城平京 『雨の日も神様と相撲を』 の感想

雨の日も神様と相撲を
『雨の日も神様と相撲を』



城平 京


講談社タイガ
2016年1月18日 第1刷発行/¥720+税





ただその裏庭には、たくさんのカエルがいた。
あまつさえ、カエルは相撲を取っていた。


<ご紹介>
「あなたは相撲に愛されている」――口癖のようにそう言っていた両親が亡くなり、叔父の住む田舎村に転校することになった逢沢文季。 小さな身長に細身の体という不利な体型で10年続けた相撲と、これでやっと縁が切れる――と、安堵とも諦めともつかない複雑な気持ちをいだきつつ村に向かった文季は、列車の窓越しに ”オートバイを片手に抱えた” 少女と目が合ってしまう。 驚く文季に叔父は、村の要である遠泉家の女性は神様によって剛力を授けられており、将来 「カエル様の花嫁」 になるのだと説明する。 剛力?神様??カエル様??? ――そう、文季が移り住むことになった久々留木村は、相撲が大好きなカエルの神様(達)が実在する村だったのです。 隣村ではトランクに詰められた死体と、村にはいないはずの外来種カエルが発見されて、どこまでもカエル尽くしの謎になぜか文季は巻き込まれてしまい・・・!?


<感想>
小説家としてもマンガ原作者としても大ファンである城平京さんの最新作は、去年創刊されたばかりの 『講談社タイガ』 から出版された、作者いわく ”少年少女青春伝奇” 小説とのこと。 話の設定が相変わらず突拍子もないので、紹介文書くのも一苦労ダヨ。 なんだ、カエルの神様って。 しかもカエルが二本足で相撲を取るって!(笑)  まぁもっとも 「よくこれ考えましたね・・・」 と呆然とするような設定を読みたくて城平作品に手を出しているので、予定通りというか想像以上というか、むしろ大歓迎っ!って感じなんですけどね。 楽しかったです! 以下感想となりますが、ネタバレがあるのでご注意を。 一応、文字色を黄色 黄色 にして読みづらくしてあるので、気になる方だけ反転させてください。 




お話としては、そんなこんなで久々留木村に移住することになった文季くんが、村の名家のお嬢さん・真夏さんと一緒に、相撲を通して村の古い因習と向き合っていく・・・というか、向き合わざるを得なくなるお話です。 こう書くと、あぁ巻き込まれ型主人公が頑張るお話ね、と思いがちですが、そして別にそれは間違いじゃないんだけど、そこはやっぱり城平作品の主人公ですので、文季くんは淡々と飄々とクールに物事に対処していくのです。 カエルが神様で、神様が自分たちでもやっちゃうくらい相撲が好きで、相撲の勝敗が村での力絵図にもなっていて、力持ちの年下少女がいるような所に余所者として飛び込んでいくのって、自分だったら 「すみません帰ります!(泣)」 ってなるしかないと思うんですよ。 巻き込まれたら全力で逃げに行くくらいにハードル高い出来事だと思うんですよ。

それなのに、カエルが神様です⇒変わった村だなぁ。 カエルの神様が相撲を取る⇒古事記でも相撲は国取りとして描かれているから不思議ではない。 村では相撲がすべて⇒村の相撲って現代相撲とちがって古典的だよね。 オートバイを抱えるお嬢さん⇒お尻が大きい。 という風に、なんだかなぁと思いつつもわりとあっさり事象として受け入れていく文季くんが凄すぎます。 そのあまりの度量の広さ(?)に、逆に神様であるカエルたちの方が 「なんだコイツは・・・!!」 って驚かされるという不思議の二重構造になっているお話でもあって、読めば読むほど 「文季くんの思考が整然としているわりには、混沌が深まっていくなあ」 と、途中までは完全に傍観者として楽しませてもらいました。 

体型にめぐまれないまま相撲を続けてきた彼にとって、相撲を知ること、相手を知ること、そして考えることは、勝利を得るための最低条件。 それを、相撲に限らず、村で生きるための知恵として活用するスキルと冷静さには、何というか圧倒されました。 知識と、知識を正しく使うための知恵、というのは城平作品でよく描かれるテーマでして、”思考の読み合い”が城平作品の楽しさの神髄と言っても過言でないと個人的には思っています。 

ただ私、今作は、相撲で相手にどうやって勝つかという部分に思考の読み合いが反映されているんだと捉えてしまったし、カエルとか神様といったちょっと力の抜ける単語が目くらましにもなってしまったので、正直気を抜いちゃったんですよね。 なので、ラストになってたたみかけられた神様と村の支配・被支配に関する考察とか、文季がなぜそこまで柔軟に村の因習に対応していったのか・・・という 「謎」 に対して、私は完全に無防備でした。 文季が 「相撲をやってきた意味」 を勝ち取るために地道に撒いてきた種に、全然気付くことができなかったんです・・・・・・村のみんなと同じように。

作中では相撲に関するうんちくが、それはもうたくさん描かれています。 古事記や日本書紀での相撲はどういう意味があるのか、とか、江戸時代の相撲文化とか、読んでてすごく勉強にもなったし楽しかったのですが、そういうのもうまく隠れ蓑になっていたんだなーって今なら思います。 誰もが彼の膨大な知識量と卓越した分析力にばかり注目してしまう。 でもその陰には、相撲にかけた熱い想いと恋心が隠されていたわけで・・・・・・いやもうそんなの見せつけられたら泣きますよね。 ぶわっと一瞬にして涙が出てしまって大変でした。 どんな場面でも冷静な文季くんのクールさを、「この冷静さは反則だわ・・・」 と思いながら読んできたけど、最後の最後でそれがトリックだったとかもう・・・っ(/□≦、)  

断言するけど、この作品は伝奇でもミステリでもなくて、ただの素敵なラブコメディです。 青春にはすこしの不思議と冒険がよく似合うと常々思っているのですが、彼の選んだ冒険は、それこそ余所者の彼しかできない孤独な方法で村そのものを騙すというもの。 でもそれが、最後の最後でラブコメに昇華されたことで、お姫様の呪縛だけでなく彼の孤独をも解消できた・・・という流れがすごく良かった。 ラストは一転してニヤニヤしっぱなしでしたからね。 もうこれ以上ない大団円でした。 40年後の悲劇も、彼ならきっと回避できる。 カエルのためには相撲で負けることは出来ないけれど、彼女のためならいくらでも負けると言える、彼ならきっと・・・!!

この作品で残念なことはただ一つ。 別枠で進行する殺人ミステリと本筋で展開する文季の物語が、本筋とあまり上手に融合していなかったということ。 文季の並外れた推理力を描くための”手段としてのミステリ”になってしまったのが惜しい。 でもそのくらいですね。 個人的には思ってた以上に好みだったので満足です。 ありがとうございましたー!




●著書
・小説


・マンガ原作




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