『アネットと秘密の指輪 お嬢様と湖の告白』の感想

お嬢様と湖の告白
『アネットと秘密の指輪 お嬢様と湖の告白』

雨川恵
(イラスト・風都ノリ)
角川ビーンズ文庫
平成22年3月1日 初版発行/¥476+税






「ところでお嬢様、僭越ながらまた一つ、お聞き届けいただきたいお願いがあるのですが」
しまった、余計なことを言うのではなかった。 立ち上がったリチャードが、例の、言葉こそ丁寧だが有無を言わせない調子で言いかけたので、アネットは思わず身構える。
「な、何でしょうか」
「ご足労をおかけしますが、あちらの寝室まで移動していただけるとありがたく存じます。 ―― 今日はもう、お休みください」
だが、返ってきたのはそんな優しい 『お願い』 だった。 手を取って彼女を立ち上がらせ、寝室の扉を開けてくれるリチャードを見つめながら、アネットはようやく気がついた。
―― リチャードが、一緒なら。
ロンドンでも、この城でも、他のどこでも ―― そこが自分の、帰りたい場所なのだ。


<ご紹介>
貧民街出身でありながら女伯爵になってしまったアネットが、大好きな執事・リチャードの 「秘密」 を守ろうと奮闘する物語の第6段。 今回はインターバル的なお話です。
リチャードがまた屋敷に戻ってくれたことが、アネットは嬉しくて仕方がない。 一世一代の告白を見事にスルーされてたことをちょっとだけ寂しく思いながらも、彼のいる生活を満喫していた。 そんなある日、アネットは屋敷の前で倒れていた少年を保護。 少年が陳情する事件の解決のため、遠い領地に視察に赴かねばならなくなったけれど、何とリチャードが同行を申し出てくれた!! 思わぬバカンスに喜ぶアネットだけど、リチャードの内心は、実はいろいろ複雑で…?


<感想>
ちょっとどうしようっ!? リチャードが、可愛すぎる……っ!!(笑)  アネットから貰った 『好き』 の言葉にずっと囚われて、あーでもないこーでもないと悩む姿に悶えました。 だってあのリチャードが!! フィンやユージンにヤキモチを焼いたり。 アネットが孤独にならないように同行を申し出ておきながら、内心で言い訳したり。 挙句の果てに、アネットがケーキを 『好き!』 だと言うのを聞いて、 『なら確実に自分よりケーキの方が好きだ』 って落胆するとか、破壊力ありすぎです(笑)。  いや、ケーキと張り合うのはおかしいだろうとツッコミつつも、彼のアンテナが確実にアネットへと伸びているのだと伝わってドキドキしました。  「主人と使用人」 の線引きが崩れつつある言動 (『…でしょうね』 と慇懃さを欠いたりする) からも彼の葛藤が見て取れますよね。 そんな風にさんざん悩んだりイライラした結果、ちゃんと自分で 「答え」 に辿り着いたリチャードに、ずっとニヤニヤしっ放しでした。 堪能したーw


お話としては、リチャードの 「秘密」 を巡るシリアス展開はちょっと休憩。 地方の領地で起きたささやかな事件を巡る中休み的なもので、リチャードと二人でバカンス!と喜んだのも束の間、馬車の御者席にまで羨望するほど(笑)二人きりになれなくてもどかしさをかみ締めるアネットが最上級に可愛いかったw  相変わらず他人を放っておけないお人好しなアネットが、これまた相変わらずの 「人を見る目のなさ」 を発揮して事件を曲解していくドタバタ加減に、前述したリチャードとのラブ話が挿入されるので、楽しく読むことが出来ます。 楽しいといえば、このシリーズは風都ノリさんが描く可愛らしい表紙もその一つなんだけど、今回明らかにリチャードの表情が柔らかいですよね。 目線がアネットを追い、しかも微笑んでる。 しかもその表情をアネットが見ていないというすれ違い様が本編中のギクシャクの原因だと思われる(笑)。 そんな二人を見守るユージンという構図も良くて、もうホント、風都さん素晴らしいですw


今回、ある意味物語の根幹だった、家令・マクレーンの謎めいた行動。 その裏にはホロリとさせられる信念があって、アネットは本当に周りの人に恵まれているなぁとしみじみ思いました。 リチャード然り。 ユージン然り。 特に今回感じたのは、アネットが発した 『信じる』 という言葉。 これを最初に彼女にくれたのは、ユージンなんだよね。 1作目で、損得関係なく 『信じて欲しい』 と言った彼の言葉を、当初アネットは受け入れられなかった。 それが、いろんな人と触れ合う経験を重ねて、前作でやっと全幅の信頼を返すことが出来た。 ユージンの気持ちを信じることが出来た。 そうやって信頼を交わす大切さを実感したからこそ、何も話してくれないリチャードに 『信じるということは、そういうことだ』 と思いきれたり、マクレーンに 『信じ欲しい』 と気持ちをぶつけることが出来たんだと思う。  ラストでユージンが王太子に断言したことからも (潔くてカッコ良かった!) 、 彼もアネットと同じ気持ちでいることが分かって、つくづく良いコンビだよなーって嬉しくなりましたよw


