有川浩 『ラブコメ今昔』 の感想

有川浩『ラブコメ今昔』
『ラブコメ今昔』


有川浩

角川書店
平成二十年九月五日 四版発行/¥1400(税別)




「今村二佐ッ!」
呼び止めた声の鋭さに振り向くと、千尋が今村に向かって立ち上がり、敬礼をしていた。
「貴重な訓辞を頂きましてありがとうございました!」
この娘も自衛官だな。 ――まだまだ卵だが。
そんなことを思いながら、今村は肩越しに手を挙げて部屋を出た。
(ラブコメ今昔)



<感想>
『野生時代』 で発表された5編と書き下ろし1編から成る、自衛隊ラブコメシリーズ第2弾です。 古本屋さんで運命の出会い (=半額での購入) をしてから早数ヶ月。 やっと読めました!! いや、読もうと思えばいつでも読めた気がするんだけど、有川作品の未読在庫が減ってしまうのも悲しいので、ちょっと自分自身に焦らしプレイを仕掛けてたんです(笑)。 そうしてるうちに私がちょっとした読書恐怖症にかかってしまったのですが、この作品は素晴らしいリハビリ相手になってくれました。 ありがとう!!

全6編は、どれも自衛隊員が主要人物になるお話です。 もっと言うと、自衛隊員の 「恋」 と日常生活を描いたものばかり。 ちょっと特殊な職業であることは間違いないけれど、そんな中でも恋は平等に訪れる訳で、感じる喜びや切なさにはただただ共感でした。 日頃馴染みの少ない自衛隊を知る面白さと、馴染みまくりの恋愛話が職業的制約ゆえに一変する面白さ。 両方堪能できるなんて贅沢ですw  そしてさらに、自衛隊員たちの国防に対する意識に触れる度に、胸が熱くなりました。
以下、各話の感想です。




『ラブコメ今昔』
「古き良き日本男子」 な鬼上官・今村に対して、奥様との馴初めという超私的なことを広報誌に載せようと奮闘する新人・千尋ちゃんとの攻防戦を描いたお話。 今村は明らかに仕事とプライベートを分けたいタイプだし、千尋は千尋で自衛官の結婚について真面目に考えた故の突撃なので、信念に基づいてる分両者一向に引かず、それ故に娘ほども年下の千尋に翻弄される今村の反応には笑いっ放しでしたw

それにしても、千尋ちゃんの粘り強さは同じ社会人として憧れます。 図々しいくらい相手の懐に飛び込む度胸は、翻せば、高いコミュニケーション能力があるってことだもの。 私に不足してるのはそれなんだよなぁ…(羨)。 吉敷は吉敷で、しれっと飄々とした性格で今村からの責めをやり過ごすところがまた面白い。 千尋とは案外いい感じなんじゃないかと思ってたら ―― あのラスト!!  イイなぁこの二人。 こんな絆、良いな。 「自衛官同士の結婚」 に対する今村の意見はとても厳しく、私も最初はピンとこなかったけど… 『秘め事』 を読んだ辺りではきちんと認識できたと思います。 そういうことであっさり命を落としかねない職業なのでしょう。 今村と 「喜ばせてあげたくなる奥様」 との馴初めの可愛らしさ (漬物話には爆笑でしたw) の裏側に、こんな覚悟があったなんて。 改めて、自衛隊という特殊な職業に興味を深めたお話でした。


『軍事とオタクと彼』
新幹線の中で出会った年下の自衛官との恋人未満の関係、距離が縮まらないのは遠距離だから?それとも… というお話。 1話目とは違って自衛官と一般営業職女性との恋愛話で、どことなく他人事ではないお話でした。 …いや、むろん私が 「彼」 側だからです…(笑)。  

それにしても、新幹線での出会いは最高に素敵ですね!  これに小柄、年下、笑顔が可愛いと揃ったら私も確実に落ちますよ (←好み・笑)。  多少の下心はあったとはいえ、根本は 「自衛官だから当り前」 だと言い切れる彼の意識の高さゆえの行動なんだもの、素敵です。 命を左右するような遠距離恋愛中だけど歌穂ちゃん頑張ってるな、プリプリ怒ってるけど何とか大丈夫なんだな… って、私も勘違いしてました。 彼女の性格がアクティブだからそう見えたけど、全部彼の演出だったなんて!! …ラストは幸せ一杯で、こちらまで嬉しくなりました。 弟くんとも良い義兄弟になれそうだしねw


