都戸利津 『嘘解きレトリック・4』 の感想

嘘解きレトリック・4
『嘘解きレトリック・4』


都戸利津


白泉社花とゆめコミックス
2015年1月25日 第1刷発行/¥429+税




『 私 先生好きです 九十九夜町が好きです 』


<感想>
「嘘」 を聞き分ける力を持つ鹿乃子 (かのこ) ちゃんと、頭は切れるけれど超貧乏な探偵・祝左右馬 (いわい・そうま) 先生が織り成す、レトロモダン路地裏探偵活劇 (裏表紙あらすじを要約しました・笑) の第4巻です。 実は私はずっとずっとこのお話が大好きで堪らなくて、ありがたいことに(何故か)参加させていただいている 『このマンガがすごい!』 でも選ばせていただいてるんですけど、だからこそなかなか感想が書けなくて困ってました。 だって考えてもみてください。 あなたの大好きなアノ人にいざ告白しようとしたら、相当な勇気が要りますよね? 顔を真っ赤にして目をうるうるさせて 「す、すすすすす好きです・・・!」 みたいにしか出来ないですよね!? たぶんそれと同じなんだと思うんだ・・・!!(←いやたぶん違う・笑) 


閑話休題。 さてこのお話は、人の会話に潜む 「嘘」 を聞き分けることが出来てしまうがゆえに人と交わることができなかった鹿乃子ちゃんが、九十九夜町で風変わりな貧乏探偵に出会ったことで、探偵助手としてあーんな事件やこーんな事件を解決していくお話です! ……と書けたらどんなに簡単だったでしょう。 いやもちろん、探偵事務所を舞台とするわけですから、謎はあります。 誘拐事件や殺人事件といった事件性のあるものから、人の心の行き違いから生じる、ささやかで、でも切ない事件まで、いろいろあります。 そういった謎を解く糸口を鹿乃子ちゃんの能力が担うことは間違いないんですけど、でもどちらかといえばそういう分かりやすい現象はこの作品の主眼ではないのです。 このお話は、鹿乃子ちゃんが自分の能力との付き合い方と、人との向き合い方を経験してゆく物語なのです。 そして祝先生が、事件の謎よりも人の心の謎を紐解いていくお話なのです。


私もそうだけど、人は多かれ少なかれ嘘をつきます。 いらぬ見栄を張っての嘘だったり、都合の悪いことをごまかした嘘だったり、もしかしたら相手の気持ちを慮ったゆえの嘘かもしれない。 それが良いとか悪いとかの話ではなく、ただ事実として 「嘘」 はそこらに転がっているものなのです。 そしてその 「嘘」 を聞き分けてしまう鹿乃子ちゃんがつい 「それ嘘ですよね」 と言ってしまうと・・・・・・言われた方は怯みます。 脅えます。 そして嘘をついたわけではない、むしろ真実を述べたはずの鹿乃子の方が悪者になってしまう。 彼女はそうやって、社会から疎外されて生きてきた女の子なのですね。 ――で、「よし、自分のことを知らない土地で能力のことを秘密にして暮らしていこう!」 と一念発起して九十九夜町に辿り着いたわけです。


作者の都戸利津さんのすごいところは、今私がダラダラとかいた前段落の内容を第1話(1巻収録) の中ですっきりと、でもちょっと切なく、そして前向きに表現しているところです。 人によってはもしかしたら、鹿乃子ちゃんは逃げたんだと思うかもしれない。 でも私は、この作品からそんな印象は受けなかった。 ひたすら、ここがリスタートなんだと思いました。 それは結局、鹿乃子ちゃんがどれだけ能力を厭おうとしても、 「人を悪者にするような嘘をついてはいけない」 という自分の心を曲げなかったからだし、それを受け入れた祝先生がいてくれたからだと思うのです。


