『凍りのくじら』の感想

img20051118.jpg『凍りのくじら』

辻村 深月
講談社ノベルス:2005.11発行





<紹介>
辻村深月のデビュー3作目は、初めての1冊読みきり型。
上中下の3分冊しかも3ヶ月連続発行という異例のデビューはまさにメフィスト賞っぽい邪道っぷりで(笑)、そこが気に入って以来ずっと買ってます。
一応ミステリ路線なんだけど、謎というより、この先にある悲しい出来事を
ちらちらと見せることで臨場感を出すような書き方をする気がします。
「何かある? 隠されてる? 何かあるんだ!? …やっぱりあった!!」
…みたいな感じで、明確な謎はなし
でもこの「何かある」という段階の描き方が、刹那的というか痛々しいというか…、
回りくどいところもあるのですが、女性作家苦手な私も惹きこまれてしまう何かがあるのです。



<あらすじ>
芦沢理帆子は新進気鋭のカメラマン。 「光」のある作品を撮ることで名を知らしめるようになったが、理帆子が「光」を描くには理由があった。 病気をかかえる母と不器用な関係を続けていた、友人の中で自らの不在感をぬぐえずにいた、恋人と別れた、そして、別所あきらと名乗る青年に出合った、高校2年のあの夏。 そこから始まったいくつもの悲劇の中で、理帆子が体験した「光」の瞬間とは…?


<感想>
辻村深月は、波のよう。
凪いだり荒れたり、不安定な高低さをくりかえしながら、ゆらゆらと揺らめく。
その感情の波は、迷いながらも寄せては返す動作を続け、最終的には私たちの待つ浜辺へと辿りつく。
そのたどたどしさを、私は決して嫌うことはできない。

例えば、冒頭のくじらの件だけで泣けてしまった私はアホですか(そうかも)。
流氷に挟まれてしまったくじらが身動きがとれず、順々に死んでしまう。
下手すればこの一文で表せてしまう悲しい出来事が、辻村深月の手にかかると本当に痛々しいまでに身に迫ってくるのだ。
なんでいつもこの人の文章はこんなに痛々しいのかな。
若尾が壊れていく過程とかは、絶妙なまでにリアルです。 怖。

理帆子が現実に対して感情移入できない自分を、
「大切な感情は創作の世界から教わった。自分が経験する前に本であらかじめ知っていた
と分析しているのですが。
これって私にも、共感度大、なんですよね…。
ホント、客観的に見ても、めちゃくちゃ嫌なヤツですよね(笑)。
同じ読書好きの女性像でも、北村薫の描く『私』のような爽やかさはここには皆無。
でも理帆子はそんな自分に「不在」感を持っていて、息苦しく思っている。
結局ストーリーとしては、そこからどう変わっていくか、ということになります。

そのキーマンとなるのが、別所あきらと、松永郁也の存在。
確かに理帆子はあきらと出会って癒されて、変わっていく。
のだけど、どうにも薄いんですよね、あきらの存在感が。
そこをもっと描かないとせっかくの『謎』が引立たないのでは、と思います。
実際、彼の『謎』は早い段階から分かってしまうし、分かってしまうからこそ濃く描いて欲しかったかな。
そうしないと、理帆子が郁也に感情移入していく様子がちょっと唐突に思えてしまうのです。
そこだけ残念でした。

でも理帆子が見た「光」は、多分本当に尊いもので。
眩しすぎると何も見えないといいますが、理帆子にとって彼はそういう存在だったのかも。
(ん? もしかすると表記が薄いのはそのせいか? でもやっぱり、薄いと尊さは違うか)
藤子ワールドへのオマージュになりすぎず、辻村深月らしい世界観になっていてイイですね。



<こんな人にオススメ>
個人的に★★★★☆。
・裏表紙に「物語」と書いて「ミステリ」とルビが。そのイメージを共感できる方(抽象的…)。
ドラえもん大好き!!な方
分類的にはミステリですが、二時間ドラマ的なミステリーや本格ミステリじゃなきゃ駄目!!という方には、向かないかも。



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