あすか 『悪魔が契る姫と騎士 花嫁を奪還せよ』 の感想

悪魔が契る姫と騎士
『悪魔が契る姫と騎士 花嫁を奪還せよ』


あすか
(挿絵:雲屋ゆきお)


一迅社文庫アイリス
2013年12月1日 初版発行/¥590+税





「よかった、元気そう……」
エミーメが胸元で手を組み合わせて安堵していると、ラシッドが何か言葉を伝えようと、口をゆっくりと動かし始めた。
声は聞こえなかったがエミーメにはすぐにその言葉が分かった。

か・な・ら・ず・た・す・け・ま・す――。

エミーメは微笑んだまま、水鏡にそっと手を伸ばした。するとラシッドも同じように手を伸ばしてきて、水鏡を境にふたりは手のひらを合わせた。
そこからは冷たい水の感触しか伝わってこなかったが、エミーメは確かにラシッドのぬくもりを感じた。
胸がただいっぱいになる。
誰が反対しようと、エミーメの心はラシッドへの想いで満ちあふれていた。彼もまたそうであることを、触れ合う手から伝わってくる。
「愛してるわ……ラシッド……」
エミーメがそう呟くと同時に、水鏡は消えた。



<ご紹介>
 一途に騎士を愛する姫君と、悪魔憑きの騎士との、ラブファンタジー。カラーピンナップ付。
エミーメはバラメール王国の末姫。 とあるハプニングを騎士であるラシッドに助けてもらってからずっと彼だけを見つめ続けて口説き続けたエミーメは、身分の差を気にするラシッドとようやく想いを通じ合わせて幸せの絶頂だった。 やっと迎えた結婚の儀式で、穏やかな彼から伝わってくる温かい愛情をかみ締めていた……はずなのに、突如現れた魔導師によって誘拐されてしまった! 目の前でエミーメを奪われたラシッドは、自らを呪縛するある存在の力を借りてでも絶対にエミーメを救うと決意して、単身戦いに身を投じていく。 国王から与えられた期限は、結婚の儀式の最終日である7日後。 それまでに無事にエミーメを助けることができるのか――!?


<感想>
世の中には確かに一目惚れという現象がありまして、その対象が異性へのときめきだったり動物の愛らしさだったりするわけですが(ちなみに犬派です!←どーでもいい・笑)、私はたまに、本屋さんで一目惚れをします。 あたりまえだけど、対象は本(いや、店員さんっていう選択肢にもときめくけど、未経験なので・笑)。 というわけで、実はこの本も一目惚れだったりします。





診察まで1時間半待ちがあたりまえの大学病院に行く前に、何か心がときめくような素敵なお話ないかな~、とさがしていた私の目に一冊の本の背表紙が飛び込んできました。 一迅社文庫アイリスは背表紙に表紙イラストの一部が使われてるんですけど、何だかそのイラストがすっごくきらめいて見えたのです! 実は私の視力ではタイトルはよく見えるものの、背表紙イラスト自体はそんなにはっきり視認できないはずなんですよ。 でも、何か輝いてるっ∑(´Д`)ハッ!! と思って手にとったのが、この本でした。 表紙をじっくり眺めて納得。 私が大好きな、雲屋ゆきおさんのイラストだったからです。 2014年10月6日の日記でも雲屋愛を語ってるりるさんの愛は本物だった!!(笑) はぁ、このイラストも美しいよぅ(うっとり)。 この出会いは何かのご縁、ということで迷わず購入して迷わず読んで、そりゃーもう楽しませていただきました!! 一目惚れバンザイです☆


と言うわけでお話は、横恋慕のとばっちりで強奪されちゃった一途で可愛い姫君と、生い立ちゆえに多少根暗だけど(ヒドイ…)一途に彼女を奪還しようと奮闘する騎士くんとの、ラブファンタジーです。 何度でも言いますけど、二人とも一途! もうめっちゃ一途!! 実はですね、280ページくらいあるお話の中でエミーメとラシッドが一緒にいて会話できる状況なのって、冒頭とラスト(とオマケの水鏡シーン)くらいなんですよ。 20ページくらいなのでは?(笑) その他は基本ずっとエミーメが攫われているし、逃げ出してきたらピンチをよりピンチにしちゃってとてもしゃべれる状況じゃないし、やっと再会できたと思ってもラシッドが怪我で寝てるから直接会話してなかったり……とかが重なってて、「こいつらほとんど会話してない!」とツッコミ入れたくなるくらい喋ってない(笑)。 

