『メフィスト5月号(2007年)』の感想

メフィスト 2007年 05月号 [雑誌]
講談社/?1500
発売日:2007-04-13


「綾辻行人×有栖川有栖のミステリジョッキー」
笠井潔・上遠野浩平・舞城王太郎・北山猛邦・他


<ご紹介>
講談社刊行のミステリ系文芸誌。 1年間の充電を経て堂々の再開なので、いろいろ気合入ってます。 平田秀一氏の幻想的な表紙イラストも素晴らしい!!
この雑誌の巻末では、メフィスト賞の応募作を編集者が批評する「座談会」を設けていて、ここでメフィスト賞を与えるかどうかが決まるというなかなかステキな雑誌。 いつまで経っても「小説現代増刊号」扱いなんですが、そろそろ独立したブランドにしても良いんじゃぁ…。


<感想>
4月から手元にあったのに、勿体無くてなかなか読み進めないうちに、今月9月号が発売されてしまいました。 いやぁ、慌てた慌てた(笑)。
核心に触れないよう気をつけますが、基本的にネタバレ注意!! あとで単行本化された時の参考になると良いな。



●島田荘司 『クロアチア人の手』
石岡和己の元に舞い込んだ、殺人事件の解明依頼。クロアチア人二人が謎の死を遂げたというのだが、頑丈な密室と死体を食べたピラニアは、何を語りかけているのか…。

御手洗シリーズの読みきり。 相変わらず御大はスウェーデンにいらっしゃるので、石岡くんが頑張るパターンです。 石岡くん苦手な私には、ちと厳しい展開でした…(笑)。

冒頭から、大戦のきっかけとなったクロアチア人とセルビア人の宿命のような重い話を展開させ、そうかと思うと一気に幻想的な雰囲気に物語りは移行する。 いつの時代も現実が一番残酷だと思わせる史実を、ここまでドラマチックに読ませるのか。 そして謎を導くのか。 この手腕は本当に凄まじい。
トリックや二人の関係にちょっとむむむとなる点もあるけれど、この物語の本質は多分そこではなく、最後の一文にある。 戦争を民族浄化という名目で正当化しつづける人類を、冒頭で批判しておきながら、犯人の行動もそこへ行き着く。 自己正当化へ至る人間の心理が如実に現れる結末の恐ろしさこそを伝えたかったのではないでしょうか。

このラストを読んで、筒井康隆『ロートレック荘事件』がちらりと思い浮かびました。 自己を責め続ける言葉で終わるこの作品のラストも、結局は究極の自己正当化だったし。 怖いのは、人間のそういう部分だと思わされた一作。 スゴイです。
    →関連過去記事 『上高地の切り裂きジャック』の感想



●はやみねかおる 『少年名探偵WHO 透明人間事件』 /武本糸会・画
「今夜10時、あなたの大切なものを奪いに参上します」透明人間から寄せられた謎の予告状。 少年探偵WHOが助手のネコイラズ君と事件に挑む!!

講談社ミステリーランドから刊行された、はやみねかおる『ぼくと未来屋の夏』の中で、作中作のキャラクタとして登場したWHOとネコイラズ君がメインで登場。 うわぁい、この子たち大好きだったので、嬉しいですw 確かに作中作では勿体無い人物造形だったし、何より『ぼくと未来屋の夏』をコミカライズした武本糸絵さんとのタッグも良かった。 武本さんオリジナルだった「委員長」が今回はやみね作品として登場してますが、何の違和感も無し。 素敵すぎる!!  明るく楽しく、そして少ししんみり。 気持ちよく読める持ち味が最大限に発揮された良作です。
    →関連過去記事 『ぼくと未来屋の夏・1』の感想



●森博嗣 『ライ麦畑で増幅して』 /ささきすばる・画(Xシリーズ予告編)
「午前と午後が背中合わせ」 突然亡くなった社長が残した謎の遺言。 オーディオルームで出会った椙田という男。 小川令子の未来は?

6月に刊行された森博嗣の新シリーズ『Xシリーズ』の予告編。 椙田と出会うまでを綺麗な文章とコンパクトな分量でセンチメンタル風味に仕上げた短編。 スピーカとネット。 いつもながら比喩表現の美しさは格別です。

人の気持ちも、思惑も、謎かけの言葉さえも、ほとんど明らかにならないまま静かに終焉するんだけど、それが反って印象深い。 この短編を読んでから
『イナイ×イナイ』へ進むと、令子女史に対する見方が変化するのではないでしょうか。 「自分が一番若い」という理由で片づけを始める人は、好きだなぁ。
謎かけの答えは分からないけれど、どれだけ想像しても、暗い答えは出てこない。 彼女のものは、きっと明るい何かなのだと思う。
    →関連過去記事 『イナイ×イナイ』の感想



●西尾維新 『零崎曲識の人間人間・ランドセルランドの戦い』 
萩原子荻と零崎双識は何故かランドセルランドで一日デート? 詳細不明な殺人鬼、『少女趣味(ボルトキープ)』こと零崎曲識と零崎人識は、そんな二人を尾行するのだが・・・!!

という訳で、「人間シリーズ」第3弾。 相変わらず「妹」に弱い双識さんと(笑。弱いっていうか、1日100通のメールはもはやス○ーカー…)、謎に包まれた曲識さん、いつの間にかヘタレキャラになりつつある人識さんたちが登場です。
ランドセルランドでデート、というだけの話に、いろんな人の思惑が混戦したなかなか面白い出来。 ここでこのキャラとこんな事が…!!的な満足度は高いのではないでしょうか? 本当に、ネタを出し惜しみしない人です、西尾維新…(笑)。

いつも感じることですが、西尾維新は、作品的に「もういない」はずの人物を、そんな気配微塵も感じさせないほど魅力的に描きますよね。 これだけ読んでたら、このキャラが数年後にいないんだ、ってことは完全に感じないでしょう。 面白いな…。
    →関連過去記事 『刀語 第八話 微刀・釵』の感想



●辻村深月 『名前探しの放課後 第1回』
依田いつか、がふと気づくと、そこ3ヶ月前の世界だった。 名前を思い出せない「死んでしまったクラスメイト」は、誰なのか…。

連載です。 辻村深月を読むとどこか噛み合わない部分を感じるのですが、今回は特にそう。 主人公依田いつかは、作中のかなり早い段階で自分が今いる世界が「過去」であることに気づく。 気づくのだが、表立って驚いたり焦ったり訝しんだりはしない。 あくまでも彼の中だけで静に時をやり過ごしていく様子は、ちょっと私にはない反応で、「タイムトラベル?を辻村深月が書くとこうなるか…」とちょっと新鮮。 新鮮だけど、なんかちょっと納得いかない気も…。

後半部分は、いわゆる「タイムトラベル」の検証をしてます。 私は詳しくないけど、そゆ人でも読めるように作ろうとしているみたいです。 ただ多分、描きたいのは本格的なタイムトラベルではなく、「死んでしまったクラスメイト探し」なんだと思います。 それをクリアするための時間移動なんじゃないかなと予想中です。
    →関連過去記事 『ぼくのメジャースプーン』の感想



<まとめ>
長年買ってますが、今号の気合の入り方は尋常じゃないです。 普段購入しない単行本派の方にも、これはオススメ。 あと、来年の講談社BOX大河ノベルに島田荘司が参戦するっていうのが本気でスゴク楽しみです!!

<関連サイト様>
●この本を買う・・・Amazon 
●講談社ノベルス公式サイト・・・『講談社ノベルス』


 

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