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有川浩 『フリーター、家を買う。』の感想

フリーター、家を買う
『フリーター、家を買う。』

有川浩
幻冬舎
2009年8月25日 第1刷発行/¥1400+税





「よしっ」
誠治はワードを立ち上げて、開かれた新規ドキュメントに文章を打ち込んだ。 極太のフォントで拡大し、プリントアウトする。
『目標 : 就職する。
      金を貯める (当座の目標、百万)』
打ち出されたA4用紙を見ると少し気恥ずかしくなった。 まるで小学生の夏休みの目標みたいだ。
だが、こういう気恥ずかしいけじめが自分にはきっと必要なのだ。 その用紙を目出つように壁に貼り付ける。 何となく気合が入ったような気がした。



<ご紹介>
日経エンタ丸の内officeにてWeb連載された本編に、書きおろし後日談 (短編) を収録。
二流大学を卒業後、入社3ヶ月で自主退社してしまった武誠治は、アルバイトを繰り返すフリーター生活に突入。 駄目すぎる自分の姿から目をそらし続けたある日、今までのツケを一気に払うような出来事が降りかかる。 『ごめんなさいごめんなさい今日も死ねませんでした…』 虚ろな言葉を繰り返す母は、重度の鬱病に罹っていた…!!  二十年間に渡る町内からのいじめを誠治に隠し通した強い母。 同じ家に住みながら気付くことも出来なかった不甲斐ない自分。 ―― ここは一念発起だろ!  精神病に理解のない父と初めての看病への戸惑い、そして難航する就職活動に、誠治は傷だらけになりながらも立ち向かう。 「カッコ悪すぎな俺」 の成長記です。


<感想>
あぁもう、痛い。 本当に痛い。 誰が痛いって、私が、だ。 誠治と同様に一度就職に失敗した (氷河期だったのです) 私としては、身に詰まされる部分が多々ありました。 就職出来ない自分に確かに感じていた不甲斐なさや焦りが、アルバイトをすることで日銭が入る安心感や気楽さに変貌してしまう、逃げの気持ち。 そういうの、私も知ってる。 でも誠治は家のため家族のために、私なんかよりもの凄い早いスピードで大人になったのが凄い。 自分のどこが駄目なのかも分からないような駄目だった男が、どんどん変わっていく…… 「そんなカッコ良さ、どこに秘めてたん!?」 と目が離せなくて、結局一気に読んじゃった。 面白かったです。


お話の軸としては二つあって、一つは母親が精神病を患ったことで顕著になった家族不和や、陰湿な大人のいじめという 「家族」 の問題。 もう一つは、どうしようもないフリーターだった誠治が直面する 「就職」 の問題。 この二軸は誠治を中心に密接に絡み合うんだけど、物語の冒頭から両者を誠治に突きつけて、どん底からスタートさせるところが容赦ない(笑)。 最初の家族ゲンカなんてめっちゃ怖かったもん。 何が怖いって、毎日一緒に暮らしてたのに何も見えてなかったという 「現実」 が恐ろしいのです。 だからこそ、その現実を見抜けない不甲斐ない自分と決別したい… というストーリーが明確で、とても有川さんらしい仕上がりだったと思います。


『親の顔が見てみたい』 なぁんて言われちゃう最低な自分。 でも、その言葉が誠治を奮い立たせたのも事実なんだよね。 母のためにやっとの思いで立ち上がって、一歩ずつ真っ当な道を歩み始めたら、今度は自分の父親がダメな人間だったんだと見えてしまう ――。 私は自分がファザコンのマザコンのシスコンなので (最低だな!・笑)、 父を軽蔑しなければならない誠治の痛み妙に共感してしまい、ショックを受けました。 それって耐えられないくらい辛いことだよ。 自分ならどうするだろう?と深く考えさせれました。 でも事態が深刻すぎて、自分でも打開策が浮かばないの。


なので、今作で一番良かったのは、ガテンなおっさんたちの存在感だった気がします。 父と関わることを諦めなさせないおっさん達のパワーが、マジで恰好良かった!! 有川さんが描くおっさんの素敵さは 『三匹のおっさん』 (⇒感想) に詳しいけど、ガテンなおっさんも負けてない。 誠治をあっさり懐に入れてくれた度量の深さもあるし、大人は知らないものが怖いという潜在意識に向き合うことも出来てる。 その上で、父を、大人を、最初から疑うなってアドバイスできる熱さったら!! プライドの高い男は扱いやすいと言える狡さったら!!  ―― 人生経験ってこういう時に差が出るんだな、と見せ付けられるくらいに恰好良かったですw  作業長は奮起した誠治に惚れこんでたけど、私はむしろ作業長に惚れそうな勢いでした。 とにかく素敵でした(笑)。 


