『ぼくのメジャースプーン』の感想

『ぼくのメジャースプーン』 img20060428.jpg
辻村 深月 講談社ノベルス 2006.4.6 ?970
 



<ご紹介>
講談社のメフィスト賞作家・辻村深月の第4作目。
ちなみに、今作は、『子どもたちは夜と遊ぶ』からの派生作品でもあります。
彼が、あの時あのセリフをどういう気持ちで言ったのか。
気になる人は読んでみるのも良いかもしれません。
  前作『凍りのくじら』についてはこちらからどうぞ



<あらすじ>
ずっと知らなかったけど、小学4年生の「ぼく」の声には「力」がある。 
大好きなふみちゃんにピアノを頑張って欲しくて言った言葉には、その「力」が宿っていた。 
だからふみちゃんはぼくの言う通りに動いたんだ。 
それが、ぼくの「力」に気づくきっかけだった。 
その後、学校で飼っていたうさぎが殺される事件が起きる。 
ふみちゃんの感情も殺されてしまった。 
動かないふみちゃんを見てぼくは誓う。 7日後、犯人に、この「力」を使うことを・・・。



<感想>
辻村深月の文章は、今日もやっぱり物悲しい。
正直、第1章を読んでいる辺りでは、ちょっとほっとしていた。
「今回の作品は、今までよりは明るいかも」 と。
それが誤っていることはすぐに気づかされたけど、でも何というか読み手である私が
「どうか幸せに」と願ってしまうほど、彼女の描く登場人物たちはみんな、
優しくて不器用で生きることが苦手で。 どこか悲しい。
月の光のように不安定なその文章を、儚くて綺麗だと思う一方で、
「今度こそ明るい話を」と願ったんだけど・・・やはり、どこまでも辻村深月の世界でした。

この作品に「殺人」はない。 
でも、人は死ななくても、心が死んでしまった人はいる。 
命の失われたうさぎはいる。
それを許せず、罰したいと思う心もある。
殺人がないから軽いノリで読めるのかといえば、まったくそんなことはない。
むしろ生と死、罪と罰などをまざまさと見せ付けられる羽目になる。
しかもそれが、小学4年生の目線で綴られていると、痛ましささえ感じてしまうかもしれない。

ミステリでは当たり前のように、トリックを検証する文章がでてくる。
密室ならそれを打破するアイディアを。 
フーダニット(誰がやったか)ならアリバイ崩しを。
あぁでもない、こぅでもないと論じ合う姿が、実は私はあまり好きではない
(ミステリ好きなのにね)。
今作では、そういう検証に当てはめるべき文章に取って代わって挿入されているのが、
「ぼく」が犯人に対して使おうとしている言葉の検証。
つまりこの作品にでは、「ぼく」が最後に使う言葉こそがトリックになっている、ということだ。

ぼくと同じ力を持つ大学教授が、丁寧な言葉であっさりと論じ合っている。
例えば、「殺したり肉体を苦しめたりする以外の酷い罰には、どんなものがあるでしょうか」。
これは、教授が力の先輩として「ぼく」に諭しながら話す形態を取っているので見逃しがちだけど、
喋っていること自体は、かなり怖い。
淡々とさまざまな事例をあげて、どういう言葉(呪い)が一番相手に有効なのか、
そもそも復讐とはどういったものなのか、どういう方法で犯人に反省が促せるのかを
考えては消え、さらに論じては消えていってしまう。
結局、正しい解決や方法なんてない。 
その事実を積み重ねていく一連の流れが、とても怖い、と思った。

その過程を経て「ぼく」が選んだ言葉とは。
それまでの淡々とした雰囲気を一蹴するほどの熱い言葉と想いが交錯するラストは、
まさにミステリの骨頂。
メジャースプーンで量りたかったのは、何だったのか。
そして、何が量れたのか。
それは目安になったのか。
微々たるものしか掬えないはずのメジャースプーンで、それでも掬いたい何かがあって。
これは、そんな微々たる希望を掴むために必死であがく、とても切ないお話でした。


<こんな方にオススメ>
とりあえず、次何読もうかな?と思案中の方に、辻村深月はオススメです。
個人的には★★★★☆。


bk1にTBしました。
BP『Let's講談社』にTBしました。
img20060612.gif
 
『フォーチュンな日々(仮)』にTBさせて頂きました。

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