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有川浩 『シアター!』 の感想

有川浩『シアター!』
『シアター!』

有川浩
メディアワークス文庫
2009年12月16日 初版発行/¥610(税込)





「相談する時間が必要なら外に出てるぞ」
「……いい」
巧が我を張る顔になった。
「シアターフラッグの主宰は俺だから」
「よし、言ったな」
言いつつ司は巧の前に札束を叩きつけた。
「今日から俺が債権者でシアターフラッグが債務団体だ。 今から二年で返せ。 劇団が上げた収益しか認めない。 ――返せなかったらシアターフラッグを潰せ」
全員が息を飲んだ。 司はせいぜい意地悪く笑った。
「黒字が出せる劇団になるって話だったな。 たった三百万、二年で返せないならプロになんかなれるわけがない」



<ご紹介>
2009年12月に創刊されたメディアワークス文庫の創刊ラインナップの内の一作。 赤字続きな小劇団の主宰者 (弟) たちと、それを立て直すことになった債権者 (兄) との奮闘を描く、大人青春劇です。
シアターフラッグは、軽快かつ分かりやすい作風でそこそこの人気を博してきた小劇団。 常に赤貧、けれど主宰である春川巧たちは楽しくやっていた。 そんなシアターフラッグに、ある日、押しも押されぬ人気声優からの入団希望が舞いこんだ。 彼女の名前は羽田千歳。 演技のプロの心に自分達の芝居が届いたのだと気付いた巧は、それまでの劇団の方針を転換する。 けれどその決定が団員の不和を招き ―― 気付いたら、300万円の借金まみれ!! 困りきった巧が頼ったのは、演劇とは無縁で厳格な兄・司。 司は借金の申し出を受け入れるが、その 「条件」 は驚くほど厳しいもので…!? 目指すは黒字の出せる小劇団。 団員達の奮闘が、今始まった ―― !!


<感想>
目的が明確な物語であり、さらにそこに向かってぐいぐいと展開していくので、読んでいてとても爽快でした。 心理的・職業的な劣等感なども描かれていたけど、そこは主役である司さんの現実的な思考があっさり救ってくれるので、カラっとした雰囲気。 物語の主体となるシアターフラッグの作風は、千歳ちゃんいわく 『演劇を見慣れていない人でも気軽に楽しめる分かりやすい舞台』 だそうだけど、この作品もまさにそんな感じでした。 気軽に読めて分かりやすい。 楽しかったです。


このお話は、何と言っても司さんがカッコイですね!! 彼がやりたいのは劇団の建て直しではなくて、演劇という不安定な世界から弟・巧を引き離すこと。 執行猶予として2年間用意したのも、全力でやってダメなら人は初めて諦めることが出来ると考えているから。  私も正直、巧さんが言うように、劇団って 「やり甲斐だけで回ってるような世界」 だと思ってました。 ―― でも。 司さんはそれを甘えだと糾弾し、糾弾したからには恥じないように邁進したわけです。 出費を抑える方法や他者へのアピールのやり方まで、手を変え品を変え繰り出される緊縮財政の素晴らしさには、 「もしかしてこれはビジネス書なのか!?」 と思わずツッコミいれたくなるほど(笑)。 その実践力にホント感動でした。


実際、その方策が功を奏して収益をあげたときの皆の喜び方をみていると、司さんのやり方は、シアターフラッグにとっては正解だったんだろうな。 司さんが口を開くたびにシアターフラッグ全員の気持ちがまとまっていく過程に、ドキドキしました。 巧は千歳ちゃんこそを天から降臨してきた存在だと思ってるけど、実は司さんこそがそうなんだと思う。 持つべきものは、ブラコンの兄ってことでしょうか(笑)。 個人的には、その千歳ちゃんと司さんとのラブをもっと見たかったという不満がちょっとだけあったりするんだけど……だって、有川作品に期待したいところでしょう!? (断言・笑)  でも、 「大人のやり方」 で千歳ちゃんにブログを始めさせるやりとりなど、ニヤニヤ出来る部分も多かったけどねw 1巻で綺麗にまとまってるけど、もし続きがあれば、そこを一番に期待したいです。


もう一つ面白かったのは、ところどころで展開される演劇論…というか、 「エンタテインメント論」 の部分。  『分かりやすいエンターテインメントを目指す劇団は、どこもなかなか評価されない』 これって、演劇に限らずよくありがちな意見だよね。 そして何となくだけど、実際に有川作品にも突きつけられている評価なのかなって想像してしまいました。 有川作品って軽妙な語り口で突飛なシチュエーションとベタなお約束を描くところが魅力だと思うんだけど、確かに決して 「重み」 のあるものではないもの。 


でもね。 ちょっと凝った設定って新鮮だし他の人には成し得ないし、確かに価値ある発想なのは間違いない。 けれど、素直でまっすぐな分かりやすさを、そのままの持ち味で伝えることも、実は結構難しくて大切なことだと思うんです。 分かりやすい面白さは、薄っぺらいこととは絶対に違う。 有川さんの作品が私(たち)の心を摑むのも、軽妙さのなかにきちんと深みがあるからだもの。  『分かりやすいエンタテインメント』 を私は愛しているので、千歳ちゃんの気持ち、すごく身近に感じました。 シアターフラッグの演目、私もぜひ、見てみたいな。



●関連記事 
<『図書館戦争』シリーズ感想一覧>
『図書館戦争』 ⇒『図書館内乱』 ⇒『図書館危機』 ⇒『図書館革命』 
『別冊図書館戦争1』 ⇒『別冊図書館戦争2』 
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<他作品感想>  
有川浩作品感想一覧  
「その他アニメ」カテゴリにアニメ版の1話ごと感想もあります



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No title

>イチさん

イチさん、初めまして! コメントありがとうございますw
『シアター!』の検索でここを覗いて貰えて嬉しいです。

>私は単純に主人公は巧だと考えていましたので。
いや、私も巧が主人公だと思いますよ(笑)。 ただ、司さんも主人公だと思います。 
こういうのって一人決めないといけないものでもないと思うし、もし一人だとしても、その人が一番心を傾けられた登場人物にその称号をあげて良いと思うのでw
イチさんの中では巧だったんですね。 彼もすごく魅力的でした☆

>本当にいきなりすいません。
全然平気です。 というか、むしろ嬉しいですよ? どうかそんな恐縮なさらないで!!(笑) なので、削除なんてありえません!

>これからもちょくちょく通わせてもらおうかな・・・。
もし良かったら、また来てくださいね。

>ご存知かも知れないし、おせっかいかもしれませんが、来年春にシアター!第二巻が出るそうです。
全然知らなかったー!(笑) そうなんだ、イチさん情報ありがとうございます! りるはこの手の情報には本当に疎いので、またいろいろ教えてくださいねw ありがとうございました。

いきなりごめんなさい。

いきなりごめんなさい、初めまして。
イチと言います。

シアター!の検索をしたらすぐにこのブログが出て来たもので、つい覘いてしまいました。
りる様の感想通りだな、と思いました。でも司が主人公だという考えはあまり私にはなかったので、少し新鮮でした。私は単純に主人公は巧だと考えていましたので。

本当にいきなりすいません。
何事か!?って思いますよね。見ず知らずの(当たり前か)人間がコメントだなんて。
でも何だか好きになっちゃったみたいなので、これからもちょくちょく通わせてもらおうかな・・・。

嫌だったり気持ち悪かったら即削除をお願いします!
では。


P.S.
ご存知かも知れないし、おせっかいかもしれませんが、来年春にシアター!第二巻が出るそうです。
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