『当世白浪気質・2 美少女は悪党の愉しみ』 『当世白浪気質・3 美少女こそ我が悦び』の感想

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『愛おしいと思うことに 他にどんな理由(いいわけ)をもちだせる?』


<ご紹介>
秋田書店『ミステリーボニータ』に掲載されていた作品。 完結したのでまとめてご紹介。 昭和二十年代を舞台に繰り広げられる、大人に読んで欲しい物語です。

美術品泥棒・吉田虎之助(トラ)。 お宝をめぐって日々トラブルの中に身を置く彼は、ある日、山狼に嫁ぐ宿命を負わされた生神・真神千越(ちお)と出逢う。 彼女の「神性」を美しいと感じたトラは、千越を盗むことに。 大人になるまで面倒をみることにするのだが、次第に美しく、そして「人」らしくなる千越に、崇拝と失望を同時に抱く複雑な日々を過ごす羽目になる。 一方の千越も、与えられた宿命ではなく、トラと共に「世界」を広げていくうちに、彼への想いが芽生えていくのだが、どこまでもトラブル続きな二人の生活ではすれ違いも多くて…。 戦後のトウキョウ二人暮し、迷走するお宝と恋の行方とは!?
 ⇒『当世白浪気質・1 東京アプレゲール』の感想


<感想>
敗戦後の東京という絶妙な雰囲気を、見事に描ききってくれた『当世白浪気質』。 完結しちゃったかぁと残念だけど、でも、もの凄く好きだ!! まるで極上の純文学をマンガで読ませてもらった感じです。 そりゃもう、台詞もモノローグもめちゃくちゃ多くて読み応えがあるんだけど(1冊読了するのに時間がかかる。 でも、時間をかけてじっくり読みたい!!)、杉山さんのシンプルで綺麗な絵柄と、和風古風な美術描写・背景が無理なく物語を描破してくれるのだ。 愛も尊敬も、当り前のことは口に出さない戦後の「粋」な文化もカッコ良く世界観を深めてくれてて良いですねw


今回の完結に合わせて1巻から読み直したけど、初読では気づかなかった細かな感情の流れがたくさんあって、最初からゴール地点を見据えて描かれていたこともよく分かりました。 各話の冒頭に提示されたネタや感情が、最後にきちんと帰結する構成が見事だと常々思っていたら、作品としても第1話と最終話とで「三番目の選択」が使われてて、いやスゴイなと。 結局、一度じゃ勿体無くて、もう一回読み直したほど。 読めば読むほど、味がでる。 そんな作品だと改めて実感しました。 すごい、好きです。 ちなみに一番目の選択は「生まれてこないこと」、二番目は「すぐに死ぬこと」。 彼らが選んだ「三番目」が知りたい人は、読んでみるといいです(笑)。


お話としては、自分が自分であることが許せないでいる理想家の虎之助が、生神・千越への「畏れ」を知り、「己」を知り、愛を知ることで自分を許していく物語。 そして、世界の理を見、けれど自分の意思すらなかった生神・千越が、トラと出逢ったことで「人」へと還る過程を描いた物語です。 こう書くと小難しく、実際お話の内容的にも、詩だの哲学だの文学だのと様々な引用が効果的に示されているけど、要するにもの凄く遠回りをして「愛」を実感するラブコメです(笑)。 でも、その遠回りにこそ意味があるんだよね、と読めば納得の説得力。 美術品が絡むトラブルとか、トラの実家であるヤクザが絡む人情話などが付加されるので、派手な演出やほろりとくる場面もあって、小難しいばかりじゃないところがまた魅力なのですねw


結果として、トラにも千越にもお互いが唯一無二の存在であり、けれども世界の中の小さな存在。 だからこそ、崇拝や戸惑いや絶望や幸福という、お互いがいて初めて実感できる感情全部で相手を愛する素晴らしさが格別でした。 多分これからもトラはずっと泣き虫で叫び声も「きゃぁ」だろうし(笑)、千越は凛として美しく、狼族だから子供もボロボロ産んだりして(笑)愛情を深めていくのでしょう。 この夫婦はきっと、小吉親分と同じように、愛と尊敬と畏れを抱いた夫婦になってくれるに違いない!! ならば3巻で収めたのも、また「粋(=敢えて語らない)」ですね。 いい作品を読んだ・・・杉山先生、ありがとうございましたw


ちなみに、杉山小弥花さん公式ブログ 『ありがとうなら芋虫ゃハタチ』『当世白浪気質』完結オマケマンガが掲載されてます。 一見の価値あり!!


名言が多いので、以下短く各話語り。 たいがい長いので(笑)『続きを読む』からどーぞw





・第八話『嘘もよし原 真もよし原』
人形・ちまの願いを晴らすお話。 実はこの破戒僧・雅楽(うた)さんが大好きなりるです!! いい大人が「虎ちゃん」「ウタちゃん」って呼び合える関係って素敵w 『獣は獣でも、優しい獣じゃ』っていうウタちゃんの優しさが千越に伝播するシーンが好きでした。

・第九話『ランスロット未満』
サブタイトルが秀逸すぎる!! 『言葉でくくってみても苦しみはトラだけのもの』という千越に、豆狸(笑)もとい麟太郎の『「孤独」だって言えよバカ』という呟きが、小難しくなりがちな物語を代弁してて良いです。 素直なキャラは豆狸くらいだもんなー。 ランスロットになる苦悩より、ならない苦悩のほうが自律的な分尊いでしょう。

・第十話『破戒』
『歯がゆいから、どうにもならないから だから苦しくて偶然の幸福になくのだ』という人らしい感情を得た千越に対して、美しさ(=神性)を保たせたいと思うトラとの、すれ違いこそが人の罰だという深いお話。 一方凍える体を人肌で温めるシーンは妙にお約束展開で、このギャップにドキドキします!! ラスト、トラははぐらかしたんだと思うけど、どうかな。