『広報官、走る!』
テレビドラマの撮影に協力することになった自衛隊、その広報官とテレビ局ADさんとのお話。 自衛隊員だろうがADだろうが社会人であり、職業は違えど職責に違いはないんだという、ものすごく 「お仕事!」 な展開が、同じ社会人としていろいろ身につまされるものがありました。 この話ばかりは、恋愛小説ではなくお仕事小説として楽しんだ感じ。 だって私の身近な知人にも元ADさんがいるから、鹿野さんの苦労が他人事じゃないんだもの。 王様みたいな人が普通にいる世界だよ、と言ってました。 さぞかしご苦労が!! ドタバタの最後は政屋さんがとりなして収束しただけなので見せ場としては物足りなかったけど、実際の仕事ってそんな感じなのである意味リアリティ。 そして何より、鹿野さんがきちんと 「謝る」 ために電話をしてきたという姿勢にやられました。


『青い衝撃』
自衛隊の花形、ブルーインパルスのパイロットを夫にもつ妻の苦悩を描いたお話。 これは途中、読んでてスゴク辛かったですー…。 妻だけが気づくように内襟に手紙を仕掛ける横恋慕女の、何と恐ろしいことか。 そして、何歳になっても、好きな男と結婚しても、自分の 「女」 としての価値を考えつづけてしまう 「女の性」 の、何と恐ろしいことかっ。 私も一応女の端くれなので、その狭間で不安を募らせる公恵ちゃんの気持ち分かる …… 胸が締め付けられて、ずっと苦しかった。 なので、紘司さんが告白した時の想いを伝える場面では、その緊張が一気に解き放たれましたよ!!  苦しさ同様、安堵した公恵ちゃんの気持ちもすごく伝わってきて嬉しかったなー。 『ラブコメ今昔』 の時も感じたけど、後顧の憂いを残さないような相手を伴侶に選ぶ自衛官は、すごくカッコイイですね。


『秘め事』
上官の愛娘と恋に落ちてしまったけれど… というお話。 不器用だなぁ、と読みながら思ってました。 上官の娘に手を出す意味を分かりながらも止められない恋心も。 上官に内緒というスリリングな状況が恋心を加速させていく様子も。 そんな二人を応援してくれた友情を篤く感じているからこそ、間違ってしまった一言も。 そして、取り戻すには 「決闘」 しかないというまっすぐさも。 その不器用さを見せ付けられて、私、思いました。 こういう不器用さって、すごく好きだ!  だって、手島くんのそれは誠実さの裏返しなんだろうなって伝わってくるんだもの。  誠実でありたいのに、どうすればよいのか迷うのが人間なんだと思います。 生きることに全力を尽くす ―― その言葉の裏に秘められた 「覚悟」 も含めて、いろいろ愛しかったですw


『ダンディ・ライオン ~またはラブコメ今昔イマドキ編』
『ラブコメ今昔』 で活躍した千尋ちゃんと吉敷くんの馴れ初め編、書き下ろしです。 トキメキ度としてはこの掌編がこの本ではイチバンでしたw  何ていうか私、一目惚れってあると思うんですよ。 出会った時に感じるときめきって、単純に顔が好みだとかそういうことじゃなくて、その人の持つ雰囲気とか伝わってくるもの全部に惚れるってことだと思うんですよね。 だから千尋ちゃんが、吉敷という人物を何よりも雄弁に物語る写真で惹かれたのも、そういうことだと思う。  「その人らしさ」 を好きになったんだろうな。 千尋ちゃんのちょっと勇み足なアプローチからも、逸る想いを抑えきれないのが伝わってきて、すごく可愛かったです。
 
でもって私、 『不屈』 という副題を言って貰えた時の吉敷の幸福感、ホントに少しだけど理解できるような気がする。 私がブログに書いたこと、文書の裏側で感じていた想い… それに気付いてくれる人がいると、すごく幸せな気持ちになるもの。 千尋ちゃんが想いを受け止めてくれたことで、それまでの僻みが全部吹き飛んだ吉敷の変化も含めて、何だか私まで嬉しくなるようなエピソードでしたw