誠治の就職活動の話は、有川さんなりの就活マニュアルになってて、読み応えありました。 面接の心意気や受答えの仕方をレクチャーするところなんか、すごく参考になるんじゃないでしょうか。 でもこの花丸なマニュアルさえ安っぽく感じさせてしまう誠治の志望動機には、ちょっと泣きそうでしたねー。 履歴書一枚書くのを億劫がってた男が、 『これが言いたかった』 と思える動機を抱けるようになるなんてスゴイ。 誠治はいろんな人に支えて貰ったけど、素直に支えられた彼も実は偉いと思います。 人の意見に素直に耳を傾けられるのは、その人の素敵な資質だもの。 支えたいと思わせる何かは、母親譲りの彼の長所なんだろうな。 一喜一憂どころか一喜百憂の現状で、その 「一喜」 の尊さを噛み締める生活って、きっとめちゃくちゃ辛かったはず。 でも成長した誠治を見てると、きっとめちゃくちゃ掛け替えのないものだったろうなって分かるのが嬉しい。 就職した後の彼からはまさにそれが漂ってますよね。 うん、何かすごく良い成長記を読みました。 楽しかったですw


蛇足だけど… 有川作品と言えばラブコメ!という人向けにちょっと書く (自分のことです・笑)。  何しろ設定が、どん底スタートゴール無しなジェットコースター人生なので、誠治くんはラブに勤しむ暇なんてないんです。 でも、やっと後半に運命の人とめぐり合うんだけど… 私はこのラブ話さえもが、彼の成長の証に見えて仕方なかった。 彼はこんなに他人を思いやれる人だったっけ? こんな風に自分に厳しく在れる人だったっけ? ―― そういう嬉しい気持ちが大きくて、恋愛というよりは成長した誠治くんの 「人との向き合い方」 を見せられたような印象です。 そんな訳で恋愛要素は少なめだけど、元ダメニートな誠治の背中を見て豊川や千葉ちゃんが育つという素敵な連鎖を見られるので、ある意味育成ゲームだと思えばイイのかもしれないですねーw (←絶対違う!・笑)



●関連記事 
<『図書館戦争』シリーズ感想一覧>
『図書館戦争』 ⇒『図書館内乱』 ⇒『図書館危機』 ⇒『図書館革命』 
『別冊図書館戦争1』 ⇒『別冊図書館戦争2』 
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<他作品感想>  
有川浩作品感想一覧  
「その他アニメ」カテゴリにアニメ版の1話ごと感想もあります



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tags: 有川浩

>NKさん

いつもコメントをありがとうございますw

>「フリーター、家を買う。」・・・。夢があるタイトルですね・・・。

凄いタイトルですよね。 私なら、絶対に無理です(笑)。 勤めてたって無理だー。
でも、一念発起することが明確に分かるところがまた凄いと思います。

> 最近はニートやフリーターっていう言葉をよく耳にしますね

そうですよね。 フリーターってあまり良い印象ではないように使われてましたけど、不況の現在では本気で就職活動してる人もたくさんいらっしゃいますし、社会現象の一つになりつつある気がします。 私もいわゆる「非正規雇用」なのでいろいろ難しい気持ちは分かります…。

>大人の場合はすべてを知った上でいじめですからね。

作中のいじめ、怖かったです…! こんなの自分がされたら絶対泣くし、本気で引っ越したいと願ったと思います。 分かってていじめるって本気で怖い。 そして、本気で軽蔑したいですよね。 

「フリーター、家を買う。」・・・。夢があるタイトルですね・・・。
それに、いかにも現在らしい内容ですねぇ。

最近はニートやフリーターっていう言葉をよく耳にしますね。今は就職が困難な時代ですから。

そうです、大人の世界にもいじめはあるのです。
ただ子供と違うのは、子供の場合は無知からそうする事が多いのですが、大人の場合はすべてを知った上でいじめですからね。

ニートや引きこもりのための支援施設もいくつかあるみたいですが、本当に信用していいのかわかりません。
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