藍川竜樹 『死にかけ花嫁と革命の鐘』 の感想

死にかけ花嫁と革命の鐘
『死にかけ花嫁と革命の鐘』



藍川竜樹


集英社コバルト文庫
2016年5月10日 第1刷発行





 ヘルミナはあわてて言い訳しようと口を開けた。 だがうまい言葉が出てこない。
 「わ、私は別に寂しかったわけではありません。 今まで世話役としてのあなたの注目を独占していたのになどと心細く思ったわけでもありません。 急に広い外の世界に出てとまどっているだけです、料理やお酒が喉を通らなかったのは一人ぼっちで間がもたなかったからでっ」
 あせって顔が赤くなるのが自分でもわかった。 そんなヘルミナのうろたえぶりがおかしいのか、カエサルが手で口を押えながら肩をふるわせている。 笑いをこらえているのか。
 そして彼はぞくりとする甘い低音で言った。
 「……あなたは本当に不意打ちばっかりしてくれますね、そこのシトロンのジェリーより甘くて新鮮な刺激がある。 私をどうしたいのですか。 うぬぼれてしまいますよ」


<感想>
―――自惚れてしまえばいいじゃないかっ!(笑)
と盛大にツッコミ入れながら(笑)楽しく読ませていただいた 『死にかけ花嫁と革命の鐘』 でございます。 カエサルさんはわりと最初からラブコメ素養が見受けられたのですが、自分の想いを自覚してからはすっかり正統派の激甘ラブコメ男子に豹変してくれまして、キザったらしいのに育ちの良さが伺えていやみにならないという最強ぶりに、私はどうしたら良いのか分からないほどでした。 そもそも何だよ 「シトロンのジェリーより甘くて新鮮な刺激」 って!(笑) キーボード打ってても恥ずかしいレベルですが、後半のカエサルくんの言動にはそのレベルの恥ずかしさは標準装備だったので、私もいちいちツッコミ入れながら読まないと撃沈する勢いでした。  いやぁ楽しかった・・・!!(笑) あれですね、終盤で登場されるおじいちゃんの孫溺愛ナイスミドルっぷりも凄まじかったので、オルトランド侯爵家って愛情深い家系なのかもしれません。 




・・・はっ。 きちんとあらすじを書いて、きちんと内容を伝えて、それからきちんと愛情を述べようと思っていたのに、全力でのツッコミから入ってしまいました。 すべてカエサルさんのせいです(笑)。 というわけでこのお話は、タイトル通りにありとあらゆる病を体に宿す 「死にかけ花嫁」 ヘルミナ王女が、病弱さとひきかえに手に入れた知識と度胸と誠実さを武器に、祖国を独裁者ゼノンの手から守るために、ひとり敵国へと嫁いでいく物語です。 え、カエサルですか? カエサルさんはそんな健気なヘルミナちゃんに、絆されないぞ俺は絆されないんだからな絶対ぜったい絆されたりしないんだからな!と予防線をはった挙句、案の定惚れちゃって横恋慕路線を一直線につく進んでいく青年侯爵さんです。 あほですよねー(褒め言葉!笑)。


加々見絵里さんの手による表紙イラストがとても素敵で、 「誰だこの可愛い女の子は!!」 と一目惚れをしまして、その次にタイトルに惹かれました。  「革命の鐘」 というドラマチックな言葉を「死にかけ花嫁」がどうやって響かせてくれるのだろう?って、すごく興味をひかれたのです。 だって表紙のヘルミナちゃんはどこまでもか弱くて可愛くてベッドのすぐ横に立つカエサルくんを無防備に見上げてて、ひたすら 「守ってあげたくなる」 ような女の子です。 でもその彼女がきっと 「誰かを守って」 革命の鐘を鳴らすんだ・・・と想像したらドキドキが止まらなくなったんです。 か弱いけど強い女の子は、大好物! しかも彼女は、周囲をあっと言わせるような型破りな特技だけでなく、何重苦ともしれない病に負けない強さも、祖国を想う王女としてのプライドも、カエサルにちょっとだけときめいてしまう乙女心ももっていて、とにかくすべてが愛しくて堪らなくなるような素敵な女の子なのです。 もうこれはカエサル惚れますよね!って感じで(笑)、とても楽しく読ませていただきました。


それにしても 「死にかけ花嫁」。 ヘルミナちゃんの虚弱を通り越してまさに死にかけとしか表現できないくらいの体質について冒頭で描かれるのですが、これが本当に辛くて。 病気そのものも辛いけど、王女という立場だから高価な薬が使えたり、王女という立場だからこそ 「生かされて」 しまう・・・という 「事実」 そのものが、結構辛いなって。 そんな受動的な日々に、幼い婚約者のランスくんのおかげ(?)で別れを告げた7歳のヘルミナちゃんの決意が本当に尊い。  「生きた証を残したい」 ・・・そう考えた7歳のヘルミナちゃんが、私は本当に大好きだし尊敬します。 ただ、生きた証というのは、いなくなることが前提の決意なわけで・・・7歳の女の子がその覚悟をしたのか、と思うとやっぱりいろいろ切なくて、シリアスすぎないように描かれているにもかかわらず泣いてしまいましたよ。