ただ当然のごとく、リチャードの存在はアネットを脅かすし、アネットへの職務と友情からユージンが巻き込まれるし……と、今後の波乱の展開は必至。 それでもアネットはリチャードを好きなんだろうし、ユージンはアネットを守るんだと思う。 ここは揺らがないはず。 問題は、ユージンの 「家」 と、リチャード自身じゃないかと危惧してるんだけどどうかな。 王太子の圧力からアネットを守るために政略的結婚話が…なんてこともありそうだし、いやでもローズウォール家は旧家を嫌ってるから逆に縁を切られるなんてことも…とか、何より、せっかく今回アネットへの想いを自覚したリチャードが、自分がいなくなれば…と得意のマイナス思考(笑)を発揮しないとも限らない! と、勝手に先走って悩んでおります(笑)。 うぉぉ、次回も楽しみ!!


あ、一つだけ編集サイドに苦言! あのですね、帯でネタバレは止めてくださいホントに…(泣)。 あそこを引用したいのは分かるんだ。 分かるんだけど、あれはリチャードが散々悩んてるのを傍で楽しく…じゃなかった(笑)、ドキドキしながら読んだ後にこそ堪能したい一文だと思うんですよね。 ただでさえサブタイトルが 『湖の告白』 で、一体どんな告白があるのかとウキウキしてたのに … 本編に何の不満もないだけにより残念でした。 




●Amazon  表紙イラストはどれも可愛くて大好き!
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>emkさん

emkさんこんにちは!! コメントありがとうございました。

私の大好きな『アネットと秘密の指輪』シリーズを読んでみようと思ってくださって、そして、見事にハマってくださって(笑)、本当にありがとうございます!!
日頃読まないジャンルに手を出すのは結構勇気が要ると思うので、私なんぞの感想でこの作品を知ってもらえたことが、すごく嬉しかったですw

>最新刊まで読むと、アネットの成長が感じられますね。

そうなんですよねー。 アネットとリチャードの恋模様は至って牛歩なんですけど、アネット自身の成長はかなりきちんと描かれていると思います。
特に、「他人」との触れ合い方が、どんどん上手になってますよね。 深みが増しているというか。
仰るとおり、アネットが自分で感じ、考えてきたことが、今彼女の中で実を結んだんだろうと思います。

「人を見る目のなさ」はもはや、成長とは別の次元で、変わって欲しくない彼女の「美徳」ですよね。
今回のように、人を疑うことでややこしくなるくらいなら、彼女らしく人を信じてややこしくなった方が断然良いものw
アネットを見ていると、そんな風に感じてしまいます。 私、彼女が大好きだなぁ!

>リチャードの変化にも思わずニヤニヤしてしまいます。

ついにここまで来たか!と嬉しくなりました(笑)。 私もニヤニヤしっぱなしでしたよw
「肩を抱いとけ」には大賛成です。 いつかそんな日が来るといいなぁ~。

>きっと読んでいる方が胃が痛くなるような辛いこともあるのでしょうが

そうなんですよね・・・雨川さんご自身も「どう考えても辛い」みたいなことを書いてましたし、今後の展開は決して優しくはなさそうです。
でも本当に、幸せになって欲しいですよね!!

大好きな『アネット』のお話が出来て嬉しかったです。ありがとうございましたw

ハマりました!

りるさん、こんにちは。いつも楽しく拝見させていただいています。

りるさんの感想を読んで気になったこの『アネット』シリーズですが、「ラノベに手を出していいのだろうか…」と躊躇していましたが、思いきって手を出してよかった!
オススメどおり(?)、「ザ・ビ」まで注文して、一気に読破してしまいました。

読み始めはラノベならではの設定と展開にちょっと距離を感じていましたが、いつの間にか引き込まれて、アネットと一緒にドキドキしていました。

最新刊まで読むと、アネットの成長が感じられますね。
「思い立ったら即行動」とか「人の見る目のなさ」とかは相変わらずですが(笑)、相手のことを思うとき、その考えに深みが増してきた気がします。きっと、いろんな出来事の中でたくさんの人と触れあう度に、いつも自分の頭で考えて、そして相手の気持ちを受け入れてきたからなんでしょうね。

リチャードの変化にも思わずニヤニヤしてしまいます。
「いえ」という言葉と一緒に微笑まれたら、アネットじゃなくてもドキドキしてしまうって!そして見張り台の場面では、「そこは遠慮せずに肩を抱いておけよ!」と突っ込みたくなりました(笑)

これからの展開がすごく気になります!きっと読んでいる方が胃が痛くなるような辛いこともあるのでしょうが、最後はリチャードと「二人で」幸せになれますように…
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