●関連記事 
<『図書館戦争』シリーズ感想一覧>
『図書館戦争』 ⇒『図書館内乱』 ⇒『図書館危機』 ⇒『図書館革命』 
『別冊図書館戦争1』 ⇒『別冊図書館戦争2』 
⇒『アニメ版DVD初回特典小説』1巻 ⇒2巻 ⇒3巻 ⇒4巻 ⇒5巻 
⇒白泉社コミック版『図書館戦争LOVE&WAR』1巻 ⇒2巻 ⇒3巻 ⇒4巻
<他作品感想>  
有川浩作品感想一覧  
「その他アニメ」カテゴリにアニメ版の1話ごと感想もあります

・感想拝読しました ⇒ 『粋な提案』様 『のんびりまったり雑記帳』


Loading...

ぁずさんへ

>ぁずさん

初めまして、ぁずさん! コメントありがとうございます。
私も有川さんの作品が大好きなので、コメントいただけて嬉しいです。

>初めてなので何か失礼なことを書いてしまったらすみません”(ノ><)ノ

大丈夫、失礼なことなんてありませんでしたよー。

>やっぱし誰かと語り合いたいナ♪

読書した後って、誰かと話題を共有したくなりますよね。 その相手先に選んでいただけて光栄ですw
私のつたない感想もほめてくれてありがとう! 

>図書館戦争はマンガの方で読んでいるのでまだ原作は我慢してるんです(笑)

そうなんですねー。 私は『図書館戦争』で有川作品を知って、そこから読み広げてます。 
『キケン』は持ってるけど、まだ読まずにとってあります。 ぁずさんはもう読まれてるんですね。 私負けてる(笑)。

>私はいつも有川浩さんの小説に出てくる女の子がだいすきです(≧∇≦)
>強硬ではなく柔軟な強さにいつも惹かれている気がします。

分かります!
もう、ものすっごく分かります!
女の子、本当に可愛いですよね。 でも、可愛いだけじゃなくて。 ぁずさんの仰るように、強さをあわせもつ女の子ばかりで、読んでてあこがれます。

もちろん、恋愛のドキドキも楽しめますよねっ。 有川作品は男性もカッコイイので、相思相愛になると本当にお似合いで、見てて嬉しくなっちゃいます。

>なんか勝手に語ってしまってすみません”(ノ><)ノ

いいえ! 楽しかったですよ。
宜しければまたお越しくださいませ。

ではでは。 りるでしたー。

はじめましてw

はじめましてwぁずと申します。
突然お邪魔してすみません(∋_∈)
私も有川浩さんの小説がだいすきなんです!
いつもは読んでも一人で浸ってるだけなんですが、
やっぱし誰かと語り合いたいナ♪
なんて思ってネット検索したらここが一番にヒットしたんです。

そして、読ませていただいたらとてもステキな感想がたくさん載っていたので、思わずコメントしちゃいました。

初めてなので何か失礼なことを書いてしまったらすみません”(ノ><)ノ


私は塩の街からハマって、自衛隊3部作、植物図鑑、キケン、レインツリーの国、クジラの彼、そして今回ラブコメ今昔を読破しました。
図書館戦争はマンガの方で読んでいるのでまだ原作は我慢してるんです(笑)

私はいつも有川浩さんの小説に出てくる女の子がだいすきです(≧∇≦)
というか理想なんです!
あんな恋愛してみたいってのもありますが、
みんな芯を持ってらっしゃるなってのをいつも感じます。
強硬ではなく柔軟な強さにいつも惹かれている気がします。


なんか勝手に語ってしまってすみません”(ノ><)ノ
感想を拝見していたらぜひお話してみたくなって止まらなくなってしまいました。

長々と続けて失礼いたしました。


ぁず

>遠子さん

コメントありがとうございますw
『ダンディ・ライオン』、よかったですよね!! ときめきっぱなしでしたよー。

人に惹かれるのって、その人の「人柄」だと思うのです。
その人の「人柄」が一番現れているのかが「個性」であって、ファッションだったり容貌だったりすることが多いけど、吉敷の場合はそれが「写真」で、その「個性」を見抜いてくれる人と出会えたことこそが素敵だなって。 なかなか見抜けませんよ。

