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白洲梓 『最後の王妃』 の感想

最後の王妃
『最後の王妃』


白洲 梓
(イラスト:池上紗京)


集英社コバルト文庫
2015年11月10日 第1刷発行/¥560+税





「誰かが傍にいるというのは、とてつもなくありがたいことなんだ・・・」


<感想>
ルクレツィアは、15歳でアウガルテン王国の皇太子妃となった。 しかし皇太子シメオンは一度も彼女の部屋を訪れることはなく、後日、シメオンがマリーという下働きの娘を愛していると判明。 ほどなく国王が崩御し、ルクレツィアは王妃となった。 そして側室となったマリーが懐妊。 それでも王妃としての務めを果たそうと懸命なルクレツィアだったが、隣国に攻め込まれた王国は敢えなく陥落し・・・? (裏表紙あらすじより)

完全に表紙に一目惚れでした。 表紙の彼女が「最後の王妃」なんだろう。 では黒い衣裳は喪服――失った 「国」 への喪服なのだろう、と思いました。 不思議なことに裏表紙のあらすじを見る前から、彼女の喪服が 「王」 に向けたものではないような気がしていました。 王冠を頭上にいただくことすらできず、身一つで少しだけ不安げで、でも大きな目を曇らせることのないこの女性が喪に服すのであれば 「国」 に対してなのだろう・・・何故か、そう感じたんですね。 そんな彼女の周りに、囁くように、守るように、慈しむように寄ってくる白い鳥たちが、私には 「希望」 のように見えました。 ――そういうお話だといいな。 そう思って、手に取ったんです。 不安げではあるものの儚さはなく、むしろ凛とした美しさのあるルクレツィアに、私は一目惚れをしたのです。 実はこのお話のヒーロー役は、上記の公式のあらすじには名前すら出てこない(笑)メルヴィンという敵国の皇太子なのですが、彼もあの落城の日に同じような気持ちを抱いたのではないかと、読了した今なら思うのです。 





というわけで晴れて一目惚れをした私ですが、これまた何故か、すぐに本を読み始めることはありませんでした。 よほどのことがない限りすぐに読む派の私にしては珍しく、発売日の11月に買っていたにもかかわらず、ずっと枕元に置いて表紙の美しさを堪能して満足するだけの日々が過ぎていきました。 ・・・でね、これも読了して気付いたんですけど、メルヴィンと一緒なんですよ。 5年間ずっと片想いを言い出せず、農夫に化けてまでただただルクレツィアを見守り続けた(笑)メルヴィンくんと同じような行動なんですよ!(笑) 彼女のことが気になるのに、いろんなことを言い訳にして行動しなかったメルヴィンが、 「私だってルクレツィア殿を手に入れるのに5年かかったんだ!お前も耐えろ!!」 みたいな電波を枕元から出していたとしか思えません(笑)。


まぁでもそんなメルヴィンさんの毒電波のおかげで、ちゃんと 「読もう」 って気持ちになれたときにこのお話を堪能できて、本当に良かったです。 だってですね、ルクレツィアさん、途中まで本当に苦労しかしていないんですもの・・・!! 15歳までは 「できて当たり前」 としか見做されない厳しい王妃教育に忙殺されて、いざ結婚してもシメオンからは女として拒絶され、側室のマリーに男の子を身籠られて肩身が狭くなり、では公的な妃として頑張ろうとすれば口出しをするなと言われてしまい、マリーの愛人からは命を狙われて、でもマリーのことは憎めないでいるうちに敵国に攻め込まれ、王もマリーをつれて勝手に自害し、一人残されたルクレツィアが敗戦処理をして・・・って、良いことないでしょ! 辛いだけでしょ!? めっちゃ重いわ・・・と途中本気で泣きそうになりながら読んでいました。 これは中途半端な気持ちでは向き合えません。 一歩間違うと、 「ヒロインをこんなに追い詰めて楽しいの?」 と変な読み方をしてしまいそうになるくらい、重かったです。


