古屋兎丸 『幻覚ピカソ・3(完)』の感想

古屋兎丸『幻覚ピカソ・3』

『幻覚ピカソ・3(完)』

古屋兎丸
集英社ジャンプ・コミックス
2010年6月9日 第1刷発行/¥571+税






「あとで見て。 私の 心の中よ」


<ご紹介>
絵を描くことが好きな葉村ヒカリ (通称ピカソ) は、幼馴染の千晶と河原で時間を過ごしていた時、突然の事故に巻き込まれてしまった。 一命を取り留めたものの、千晶は残念なことに死亡…… したはずなのに、ポケットサイズの妖精さん (?) としてピカソの前に現れた!! 彼女が言うには、ピカソも 「人助け」 をしないと体が腐って死んでしまうらしい。 その日から、人の心の闇を描き、その絵の中にダイブして悩みを解決するのがピカソの使命となった。 級友たちを渋々 「人助け」 をするうちに、内気だったピカソにも友達が出来始めたけれど、ある日、その不思議な力を杉浦くんに知られて絶交されてしまう。 頼みの千晶も見当たらず、傷心のピカソの目に、誰のものとも知れない 「闇」 が見えて…!?  ピカソ最後の 「心の絵」、 そこに込められた想いとは?


<感想>
1巻を読んだ時に 「こういう最終回を読みたい」 と思ったお話が、ここにありました。 というか、この最終話のために今までがあったというか。 正直、物語の展開としては中弛みもあったんだけど (2巻とか)、 その間に得た友情が最後の支えになることも含めて、やっぱり凄かった! ピカソ自身が目を背けている現実と向き合うには、ひとりでは辛すぎるのは分かってた。 それに、ピカソの背中を最後に押す役割が、千晶ちゃんであることも。 ある意味先の読める展開だったし、それを期待してもいたんだけど、期待以上の答えをピカソがくれたことが、こんなにも嬉しい。  誰かの悩みを渋々解決してたけど、人と関わることは面倒くさいだけじゃないって実感するピカソを見られて良かったです。


著者自身もあとがきで 「全2巻の予定ではまとめきれなくて3巻完結になった」 と書いているけど、確かに2巻で終わってたら、私こんなに泣かなかっただろうな。 こんなに 「ピカソ悲しかったね、でも頑張ったね」 って思わなかっただろうな。 ひとりじゃない環境が出来て初めて向き合えることって、あると思うのです。 それくらい最終話が本当に良くって、ずっと泣きながら読んじゃいました。  …まぁ、最後の最後にやっときたラブ展開が重大な要因であることは、ラブコメ脳患者としては仕方ないということで…(笑)。


この作品を通して何度も思い知らされたのが、 「絵」 の凄さ。 ピカソが描くクラスメイトの精神世界は、現実にはありえない幻想画で表現される。 それは緻密で、壊れそうなくらい不安定で、目を背けたくなるような残酷や諦念を含んでいるのに、いつもどこか綺麗なのが、私はすごく好きだった。 ピカソと千晶が、心の闇の中から一筋の「光」を探し出して友達を救う。 その 「光」 は美しいものばかりじゃなくて、ずっと隠しておきたかった醜い願望そのものだったりするけど、誰かが肯定してあげることで初めて輝きだす、そんな小さなものばかり。 そういうものを描いた絵が、どこか美しさを湛えているというのは不思議だな、嬉しいなって思うんですよね。 その中でも、ピカソが描いた 「最後の一枚」 は本当に格別。 ものすごく精密な機械が、ものすごく頑なな意思を持って動かないでいる様子は、絶対に現実を認めたくない!っていうピカソそのものだと一目で分かったもの。 彼の幼さの表れなんだけど、そういう頑なさって私は好きだ。 譲れないくらい、大事だったんだろうなぁ。


ピカソが最初に言っていた、 『目に見えるものしか描けない、だから 「心の中」 なんて描くことは出来ない』 っていうのは、間違ってはいない。 でも、自分の想いを口に出して伝えることは出来るんだよね。 それを級友たちが証明してくれたシーンは、だからとても大好きな場面です。 この幸せなシーンを誰よりも見続けていたかったのは、千晶ちゃんだろうな…と思うとこれまた寂しい。 だけど、寂しい中に光があるっていうラストは、彼が今まで描いてきた心の絵と同じきらめきがあって、どこまでも上手でした。  そしてそれ以上に、ピカソがどれだけ頑なになっても、千晶ちゃんの口先三寸であっさり操られてしまう二人の関係が、私は好きだったのかもしれないです。 ベタな展開だったけど、素敵なくらい切なくて、満足な最終巻なのでしたw


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>NKさん

コメントありがとうございましたw NKさんのコメントは内容の範囲が広いので、読んでて勉強になります!

