さき 『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』 の感想

アルバート家の令嬢は没落をご所望です
『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』


さき
(イラスト:双葉はづき)


角川ビーンズ文庫
平成27年4月1日 初版発行/¥580+税





「で、そのゲームだっていうこの世界で、お嬢は悪役をやりたいわけですね」
「そうよ。主人公を追い詰めて、しっぺ返しくらって没落するの!」
「なんでそこまで全力で後ろ向きに走るんだか……まぁ良いですよ、付き合いますよ」
はぁ、と溜息をつきつつ、アディが立ち上がる。
それを見たメアリも続くように腰をあげ、決意を改めるように力強く拳を握りしめた。
「いざ、没落コース! ラストにギャフンと言うのはこの私よ!」
頑張るわ! と意気込むメアリに、呆れたアディがそれでも応えるべく力なく片手を上げた。


<ご紹介>
才色兼備な大貴族の令嬢メアリ・アルバート。彼女は始業式で前世の記憶を思い出す。この世界は前世でプレイしていた乙女ゲームと同じで、自分は主人公をいじめて最後に没落する悪役令嬢だったことを――となれば、ここは「そんな人生、冗談じゃない!」と没落を回避・・・・・・しない! 従者のアディ(口が悪い)を巻き込んで没落コースを突き進もうとするけれど、何故か主人公になつかれて!? 人気沸騰WEB小説、ビーンズ文庫に登場!! (裏表紙あらすじより)


<感想>
表紙でぷぅと頬をふくらませるご令嬢がとにかく可愛い! 華やかな縦ロールの髪型からしても気位の高そうなご令嬢っぽいのに、そんな風にほっぺたふくらませてたらむしろ愛嬌しか感じないレベルで可愛らしいです。 ちょっと天邪鬼そうな雰囲気も相まって、一目で「どんな女の子なのかな?」と興味を持ったのは事実です。 

でも実はそれ以上に、あらすじにある「この世界は前世でプレイしていた乙女ゲームと同じで・・・」という一文が気になったっていう方が大きいかもしれない。 というのも、たまに拝見させていただく小説投稿サイト「小説家になろう」さんに、そういう設定のお話が多数投稿されているからなのです。 恋愛カテゴリに絞ると特に多くて、つまり書き手読み手両者の需要と供給が多い、ってことだと思うんですが、すみません、正直に言いますと私、あらすじを読む限りでは「乙女ゲームの世界に転生する」っていう設定の妙がよく分からなかったんですね。 なので読んだことなかったんですけど、せっかく表紙の可愛いお嬢さんと目が合ったことですし、これはぜひ一度試してみよう!と思って購入してみました。 結論から言うと、その設定の妙についてはやはりよく分からなかったんですが(コラ・笑)、お話としては面白かったです!





主人公のメアリは、私が表紙から受け取った印象そのままの女の子でした。 プライドは人一倍どころか誰よりも高いけど、そのプライドの使い方がちょっと変わっている女の子。 望めば何でも手に入るのに、一般的なご令嬢が欲しがるものは欲しがらず、珍しく望んだものが「没落」。 お嬢至上主義の従者アディに呆れかえられつつも、乙女ゲームの大筋通りに展開していくこの世界に用意されたライバルキャラとして、嬉々としてゲームのヒロイン・アリシアを追い詰めようとするんですね。 ゲームの最難関攻略キャラであるパトリックはメアリの婚約者でもあり、でもアリシアと惹かれあっていくので、幾らでも昼ドラ展開に持ち込めそうなものなのに、メアリの持ち前の気高さゆえなのか、何故かアリシアを追い詰めようと奮闘すればするほど良い人オーラを発してしまい、結果彼女にに懐かれてしまう・・・という流れ。 そんな風に空回るメアリと、従者という立場ながら軽口ばかりたたくアディとの掛け合い漫才でつづられるラブコメディでした。


