さき 『男装騎士の憂鬱な任務』 の感想

男装騎士の憂鬱な任務
『男装騎士の憂鬱な任務』



さき
(イラスト:松本テマリ)

角川ビーンズ文庫
平静28年2月1日 初版発行/¥580+税





「……オディール」
ありがとう、とクルドアが微笑む。その表情の愛らしさと輝かしさと言ったらなく、直視したオデットは思わずクラリと眩暈を覚えた。「もはや天使っ……!」と感嘆の言葉が漏れ出るのは、それほどまでにクルドアが麗しいからである。
そんな彼に信頼されこの地に来たのだ、オデットにとってこれ以上のものはない。
だからこそ、何としても正体を知られるわけにはいかない……。そう改めて決意し、強く拳を握りしめた。
「クルドア様にお仕えし続けるためにも、フィスターを欺き続けます。ご安心ください、私ならばやれます!それにいざとなったら相打ちになってでも奴を仕留めます!」
死なばもろとも、この秘密ごと奴と共に墓場にダイブいたします!そう瞳に闘志を燃やすオデットに、クルドアが頬を引きつらせつつ「穏便に頑張ってね」と応援の言葉を口にした。


<感想>
前作 『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』が面白かったさきさんの新作は、カッコ可愛い男装騎士をめぐる(?)ラブコメディです。 さきさん、ラブコメ、イラストが松本テマリさん、という3つの要素で迷いなく購入したわけですが、これがまた相変わらず私好みな展開で楽しく読ませていただきました。 まぁラブコメというよりはコメディでしたが、そういう展開になることは前作までの文章で分かってたので問題ないです(笑)。 




主人公は弱小国パルテアの女騎士・オデット。 彼女が仕える第三王子クルドアが、強国ヴィルトルのセスラ王女に一目惚れされたことからお話は始まります。 国力に大きな差があるため、クルドアはほぼ単身でヴィルトルに婿入りをすることになるのですが、そこで「唯一の持参品」として同行することになったのがクルドアに忠義を誓っているオデット。 でも問題が一つ。 パルテアでは認められている女性騎士の制度がヴィルトルにはない ⇒ オデットが 「女」 として同行すると愛人疑惑になってしまう ⇒ じゃぁオデットを 「オディール」 という男騎士にしちゃえば問題ないよね~! ・・・という作戦(?)をオデットの父が立案したばかりに、半ば強制的にヴィルトルへ赴くことに。 そこで出会ったフィスターという騎士に、さっそく正体を疑われてしまい・・・!?というお話です。


ヴィルトルが定める騎士の範疇にはイマイチ収まりきらない型破りなオデット(オディール)と、アイツは何かを隠している!と疑いつつ、何だかんだと世話を焼いてしまうフィスター。 ラブコメはこの二人を軸に展開していく・・・はずなのですが、前述したとおりだいたいはコメディの範囲です(笑)。 あとがきで「喧嘩ップル」を目指したとあるとおりの間柄なので、付かず離れずの距離でライバル心をむき出しにしつつ、でも相手の技量とか忠義心とかはちゃんと認め合ってる・・・という関係はツボです。 しかもそこにフィスターの、「オディールは男なのになぜか可愛いと思ってしまう自分大丈夫か!?」っていう葛藤(笑)も含まれるので、こんなの嫌いになれるはずがないー(笑)。 松本テマリさんの表紙絵からも、オデットの可愛らしさが伝わってくるので近くで悶々としちゃうフィスターくんの気持ちはよく分かるってもんですw


フィスターは登場シーンこそクールでいやみな奴と思わされましたが、どんどん世話焼きおかんみたいになっていくのが面白かったですね。 デンのピンチに「"また"絡まれてる・・・」って言ってたけど、今までも結局助けてたんだろうなーとか、それでも一緒に出掛けるんだなーとか思うと「やっぱりイイ奴!」って思っちゃいます。 彼が本当にオデットの正体に気付いているのか?という点が物語を大きく左右するわけですが、私は「あ、たぶんこの人気付いてないな、勘違いしてるな」と当初から踏んでまして、それは単に作者さんが"様式美"を愛する文章を書くお方だからです。 気付いてそう、気付かれてるかも、どうしよう・・・って思わせておいて気付いてないのかよ!っていうのが書きたいんだろうなーって(笑)。 そして私もそれを楽しませていただきました。 お約束展開って大好きです!


『アルバート家~』でも思ったんですけど、さきさんの描くヒロインはとても魅力的です。 前作では「没落令嬢」だった肩書が今回は「女騎士」になっているわけですが、どちらも自分の立場に対してとても強い自尊心を抱いている点では共通してます。 そしてその自尊心は他者に圧力として向かうものではなく、とことん「自分らしく生きる」ことに発揮されているところが好ましい。 オデットも、自分の生家であるガーフィールド家らしい「猪突猛進な騎士」でいることに、とても真摯な女の子です。 ヴィルトルでは騎士っぽくないと言われてしまう、悪く言えば粗野な戦い方でさえ、彼女にとっては騎士の誇り。 大好きで大切なグルドアを守るためならいっさいの躊躇をしない彼女が、私はとても大好きでした。


それに、誰とでも打ち解けられる素直で快活で(正体の秘密以外は)オープンな性格なのも素敵です。 私自身がコミュ障で偏屈で引きこもりな性格だからか(笑)、とても憧れる・・・。 デンと初対面したときの挨拶、私、あのシーンで「うわぁオデット大好きだ!」って思いましたからね。 あんな風にまっすぐに人と向き合えるのはホント凄いなって思います。 なので、彼女の明るさがフィスターを動かしたり、デンの劣等感を救ったり、はたまたグレイドルの恋心を刺激しちゃったり(笑)していくのを見るのがとても心地よかったです。 彼女自身は食虫植物な花束を作っちゃうような娘さんなのに、彼女に花を贈る男性陣は綺麗な花束を作ってるあたりの対比も面白かった。 そういえばあの花束、フィスターはどうしたんだろう・・・(笑)。


セスラ王女とグルドア王子の初々しい関係も微笑ましかったけど、オデットとフィスターの関係もその初々しさと大差ないまま終わってしまったのだけがちょっと残念ですかね・・・。 もうちょっとドキドキ成分が欲しかったかな。 ただこれはラブコメ至上主義で、他の人が「もう十分だよ!」っていうラブコメでも「もっと、もっとくださいっ!」って思っちゃうダメな私の感想なので、もしかしたら普通の人が好むにはちょうどいい塩梅なのかもしれません(笑)。 いずれにしろ、会話やシチュエーションのひとつひとつに様式美が満載で、気楽に読めてぜんぜん嫌な気持ちにならない、楽しいお話でした。 こういう作品も貴重です。 ありがとうございましたー!



 ⇒さき『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』の感想
 ⇒さき 『アルバート家の令嬢は没落をご所望です・2』 の感想




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