それなのに、もう本当に凄いんですよ! この人たちずっと相手のことばかり想っているので、私はエミーメがどれくらいラシッドのことを好きなのかもよく知ってるし、ラシッドがどのくらいエミーメに救われてきたのかもよく分かってる。 人間という肉体的な距離は離れていても、ふたりの心がどうしようもないくらいに繋がっていることが伝わってきて、読んでいる間中、ずっとドキドキしていました。 わりと最初からふたりの想いはクライマックスだったのに、誘拐事件を通してますます好きがアップしてくのが本当に心地よくて。 何ていうか、人はどこまで人のことを好きになれるのかな?と、ふと考えたくなるくらい、ずっとふたりの愛を見せ付けられていた感じです。


でもその想いも完全に同じ方向を向いているわけではなくて……というのがこのお話の肝だったと思います。 エミーメはもうひたすらにラシッドが好きで好きで大好きでそんなエミーメを私も大好きになったのですが(笑)、どんな困難があっても、それこそ「記憶を喰われる」という彼の悲しい事情を知っても、それならば新しい思い出を作ればいいって思えちゃうような明るくて愛情深くて、でも守られるばかりではない女の子。 ムスたんやミッテンとの会話からも、どことなく天然色な雰囲気が伝わってきます。 基本的には怒ってもそんなに怖くないような柔らかい女の子だけど、ミッテンのことを絶対にまともに呼んであげないところに、彼女の隠れた怒りを感じてました。 途中までは、ラシッドのことしか眼中にないからミッテンの名前を覚えてあげないのかな?って思ってたんですけど、91ページでムスたんから呼び間違いを指摘されたのを綺麗にスルーしたことで、あぁ意地なんだなって。 エミーメは攫われている間も、夢にまで見ていた結婚の儀式を邪魔された恨み言なんかは一切言わない。 怒ったって良いのに、ただラシッドを傷つけないで、ラシッドの元に帰して、と訴えて行動するだけ。 怒ったって事態が変わらないことを、きちんと理解しているんです。 それでも我慢しきれないところの八つ当たりが、ミッテンの呼び名七変化(笑)に表れてるんだろうなぁw 個人的にはミットモさん呼びがツボでした(笑)。


で、ラシッド。 彼も間違いなくエミーメを愛していて、もはや信仰に近いくらいの純粋な気持ちを抱いているんだけど、でも彼女ほど未来を信じられていないのがラシッドらしい気がします。 幸せな記憶という大切なものを失っていく過程で、もっと違うものも失っていったんだろうなと想像は難くありません。 でも、それでも、エミーメに恋をすることができたラシッドはやっぱり強いんだと思うのです。 気持ちも、身体も、そして、運も。 死にきれなかったのはジャンバラの助力ゆえだとしても、そこから這い上がって、旅をして、エミーメに出会ったことは、誰でもないラシッドの功績なんだと思うのです。 一目惚れさせるエミーメの存在力も大きいけれど、それを引き寄せたのは誰でもないラシッドの運ゆえ。 出会いの奇跡を大切にして生き続けようと決意できたのもラシッドの気持ちの強さゆえ。 大切なものを奪っていくジャンバラを憎みきれないのも、ラシッドの優しさゆえ。 最初こそちょっと頼りなさ過ぎる気がしたけれど、ずっと読んでいるとだんだん愛おしくなってしまって、彼を丸ごと愛するエミーメの気持ちがすっごくよく分かってしまいました。 普段は覇気のない人が自分のためだけに燃えてくれるなんて、最大級にときめくじゃないですか!! もう絶大に応援しっぱなしでした。 あとは単純に、一人称が僕の青年にりるさんが激弱だっていう別な理由もあったりしますけどそれはともかく(笑)、幸せになって欲しいなぁとジャンバラちゃん同様に願っていたことは間違いありません。 素敵です!