>実は本名が千尋ちゃんと1文字ちがいなんですww

あら、素敵w 遠子さんと千尋ちゃんの出会いも「運命」ですね♪
私は、本名と一時違いの登場人物に出会ったことないです。 むしろ、平凡すぎるくらい平凡なので、現実社会には同姓同名がうようよいますけど(笑)。

ラブコメ今昔、いいです~


私もダンディ・ライオンにめっちゃときめきました。


一番好きww


運命みたいな出会いですよね


1歩1歩吉敷に近づいてゆく千尋ちゃんと一緒にどきどきしっぱなしでした。


実は本名が千尋ちゃんと1文字ちがいなんですww

それもあってか、なんとなく共感度の高い作品でした。

>藍色さん

こちらこそ、お返事ありがとうございましたw

>読んでいるこっちがうれしはずかし気分になって

そうなんですよね(笑)。
楽しくて可愛くてニヤニヤしっぱなしでした。
かと思うと、潔い覚悟もあって、いろんな意味でドキドキでした。

>心に染みるセリフがいっぱいあって

私も、何だかいろんなことを考えさせられたセリフがたくさんありました。
有川作品の魅力の一つですよね。
ありがとうございました。

TBありがとうございました。
いろんな自衛隊の方々の恋模様がいっぱいでした。
読んでいるこっちがうれしはずかし気分になって
自然と顔が緩んでしまいました。
心に染みるセリフがいっぱいあって、
ベタ甘で心地よかったです。

>suiさん

こんばんはw コメント+TBをありがとうございました。
こちらこそ、先日は突然すみませんでした。 いや、嬉しくてつい(笑)。

>流石、有川さんは読者のツボを分かっているなーと嬉しくなりましたw

そうなですよね。 痒いところに手が届くところがスゴイと思います。 あの二人は本当にお似合いでした。 そしてやっぱり、吉敷がお気に入りですw

>より彼らのひたむきさにぐっときました。

そうなんですよね。 恋愛をする気持ちは一緒なのに、そこに問われる覚悟はやっぱり少し重いものがあります。 そしてそれこそが素敵でした。 
今村の「厳しい」言葉には、頭が下がる思いです。

こちらこそ、本当にありがとうございました。 またよろしくお願いしますw

こんばんは。

お久し振りです。
先日はうちの方にコメントとTBありがとうございました。

「ラブコメ今昔」を読んで、もしこの二人が・・・と思ったらしっかりラストのお話で押さえてある。
流石、有川さんは読者のツボを分かっているなーと嬉しくなりましたw
千尋の粘り強さ、私も羨ましいです。

そして全編を通して感じること。
「明日が今日と同じように当たり前にくるとは限らない」
常に危険と背中合わせの自衛隊が主役のお話ばかりだから、より彼らのひたむきさにぐっときました。

こちらからも、TB送らせていただきますね。
また何かありましたら、よろしくお願い致します。
(とはいっても、最近なかなか読めていない私なのですが・笑)
Secret


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

ラブコメ今昔(有川 浩)

ラブコメ今昔(2008/07/01)有川 浩商品詳細を見る 自衛隊ラブコメ短編集第2弾! 「クジラの彼」に引き続いき、有川さんお得意(?)の自衛官...

ラブコメ今昔 有川浩

イラストレーションは徒花スクモ。ブックデザインは片岡忠彦。初出野性時代+書き下ろし。 「クジラの彼」に続く、自衛隊ベタ甘胸キュンラブ...

☆Web拍手ボタン

押して頂くとりるがハリキリます(笑)

☆カテゴリ

☆サブカテゴリ (タグ)

 

☆最新コメント

☆リンク(おすすめサイト様)

☆アクセスカウンタ

QRコード

QRコード

RSSリンクの表示

アクセス解析

関連記事Loader

[猫カフェ]futaha

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

☆検索フォーム

☆購読予定一覧

☆アニメDVDの人気ランキング

☆更新日カレンダー

プルダウン 降順 昇順 年別

07月 | 2017年08月 | 09月
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -


☆オススメ