人はどんなに頑張っても一人では頑張りきれないときがある。 でも、そういうときに助けてくれる人がいるとは限らないじゃないですか。 助けてくれる人、一緒に考えてくれる人・・・そういう人に出会えた土地に来たことが、逃げなわけがない。 この感想を書くにあたり1巻を再読して強くそう思ったので、4巻で鹿乃子ちゃんが 「九十九夜町が好き」 と言ってくれたときに、なんか無性に泣きたくなっちゃっいました。 傷つきながら育ってきたはずなのに、その傷でさえ彼女の生真面目な明るさを損なうことはできなかった。 むしろ、九十九夜町で傷を癒しながらもっともっと前向きな人になってる。 そのことがすごく眩しくて、感動した場面でした。 16話は、そんな鹿乃子ちゃんに対して頬染めちゃう祝先生の珍しい姿も見ることができるので、ホント大好きなお話だったりします。


さてその先生ですが、嘘を聞き分ける能力なんてなくても犯人の言葉の綾や仕草などから謎を解明することが出来てしまいます。 嘘が聞こえるからこそ見えることがあるように、嘘が聞こえないからこそ見えることもある。 同じ事象に遭遇しても鹿乃子ちゃんと先生が見える世界は全然違うのに、違うからこそ補い合える。 これはいろんな意味で敏すぎる先生の観察力があるからこそだけど、間違いなく鹿乃子ちゃんにとっては支えだろうし、先生にとってもそれは同じなんだと思うのです。 20話で貫二さんの 「見てない」 発言を鹿乃子ちゃんが聞いていなかったら、先生一人でも貫二さんを待つことが出来たのかな?と考えると、人を信じることが出来る先生だからきっと待てたはず。 でもたぶん、鹿乃子ちゃんがいてくれたからこそ、より貫二さんの気持ちに近づくことが出来たんだと思うのです。 貫二さんから再調査を依頼されたとき、鹿乃子ちゃんと先生の 「もちろん」 って言う表情が本当に嬉しそうで、私まで嬉しくなりました。 何ていうか、お互いの顔を見て笑い合えることの積み重ねが 「幸せ」 なのかなぁって思ったのです。 いろんな人と出会って、触れ合って、傷ついても、でも最後に笑い合えたらいいなって。 この作品の主題が事件の凄惨な謎と動機を描くのではなく人の心を解くことだからこそ、私はこんなにもこのお話が好きなんだって、改めて思わされました。


と、いろいろ書いてきましたが、4巻での一番のお気に入りは18話だったりします。 いやだってもう、正直この作品では珍しいラブコメ回だと個人的には思っているのですがいかがでしょうっ!?(りるさんが途端に元気になりました・笑) ある雨の日の一コマ的なショートストーリーだけど、鹿乃子ちゃんの可愛らしさや先生に抱く感謝の気持ちが詰まってて可愛すぎます! そして鹿乃子ちゃんのために全力疾走するっていう普段あまり描かれることのない先生の影の努力(笑)を味わえる一級品です!!(力説っ)  「お迎えに来ましたー」 って笑う鹿乃子ちゃんに向ける先生の笑顔が、いつもよりちょっとだけ甘いような気がして読んでて妙にドキドキしました。 愛情篭っちゃってるって思ってもいいですか・・・!?(ドキドキ)
 

それと同時に気付いたのは、先生が鹿乃子ちゃんをおもいやって隠し事をしているにもかかわらず、まったく「嘘」をつかずに会話をしているということです。  「雨の中がんばったかいがありました」 の 「がんばった」 は、鹿乃子ちゃんには「掃除をがんばった」に聞こえている。 でも先生(と読者) にとってのそれは、全力疾走リターンを指しているわけです。 もちろん隠し事=嘘ではないけれど、別の言葉で誤魔化すのではなく、 「語らない」 という引き算の会話を自然にしていることが印象的でした。 だってこれって先生の思いやりですよね? 嘘に敏感な鹿乃子ちゃんの耳に、少しでも変な言葉として響かないように思いやって話しているんですよね? たぶん今回に限らず先生はいつもそうしていて、だからこそこんな風にスマートに出来ているわけで・・・・・・あぁやっぱり、愛情篭っちゃってるって思いたいです!(笑) 

あとひとつ。 不思議なんですけど、九十九夜町の町並みや紫陽花のみずみずしさなどの背景がすごく綺麗に見えたんです。 都戸作品はいつも背景まで綺麗だから不思議じゃないといえばそうなんだけど、でもいつも以上に素敵に見えたんです。 これってもしかしたら、鹿乃子ちゃんと先生の視界をちょっとだけ味わわせてもらったのかなって。 ふたりが一緒に過ごしてる時の空気感みたいなものまで、都戸さんが描ききってくれたのかなって。 だからきっと、こんなにも綺麗なのかなって思ったんです。 錯覚かもしれないけどそう見えちゃった仕方ないのです(開き直った!・笑)。 そんな訳で、私にとって18話はいろんな意味でキラキラしていた回です。 大好き。 ホントすごく良かったです!!