なので、成長した彼女が政治学や薬学を嬉々として学び実践している姿を見せてくれた時は嬉しかったです。  「数字たちが健康に太っていくのを見るのが楽しい」 という風変わりな王女に育っていたとしても嬉しいものですね(笑)。 私がそんな風にメロメロになるくらいだから当然彼女は人から愛される素養を持つわけで、身一つで赴いた敵国でもどんどん味方を増やしていくのは痛快の一言でした。 独自の処方で作った最高の便秘薬で人気を得たりするのは、恋愛面のみを推しがちな普通の少女小説と毛色が違っていて、そんなところもヘルミナの好感度を高めるポイントだった気が。 とりあえず、鉄格子さえ溶かすような薬を日頃の飲み薬と食べ物で調合しちゃうような結構アブない王女なんですけど、そんなところももはや可愛いとしか思えないくらいに可愛かったです。 これが溺愛か・・・(笑)。 ある意味いちばん難航すると思われたのがカエサルを同志にすることだったのですが、彼もいちど気をゆるしてからは早かった・・・籠絡された後の彼はラブコメ一直線だった・・・楽しいw(笑)。


そのカエサルくんは、花嫁という名の人質として小国からやってきたヘルミナ王女の世話役を独裁者ゼノンから与えられる役どころです。 もちろんそれには理由があって、彼の世話中にヘルミナが命を落とすようなことがあれば国民から人気の高いカエサルの非を問えるというゼノンの思惑で設定された出会いだったりします。 でもこれが結果としてゼノンを討つ革命の呼び水となるのだから人生難しいですよね。 カエサルは表向き恭順な姿勢を見せつつ、下街でひそかに反ゼノン勢力をまとめてあげているような優秀な人材。 家柄もよく、真面目で、でも自然と人の視線をあつめるカリスマ性があるので、ゼノンからやっかまれているんですね。 で、そこを見逃すヘルミナちゃんではないので、彼にこっそりと同盟を組む提案をすることで、ふたりの関係と政情がどんどん変化していく・・・という展開でした。 恋物語としても楽しかったけど、国政のゆらぎもきちんと描かれていてとてもドラマチック。 また、死にかけるほどの病を抱えてもほそぼそと命の炎を繋いだヘルミナ、燃え盛る炎のような命を一瞬で散らすことになるゼノン、そしてその二つの炎に深くかかわるカエサルが、どのように自分の生きる道を選択していくのか、というお話でもあって、読み応えがありました。


でも私にはやっぱり、ヘルミナちゃんが本当に愛しくて。 いろんな側面から読める物語だったけど、私には彼女の恋物語だという印象がとても強いです。 カエサルからまっすぐな愛情を告げられた時の、
 不安と恐怖で体がふるえる。なのに胸の奥は温かだった。
 ヘルミナは思った。きっと幸せを願う我が儘な心は、この場所にあるのだ、と……。

という部分が、作中で私が一番うつくしいと思った文章でした。 

死を前提に生きてすべてを諦めていたはずの彼女が、もし彼を失ったらどうしよう・・・という恐怖を抱いたことも、抑えきれないくらいの温かな気持ちがそこに幸せが眠っているんだと感じられたことも、眩暈がするほどうつくしくて、ここで一番泣いてしまいました。 頑張っている子が報われないことほど切ないことはないです。 なので、絶対にヘルミナちゃんには幸せになって欲しい! だから、カエサルが 「あなたは私が絶対に死なせない」 と言ってくれたのは、本当に嬉しかったんです。 だって、彼女が抱える数多の病をまえに、 「絶対に死なせない」 なんて言葉は誰もつかえなかったであろうことは明らかなんですもの。 とても強いヘルミナ自身だって信じられなかったことを、カエサルがあっさりと言い切ったことが本当にカッコよくて、だてにうだうだと恋煩いしていたわけじゃなかったんだ!と感心してしまいましたよ☆ (もっと違う褒め方してあげて!・笑)。 ヘルミナが 「生きたい」 と願った人生が、よりいっそう温かなものになるように支えてあげてくださいね。

ちなみに全然どーでもいい話なんですけど、ヘルミナちゃんとカエサルくんは結構無自覚に人前でいちゃいちゃしていたわけでして、そこら辺に侍っていた侍女さんとか侍医さんとかがどんな生暖かい目線を彼らに送っていたのかが、いちばん気になるポイントだったりします(笑)。 周囲の目を気にしない主人公二人の代わりに、私がずっと 「いや今見られてるからね? 周囲に人いっぱいいるからね気付いてる!?」 とはらはらしてました(笑)。 私も彼らと一緒にふたりの関係をはらはらニヤニヤしながら見守りたいものですw 大団円ってやっぱり素敵だなーと思わせてくれた少女小説で、前向きかつラブコメ満載かつドラマチックで、とても私の好みでした。 ごちそうさまー。





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