ただ前述したとおり、この人たちずっと離れ離れなんですよ。 なので応援してるとはいえ、「もっとラブいシーンが読みたい!」という欲求が出てしまうのです。 そんな読み手の心を読んだかのようなタイミングで挿入される水鏡のエピソードは、なので本当に貴重なオアシスでした! 言葉も交わせない、手も握れない。 そんな状況下でも二人は心で会話をするし、手のぬくもりだって感じることができるなんて……素敵過ぎるっ!!(力説!・笑) このシーンだけ雲屋さんのイラストが右ページに配置されてるんですけど、二人の距離の切なさにきゅんと胸が鳴って大変でした。 何とかして再会して欲しい!と気持ちを新たにしつつ、作者さんに踊らされてるなーって思ったのも事実です(笑)。 上手いわ。 

素敵なのは主人公たちばかりではなく、ラシッドから記憶を奪う悪魔なはずなのに彼のことを思いやっているジャンバラちゃんとか、エミーメをさり気なく乙女の危機から救いつつもラシッドを嗾けるムスたんとか(本名で書いてよ・笑)、横恋慕と勘違いを真剣に繰り返すミッテンとか、キャラも濃ゆくて楽しい楽しい。 中でもムスたんは別の作品で主役張れそうな勢いでキャラ立ちしててお気に入りです♪ 確実にラシッドの「お人よし」という弱点を突いて戦うくせに、エミーメの貞操はちゃんとかばってくれるという不思議キャラ。 彼が守銭奴たる理由が知りたかったなぁとそこだけ残念でしたが、ラシッドとの「魔導師vs魔導騎士」の戦いは熱くて良かったです。 ただまぁちょっとやりすぎなんじゃないの?とは思いましたけど……。 ミッテンにさんざん女にモテない忠告をしてたけど、あまりえげつないとあなたもモテなくなるよ!と誰か忠告してあげなよって思いながら読んでました(笑)。 


……それにしても。 雲屋さんのイラストからこぼれる後光に導かれて出会った作品ですが、とても楽しめたので本当によかったです。 私にとって雲屋さんのイラストは最上級に大好きなものだったりします。 物語に花を添えるだけでなく、物語をより深く楽しめるようにしてくれる魔法なのではないか、という気さえしています。 今回の挿絵でも、登場人物の衣装が細かいところまでデザインされていて、特に77ページでラシッドの「エルフの王が鍛えた剣」が透き通っているのもイメージどおりでした。 彼がエミーメに一目惚れする場面も、エミーメが勇ましく馬車を駆るシーンも、どれもこれもが物語を盛り上げてくれる要素でした。 どんどん気持ちが物語りに引き込まれていったのも、この力添えがあってこそ、だった気がします。 おかげで最後の結婚式のイラストを見た瞬間に泣いてしまいましたもん(笑)。 ふたりがまた出会えてよかった。 幸せになれてよかった。 これからもっと幸せになって欲しい……。 そんな気持ちが一気にあふれた瞬間、そこには間違いなくふたりの幸せそうな笑顔があって……何か本当に私まで幸せな気持ちになれました。 ラシッドもエミーメに一目惚れで、私もこの本に一目惚れでしたわけで、こういう出会いには心から感謝したくなります。 楽しくて素敵な本と出会わせてくれて、ありがとうございました!(ペコリ)




▼著者さん別シリーズ
悪魔で騎士 愛されすぎて逃亡中! (ビーズログ文庫)
あすか
KADOKAWA/エンターブレイン
売り上げランキング: 131,256

▼雲屋さん挿絵作品
ニセモノ皇帝と三人の従者(美形) (ビーズログ文庫) 文官令嬢の恋愛録 公爵閣下と封じた記憶 (一迅社文庫アイリス) 精霊歌士と夢見る野菜 金色の約束 (角川ビーンズ文庫) 革命は恋のはじまり5 ~つながる想いと開ける未来~ (ビーズログ文庫)



Loading...
Secret

☆Web拍手ボタン

押して頂くとりるがハリキリます(笑)

☆カテゴリ

☆サブカテゴリ (タグ)

 

☆最新コメント

☆リンク(おすすめサイト様)

☆アクセスカウンタ

QRコード

QRコード

RSSリンクの表示

アクセス解析

関連記事Loader

[猫カフェ]futaha

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

☆検索フォーム

☆購読予定一覧

☆アニメDVDの人気ランキング

☆更新日カレンダー

プルダウン 降順 昇順 年別

08月 | 2017年09月 | 10月
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30


☆オススメ