そんなこんなの4巻は、ひたすら先生を尊敬してきただけの鹿乃子ちゃんが、初めて彼の明敏さへ疑問を抱くところで終わります。 それはけっして不快なものではなく、どちらかといえば 「気付き」 です。 もしかしたら先生もわたしと同じなのかな?というささやかな思いは、相手のことをより知ることができたからこそ抱けたものだという意味でニヤニヤしちゃいますが(笑)、自分に自信がなかった鹿乃子ちゃんが、自分自身のことを尊敬している先生に近づけて捉えることが出来るようになったという意味では、成長なのかなって。 先生や九十九夜町のことを好きになったように、少しずつでもいいから自分のことを好きになれると良いなって。 そんなふうに思いました。 5巻ではもっともっといろんなことに気付く鹿乃子ちゃんに出会えるといいなって思います。 次巻もどうしようもなく、楽しみです!
*止まらないので以下各話語り(笑)。





●第十五話
千代ちゃんが登場すると話がややこしくなるのに明るくて単純だから好きです。 ややこしいのに単純だという矛盾こそが彼女らしい。 彼女が空想する「左右馬先生」がふだんより3割増しでカッコイイのに反して、先生の裏にぬぽーっと立っている鹿乃子ちゃんの存在の薄っぺらさがヒドすぎます(笑)。 でも、人に褒めてもらうより清々しいっていう彼女の潔癖なまでの明るさは、やっぱりとても魅力的です。 読んでてほんわりあたたかくなるお話でした。

●第十六話
鰻、美味しそう・・・。 馨さんのことをまっすぐに信じる先生の友情にちょっと胸熱なのですが、それよりもやっぱり、「私、先生好きです」という鹿乃子ちゃんの目線の美しさに目を奪われる16話だと思うのです。 私は基本的にお互いの視線が交わる構図が好きなのですが、ここの鹿乃子ちゃんは全然先生を見ていないんですよね。 なのでこの好きに恋愛的な意味を含ませていないことはわかるのですが、それを惜しく思えないほど素敵な「告白」だと思うのです。 だって、存在そのものを好きだっていうことを、まるで未来を見ているかのようにまっすぐな目をして告げられたら、とても素敵だと思うのです。 このお話ホント大好きです!

●第十七話
下し髪の馨さんに思わずときめいた人も続出したであろう17話(笑)。 それにしても先生の鹿乃子ちゃんの食べ物運のなさは涙ぐみそうになるレベルだけど、このお話を読んでると彼らの「運」は「出会い」で使い果たしているような気がしないでもないです。 嘘を聞き分けられることすらちっぽけに思えるような「誰か」との出会い。 これ以上の「運」はなかなかない
ような気がするのです。 もう貧乏なのも仕方ない!(笑)

●第十八話
本文中で力説したので満足ですw

●第十九話●第二十話
19話の見開きの扉絵が可愛くって好みなのです。 それにしても貫二さんは典型的な巻き込まれ型ですね・・・「だますのは嫌だ」って言う姿を見てなんとなくだけど、もし鹿乃子ちゃんが嘘を聞こえなかったとしたらこんな感じの人なのかもな、って思いました。 ちょっとだけ人付き合いに臆病で、でも大事なところで道を踏み外さない人たちです。 お話としてはきちんとトリックのある謎解きものとして楽しめました。 ちなみに私は種明かしを2回読んでやっと理解できた程度の人間です(笑)。 ミステリ好きとしても楽しめました。



嘘解きレトリック 1 (花とゆめコミックス) 嘘解きレトリック 2 (花とゆめCOMICS) 嘘解きレトリック 3 (花とゆめCOMICS)



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