わない(笑)。 そして『影猫』を追いかけるうちにアイシャがトラブルに巻き込まれてしまい、『影猫』に助けてもらってときめいちゃったりするのもお約束なのでもう言わない(笑)。 つまり、そういうお話です。 ベッタベタですが、だからこそ軽く楽しく笑って読める可愛らしいお話でした。


ストーリー上はアイシャがヒロインなんですけど、この子は明るくて元気でカッとなりやすいけど情に厚い良い子です。 白蒸しパンのような外見のビーリィが可愛くって仕方ないらしいんですけど、裏表のない性格のアイシャだって十分に可愛い。 素直に笑った表情に、誰かさんが思わず見惚れちゃうシーンとか、ニヤニヤが止まりませんw  ただ、いかんせん「これが若さか…」と赤い人に言われてしまうような(いや私も赤い人はよく知らないんですけどw)浅慮な部分もあるので、それが物語を動かすとはいえ苦手な読み手さんもいるかもしれないです。 ビーリィへの態度を見ているとすごく愛情深い子だなぁと思うので私は好きでしたけど、1冊通してずっと「彼」との距離が縮まなかったのだけはちょっと残念。 いやその分向こうが楽しいことになってるのでOKなんですけどね(笑)。 『影猫』に憧れたことで一攫千金狙いから心配ゆえの捕獲に気持ちが動いたことも良かったし、あと、過去に一度会ってるというエピソードがあるのも好みでした。


『影猫』は影猫で思うところがあるし、アイシャはアイシャで願うことがある。 正義とは何か、罪とは何か、裁くとは何か。 そういうことが作中で語られるのですが、あとがきで作者さんが「理屈っぽいところもある」と書かれているような印象があるのは確かでした。 でも何ていうか、そういうことを真面目に考えようとする18歳と16歳っていいな、って思ったんですよね。 後で思い出して恥ずかしくなるような青くさい理論や夢だって、「今」考えられるせいいっぱいならばそれが答えでしょう。 頑固だったり、偏ってたり、そういう歪さに気付くのはあとからで良いんです。 それぞれが譲れない想いを抱いて賞金首になったり賞金稼ぎになったりしているのは確かで、そういう姿は素敵だなぁと思いました。 ただ、もっとお互いを知ることで、その「譲れない想い」を分かち合えるふたりになってくれたら更に素敵だなぁと思います。 なので、ぜひ続いてくださいね!?(真剣!) このままじゃ誰かさんが報われないままで可哀想すぎますから!(えー)


えーと、いちおう最後まで『影猫』の正体のことを「彼」と書いてきましたけど、作中でもべつに隠されているわけではありません。 むしろ巻頭にある登場人物紹介のイラストを見たときに、「あ、隠す気ないな」と思いました(笑)。 出来れば『影猫』がアイシャをかばって手にケガとかしちゃって、同じような傷が「彼」にもあることに気付いたアイシャが『影猫』の正体ってもしかして・・・!?いやそんな馬鹿な!と思いつつも「彼」のことを気にし始めちゃう・・・みたいな、ベッタベタな展開を期待してます。 あとは「彼」のがんばり次第ですよ! 頑張ってね、ウェズ!(あ、言っちゃった・笑)




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