もうね、この掛け合い漫才が超絶楽しい! メアリは王族に次ぐ名家アルバート家のご令嬢、アディは彼女の専属従者という立場の違いがあるはずなのに、メアリの空回る努力に対してはアディが突っ込むし、アディの無礼すれすれの態度にはメアリが突っ込むしで、二人ともフレキシブルな会話を展開してくれるんですね。 でもどんなに軽口をたたきあっていても、根底には相手への信頼があるから揺るがないんだよなーって思わせてくれる何かがあるんですよ。 それが顕著なのが、没落したらメアリが北に飛ばされると聞かされたアディが、何の気負いもなく「俺達は北の大地で渡り鳥丼屋ですか」と言い切った場面。 「メアリが」北に行くっていう話しかしていないのに、それに対するアディの答えがすでに「俺達」になっていて、お嬢の行くところに自分も行くのが当たり前っていう気負わない「当たり前さ」に、一人身悶えながら読んでました。 そしてその決意がメアリにはあまり伝わってないお約束も大好きです(笑)。  


アリシア+パトリックのルートは乙女ゲーム世界の必然として順調に進んでゆき、それをメアリが引っ掻き回すことが彼女の目的だったのに、メアリが関われば関わるほどちょっとずつコメディな方向にずれていってしまう・・・。 そのギャップを楽しむのが正しいお話の読み方だろうし、事実楽しいんだけど、別に乙女ゲームの世界というのを設定しなくても楽しいお話になっている気がするんですよね・・・。 だってメアリのお話がズレていってしまったら現実の乙女ゲームの展開も変わってしまうのでは?とか、余計な部分が気になっちゃうんだもの。 そういう意味で冒頭でも書いた通り、この設定にはデメリットもあるよなぁと思っちゃったんですよね。 整合性が気になるのはミステリ読みの悲しい性かもしれません。 でもちゃんと、乙女ゲームという世界の強制力を知っているヒロインだからこそ、世界を変える力も持っているっていうところが設定の魅力なんだな、ということは理解はできたつもりでいます。


その魅力を理解できたのは、「メアリが没落を目指した本当の理由」が描かれた場面を読んだ時です。 それまでメアリは、乙女ゲームの世界で没落するキャラだったから潔く没落する!と言っていたわけですが、本当は転生したメアリ・アルバートとして生きてきた中で、感じ、考えていたことがあって、その上での決断だったわけです。 つまり、乙女ゲームの世界だということを「伏線」として使ったからこそ、真意を知った時の読み手の驚きに繋がったんですね。 そして、没落に向かってまっしぐらに進むメアリの姿に違和感を覚え、きちんと問いただそうとしたアディの想いが伝わったからでもあります。 本来のゲームの世界では北に飛ばされたメアリと別離したアディですが、メアリの本質を知れば知るほど離れられなくなったのはアディの方だっていう変化に、なるほどこういうときめきがあるのか!と思った次第です。 ゲームという定められた世界でも、メアリが変われば周囲を取り巻く人も変われるんですね! メアリもある意味では不器用なほど直球な女の子だけど、それってアディからまっすぐに(しかし無自覚に・笑)愛情を受けて育ったからなんだなーって素直に思えました。 萌えます(笑)。


というわけで、やっぱりちょっと設定に謎を抱えつつも、お話は楽しく読ませて位いただきました。 メアリとアディが中心ですが、アリシアのすっとぼけた天然も厭味がなくて好ましかったし。 あ、「乙女ゲームの世界」ということですが、基本メアリに言い寄ってくる男性キャラはいませんし(何故ならライバルキャラだから。そしてアディがいるからw)、アリシアもパトリックひとすじなので(出会いが描かれてないので分からないけど、何があった!?と問いただしたいくらい相思相愛です・笑)、いわゆる逆ハーレム的な展開を期待もしくは嫌悪すると、ちょっと路線が違うと思われます。 むしろ純愛路線です。 むしろむしろ、メアリとアディの関係はもっと進んでも良かったのでは!?というくらい健全です。 ここだけりるさん不満ですから。 何かもう、アディにはめちゃめちゃ報われて欲しい気持ちでいっぱいになる(くらい想いが届かない楽しさがある←ヒドイ・笑)のですよ!! 正直欲求不満になりまして、結局『小説家になろう』さんで続編読んじゃいましたからね(笑)。 ぜひもう1冊出していただきたい、そしてアディのなし崩し的な求婚と、そこからどんどん可愛さを増していくメアリの幸せな姿を、ぜひこの素敵なイラスト付きで読みたいです。 楽しみにしておりますー。




●Kindle版はこちら
アルバート家の令嬢は没落をご所望です (角川ビーンズ文庫)
KADOKAWA / 角川書店 (2015-05-01)
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