『空の中』の感想

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『空の中』
有川浩
角川文庫/2008.6.25初版/¥705




『ありがとう。 ごめん』



<ご紹介>
『図書館戦争』シリーズの有川先生の2作目。 ハードカバー時はメディアワークス刊行でしたが、文庫は角川から。 文庫のみ書き下ろし『仁淀の神様』も収録です。 未知なる生物【白鯨】との出会いが、日本に、人間に、大きな波紋を呼びこむ、面白くて切ないSF?小説です。

高度2万メートルの「空の中」で、航空事故が相次いだ。 純国産の民間航空機の試験機と、自衛隊のF15J(イーグル)。 事故調査のため自衛隊を訪れた春名高巳は、唯一の生存者である武田光稀三尉が、女性ファイターパイロットだと知り驚く。 頑なに口を閉ざす彼女を必死で説得し、やっと事故現場である空域へと飛んだのだが、何もないはずの「空」で不可思議な遭遇をして…。
一方、高知に住む高校生・瞬と佳江は、海辺でクラゲのような生き物・フェイクを拾う。 航空事故で殉職した父を偲んだ瞬は、父の携帯に電話をかけてみる。 繋がらないはずの電波を受信したのは、何と…?



<感想>
恋愛短編集『クジラの彼』を先に読んでいた私は、その中でも一際甘くて潔い高巳と光稀さんの二人が大好きでした。 なので楽しみにしていた『空の中』。

…いろんな意味で、最高だったなぁ。

小さい頃に『海底二万マイル』を読んだときのような、わくわくする気持ちも。 鉄壁なはずの光稀さんのガードをあっさり破っちゃう高巳との、どきどきする関係も。 少年らしい潔癖さと甘えが招いた小さな「間違い」に翻弄される、瞬と佳江と真帆の繊細さも。 子供たちをやさしく諭す宮じいの大人の正しさも。 そして、フェイクが瞬に寄せた、純粋な信頼も。 …すべてが胸にまっすぐに飛び込んできて、どんどん降り積もっていくの。 だから、私の中には、今もみんながいる。 そのことがホント嬉しくて、あぁ読んで良かったな、って心から思いました。 文庫解説の新井素子さんが言うとおりですね。 「読め。 面白いから。」 私も、そう思う。


お話としては、たぶんSFエンタテインメント。 でもSFの詳しい定義を知らなきゃ楽しめないとかそんなんじゃなくて、「空からドーンと落ちてくるからスカイドン」的なSFです(何だそれ・笑)。


謎の知的生物【白鯨】の第一発見者である高巳・光稀の大人組みパートでは、まったくの異種である【白鯨】とのコンタクトをとるやり取りの面白さ、二人の恋愛などがメイン。 これがまた、もの凄くイイ。 
何ていうかね、【白鯨】と光稀さんという難攻不落な二人(笑)を相手に、地道なコミュニケーションを続ける高巳が、もうめちゃくちゃカッコイイ!! というか、尊敬しますあの話術…!! 【白鯨】と光稀ちゃんが、高巳の言葉でどんどん心を開いていく様子を見るのが、楽しくて仕方ありませんでした。 いやもう、猛獣使いかと思うくらいの手腕だよ!!(笑)

彼の場合、その「優しさ」に計算があるのは確かなんだけど、それは決して「打算」ではない。 あくまでも、相手の感情を慮っての計算なので、読み手も受け手も不愉快にならないところがカッコイイのです。 この作品で徹底的に描かれる、「大人」と「子供」の「優しさ」の違いが、そこなんですよね。 相手を思いやれているか、自分だけで一杯になっていないか。 【白鯨】という存在を通して問われるそんな命題の中で、一番輝いていたのが高巳だったと思います。   


ただ、それが出来なかった側に過失があるとかそーゆーのじゃなて。 【白鯨】から切り離されたフェイクを拾った瞬・佳江のパートでは、子供らしい瑞々しい感受性がとことん描かれて、痛いの痛くないのやっぱり痛いのって…。

「間違ったほうでどんどん押していったら、一周して正解に着くかもしれない」という魅力的な方便にはまっていく瞬たちの、危ういまでの真っ直ぐさにクラクラしました。 考えたくなるよね、そういうの。 誤らなくて済む方法、引き返さなくて済む方法。 そんな魔法みたいな役割を果たしてくれたフェイクと瞬の関係が、いろんな人の思惑を巻き込んでどんどん大きくなっていく展開は、もうめちゃくちゃドラマチックでした。
でもそれ以上に、真帆ちゃんが求める「許し」を「許す」方に転換させた宮じぃの正しい優しさ。 それから、最後の最後で瞬を間違いの渕から救い上げたのが、フェイクが瞬を慕う想いだったいう愛しさが、どこまでも綺麗で涙が止まりませんでした。 『ありがとう。 ごめん。』という、精一杯にシンプルな二つの謝意が、どうかフェイクに届きますように。 『空の中』まで、届きますように。


あとは…ラストの高巳と光稀さんのベタ甘がもう…!!(笑) 『俺は気が長い』で出逢って、同じ言葉で新しい関係が始まって…って、何て可愛いのっ!? いやもう満足!! 不満など…あるか、「その展開」が見れれば最高だったのにーw でも、二人を冷やかす隊員さんに怒る光稀さんと、余裕の高巳のギャップを見れたから、良しとします。 何だか急にその後の二人のラブっぷりを見たくなったので、後で『クジラの彼』を読み直そうっと(笑)。
ちなみに、瞬と佳江ちゃんと宮じぃの後日譚は、描き下ろし短編『仁淀の神様』で読めます。 ハードカバー派の人も是非文庫でご再読ください。


●関連記事 
<『図書館戦争』シリーズ感想一覧>
『図書館戦争』 ⇒『図書館内乱』 ⇒『図書館危機』 ⇒『図書館革命』 
『別冊図書館戦争1』 ⇒『別冊図書館戦争2』 
⇒『アニメ版DVD初回特典小説』1巻 ⇒2巻 ⇒3巻 ⇒4巻 ⇒5巻 
⇒白泉社コミック版『図書館戦争LOVE&WAR』1巻 ⇒2巻 ⇒3巻 ⇒4巻
<他作品感想>  
有川浩作品感想一覧  
「その他アニメ」カテゴリにアニメ版の1話ごと感想もあります


    



<関連サイト様>
●感想拝読しました・・・『本読みの日常』 『怪鳥の【ちょ~『鈍速』飛行日誌】』




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