>満足な最終巻ってことは決してバッドエンドではないですよね。

バッドエンド…の定義は分からないけど、私にとってはバッドではありませんでした。 清濁併せ呑む感じでしたけど、そこに希望があるのが良いです。
仰るとおり表紙の少年が主人公・ピカソです。 彼が穏やかに笑みをたたえていることからも、バッドエンドではなかったと信じられるかなw

>両親が親戚の人の名前や縁起のいい言葉も入れて・・・って感じでつけたそうですよ

そうなんだ! ちょっと変な形だけど、ピカソ(本物)の名前はご両親の愛の結晶だってことですね。 主人公が経験する不思議な出来事も、ヒロインのとある願いがこめられてるので、そういう意味でピカソと一緒だと考えるのも面白い視点かもしれません。 なるほどー。

>それにしても巻数が少ない漫画は珍しいですね。

そーですね、人気作家さんですし、あらかじめ短いスパンでの企画だったのだと思います。 無駄に長引かせない作りは歓迎したいし、実際、3巻くらいで丁度いいお話でもあります。 でも、文字が多いのと絵に見入っちゃうのとで、3巻しかないのに意外と読むのに時間かかりますよ(笑)。

>ちなみに、人は死ぬと妖精になるという言い伝えがあるそうですよ

ケルト神話ですよね。 私もケルト神話好きなのでちょっと読んだことがあります。 ただ、この作品を読んでたときは思い浮かばなかったですねー。
バレエ「ジゼル」は知らなかったので、教えてもらえてよかったです。
ありがとうございましたw

おお、これは興味深い内容ですねぇ。今ネットでいろいろ調べてみました。この表紙の人物は主人公ですよね。なんかいかにも、ハリー・ポッターって雰囲気ですね。
満足な最終巻ってことは決してバッドエンドではないですよね。

ピカソといえば超有名なスペインの画家ですが、この人の本名すごく長いんですよ・・・。両親が親戚の人の名前や縁起のいい言葉も入れて・・・って感じでつけたそうですよ。
簡単にいえば落語の「じゅげむじゅげむ」↓状態ですね(笑)。
http://www2.odn.ne.jp/~nihongodeasobo/jugemu/jugemu.htm
また、戦争を描いた「ゲルニカ」はピカソの作品の中でもっとも有名な絵だと思われます。

おっと、話がちょっとそれてしまいました。
それにしても巻数が少ない漫画は珍しいですね。たいていの漫画なら短くても10巻前後ですよね。
3巻ならあっという間に読み終わりそうですね。
あと、3巻で終わる漫画といえば「マンホール」ですね。内容は刑事ドラマ的な感じです。「マンホール」もおススメですよ。

ちなみに、人は死ぬと妖精になるという言い伝えがあるそうですよ。おそらくこの漫画の元ネタの一つかもしれません。
その言い伝えについてはこちら↓に書かれています。
http://www.jiten.info/dic/spriggan.html
妖精になる対象(?)の人間は地域によってさまざまですね。
バレエ「ジゼル」の主人公も死後は妖精に生まれかわりました。

長文失礼しました。

>bonoさん

実況ありがとうございました!(笑)
っていうか、行動早い! さすが過ぎます師匠っ。

>GPSとISBNで

それ、私も思います! ここまで来たのにない、っていう経験は書店が一番多いですもの。
時間があるときはその出会いも楽しいんですけどねー。 23時にやりたくないですよね(笑)。
っていうか、今週もお疲れ様でした!

>bonoさん

コメントありがとうございますw

>すげえ、書評だ・・・。

すげくない、すげくない(笑)。 嬉しいけど何かくすぐったいー。 ただの感想ですしね。
2巻の中弛みがもったいないくらい、3巻は良かった。 この結末が見たかった、っていう。
古屋兎丸の絵ありきな設定とか、強みが生きてましたよ。

大垣書店
売ってねー。
一番近場で23時までやってる本屋が。
GPSとISBNで最も近場で売ってる書店を
検索できたらいいのに!!!

すげえ、書評だ・・・。
久々に、影響受けて買おうかと思います。
信頼の「りる」印。
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