でも、そうじゃないんですよね。  「王妃」 というのは、実際にそれくらいに責任のある立場なんですよね。 夫を取られようが子供を産めなかろうが公的な妃である以上、たとえ義務感からだとしても公務を続けたルクレツィアはやっぱりとても素晴らしいのです。 国を失ってからルクレツィアは、自分の至らない部分をどんどん発見して反省していくわけですが、私にしてみれば初夜から彼女を相手にしなかったシメオンの方がルクレツィアへの扉を閉め続けたわけで、決して彼女だけの反省点ではないと思うのです。 まだ若く、矜持を至上のものとして育った彼女がそれ以上の人間関係に踏み込めるわけがなくて、むしろ誰もサポートしなかった城の人間がおかしいし、それ以上にルクレツィアの責任感の方が本当にすごいなって思うのですよ。 国を背負っている実感はシメオンもマリーも持っておらず、だからこそルクレツィアを異端のように感じられてしまったんだろうな・・・切ないです。 


落城の日、ルクレツィアが敵国に見せた態度は本当に立派でした。 辛かった王妃時代の集大成・・・とするには悲しい現実ですが、ただ私はちょっと良かったんじゃないかとも思うのです。 ここで一度やりきった気持ちがあってこそ、後々メルヴィンと一緒に 「今までとは違う王妃としての在り方」 が模索できるような気がするからです。 いずれにしろ、ここで見せた彼女とアルバーンの威厳が半端なく素晴らしかったので、正直メルヴィンの存在感はイマイチ・・・?って感じなのですが(笑)、功績をあげてもどこか日和見的な部分があった彼が、ルクレツィアの凛然として様子に心打たれるような男性で良かったとも思うのです。 アルバーンが国を継ぎ、自分の出番はその後だと思っていたメルヴィンが、突然の内戦で自分が国のトップになることを突きつけられたときに、あの日のルクレツィアの覚悟ある姿を思い出したに違いないから。 彼のそのあたりのことは物語では描かれていないので惜しいくらい。 もっと掘り下げて、ルクレツィアへの想いを深めていく過程があればさらに良かったな、と感じる点でした。 その分、ラストで壊れまくるメルヴィンが楽しくて仕方ないんですけどね~(ニヤニヤw)。


前半部分がそんな感じだったので、ルクレツィアがティアナと出会って人とのかかわりを深めていく後半部分は、心穏やかに読むことが出来ました。 ちょっとティアナのキャラがたちすぎてて主役を食いそうだな、と思っていたら、まさか本当に当初は主役の予定だったとは・・・! ここからもルクレツィアの危機は続くわけですが、いちばん強く感じたことは 「一人ではない」 という強いメッセージ。 前半のルクレツィアはひとりで踏ん張って生きているのがひしひしと伝わってきて、だからこそこちらも辛かったのですが、ティアナと出会ってひとりの寂しさを実感してからのルクレツィアは、だからこそひととの関わりを大事にしようという気持ちが伝わってきたので、あぁ良かったなって。 今の彼女なら、危機に直面しても 「自分の為」 だけでなく 「誰かの為」 に頑張れるから大丈夫だなってしみじみ思いました。 私は頑張ってきた彼女が報われるならどんな未来だって良かったんですけど (そう思わせるくらいルクレツィアの努力を尊敬します)、ラストには最上級に甘い結末が待っていたので、ますますしみじみと 「良かったねぇぇぇぇ!!(涙!)」 って泣きそうになりました。 国の最期を看取った王妃が、それでも未来を紡いでいく――愛する人と共に。 いやホント、カッコよく決められなかったメルヴィンのおかげだと思います(コラ・笑)。


申し遅れましたが、この作品は2015年度コバルトノベル大賞受賞作、とのこと。 あとがきでも触れられていましたが、初めの構想とは大きく変更してルクレツィアを主役に抜擢したとあり、その余波なのか、ティアナやクラウスなど、描き切れていない登場人物がいるのも確かです。 そういう創り方は次回作に繋がりやすいという利点がある一方で、1作品として読んだ場合の思い入れが薄くなる弱点があるわけで、個人的には後者の部分が勿体ないなって思います。 クラウスとか本当によい登場の仕方をしたのでもっと彼の事知りたかったなー。 ただその分、ルクレツィアの物語を堪能させていただきました。 もはやメルヴィンの恋心さえラストまで放置されてしまうくらいに(笑)ルクレツィアに的を絞った創りになっているのは決して嫌いじゃありません。 むしろ、可愛い女の子が文字通り死ぬほど頑張るお話だったので大好物でした。 彼女と一緒に辛さや幸せを味わう時間はとても素敵なものになりました。 ありがとう、これからはメルヴィンと一緒に今までとは違う王妃としての在り方を得ながら生きてくださいね。 そして、メルヴィンを笑顔一つで虜にする素敵な王妃になってくださいねっ!(笑)





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