・第十一話『シュレディンガーの狼』
『箱はとじておくためのもの、また開けてみたいと思うもの』 千越とトラの矛盾した関係を、物理学者(だった気がする)シュレディンガーが唱えたパラドクスと、シュレディンガー自身の性嗜好(幼女趣味)を、二重にかけた上手いサブタイトル。 東一さんはこのお話から好きになりました。 余裕ないくせに余裕がある、やぱり矛盾したお人w

・第十二話『麦秀の嘆』
亡国の嘆き。 『史記』なんて知らないから調べましたよ(無知!!)。 そう分かれば、失われた「日本国」の在り方という意味なのかと思うけれど、『光と闇の狭間、それが私のいる処 トラには何が見えている?』という千越の問いはかなり深く、トラの答えが結局現状を是としたものである意味は大きいのかなと。 千越がいるから肯定できるってことだよね? 

・第十三話『悪魔の名前』
完結した今だから言える。 『恨むのも愛するのも、間に合わないってことがあると思いませんか』。 トラが「悪魔」に語ったこの台詞は、間違いだよね。 千越との愛が間に合ったように、「悪魔」との関係もやり直すことが出来るはず。 だって、トラだって「また」って言ってるじゃんねぇ。 トラの泣き顔とか「きゃあ」とい悲鳴を、この頃から愛しく思うから不思議(笑)。 

・第一四話『言挙げせず』
トラのばか!!と叫んだ1話(笑)。 2巻読了時はしばらく放心状態だったのを覚えてます。 自分のラブコメ脳を疑ったのはこのときが初めて(ぇ。 そのくらい、完璧な理論武装をトラがしてたと思います、良くないけどっ!! それにしても、『言挙げせず』という言葉の意味一つをきちんと理解しきれていない自分に腹がたった1話(笑)。

・第十五話『さらば疾風怒濤』
前髪をあげてる千越ちゃんのラブリーさが突出していたお話(そこか・笑)w 『そうとも 今こそ名づけよう 私の中の悪魔に「女」という名を』 たとえ悪魔でも自分の中の感情を理解できれば、自分のものにすることが出来るんですね、女って。 彼女の「復讐」はささやかながらに成功して、ささやかに失敗した訳だけど(何故ならトラもそれを望んだから)、「理屈屋・自分勝手」と欠点ばかり列挙されたトラのひととなりが、そのまま愛の言葉に聞こえるから不思議です。 愛は深いなぁ。

・第十六話『結び目を断て』
『いくら頭の中でゴチャゴチャと理屈の糸が絡み合っていようとも 女という剣はいともたやすくその結び目を断ち切れる』 単に愛しさを表すだけで、この屁理屈をひねり出すトラはやっぱり愛しい奴です(笑)。 自分の中の千越への信仰が、彼女の愛によって許された象徴的なシーン。 それにしても、トラに手紙を出す千越ちゃんの笑顔からは、いつも以上の「人間味」が感じられるから絵の力ってスゴイ。

・第十七話『当世博徒気質』
シリーズ1のラブコメ話だと思ってますw(笑) 千越を『物はモノでも、宝物』と明言し賭けを挑むのも、『死んだ人間はただ美しい。 おまえと比べるには退屈すぎらぁ』と賭けに勝って千越に負けるのも、負けるが勝ちと言い切った姐さんも「粋」ってもんです。 

・第十八話『カンダタたち』
麟太郎が登場すると、いつも話が一気に素直になるのが良い。 千越のピンチにトラが我を亡くすのは以前からそうだけど、『オレのために嘘くらいつくよなって…』と自惚れることができるくらいに進歩したよ!! トラが恐れていた通り、千越はトラの全てを許す。 けれど、恐れだったはずの「許し」を『涙が出ることが嬉しい』と幸せに思えたトラ自身の変化は、紛れもなく彼が紡いだ生きる糸なのでしょう。 

・第十九話『永遠の鉄斎(上)』
髪を下ろした東一さんに、うっかりときめいたお話(笑)。 『悪かったな、ただの女で…』と、千越ちゃん自身が、自らの神性<女と規定したのが印象的。 扉絵が(下)と対になってるんだけど、表情の違いを楽しむのも良いですよねー。 芸が細かい!!

・第二十話『永遠の鉄斎(下)』
千越ちゃんが作ってる和柄のパッチワークが可愛くって仕方ない!! 『一夜の情けが欲しい』という言葉は第一話当時と同じ台詞なのに、全然ちがう重さをもって響いてきました。 『世界で一等美しいと思ったものを 汚れた己が蹂躙する』という小難しい言葉の甘さ・痛さとともに、二人の「遠回り」を実感した好きなお話です。 トラも千越も、お互いに負けあった結果が幸せってことだもんね。 東一さんは東一さんで、史上最大級の腹黒を炸裂させたのにイマイチ不発に終わり(笑)、挙句の果てに『虎兄さん』と呼ぶあたり、ここでもトラの「負けるが勝ち」が表現されてて上手いと思います。 嫌いになれないなら、好きになるしかないもんねw まぁとにかく、恋愛至上主義万歳ってことで!!(笑)

・第二十一話『そして三番目の選択』
トラも千越も、一世一代の「粋」が全て。 言いたいことは多々あれど、ここまで読めて本当に良かったです。





<関連サイト様>
●感想拝読しました・・・『マンガ続刊読破』様 『ほんよみの森』
オンライン書店【ビーケーワン】
・・・『当世白浪気質・2 美少女は悪党の愉しみ』をbk1でチェック!!
・・・『当世白浪気質・3 美少女こそ我が悦び』をbk1でチェック!!






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